FIFA ワールドカップのメンバー発表まで、およそ1週間。『森保殿の26人』は誰になるのか?

11月1日。FIFA ワールドカップのメンバー発表の日が、刻一刻近づいてくる。どうせ語呂を合わせるなら、11月1日の11時11分11秒に発表すれば、とも思うが、14時に発表されるそうだ。
『森保殿の26人』はどんな顔ぶれになるのだろうか。
今週は日本代表のスタッフ陣が、メディアのオンラインインタビューに答える時間が設けられている。
その中でフィジオセラピスト(理学療法士)の中條智志氏は、ひざを負傷した浅野拓磨、板倉滉の状態について、FIFA ワールドカップには「間に合う見込み」と語った。板倉はすでにランニングを開始しており、浅野はもう少し治りが遅めだが、メンバーに入る可能性は高い。
コンディションが不安視されていた大迫勇也も、最近は神戸でフル出場している。自身も得点を挙げてリーグ戦5連勝を導くなど、コンディションは上り調子。9月の代表戦で招集外となった3人は無事、戻って来られそうだ。
候補選手の招集はほぼ可能
その9月の活動中に途中離脱した冨安健洋も、アーセナルで慣れない左サイドバックを務めて高評価を得るなど、状態は良い。
一方で直近、先週末のリーグ戦で三笘薫が負傷した知らせには肝を冷やしたが、ブライトンのデ・ゼルビ監督によれば、三笘は2週間程度で戻り、クラブで試合に出場した後、カタールにも行くだろうとの見解だ。
1人、また1人と毎週のように負傷者が増えていく日々に、大河ドラマと同じような不吉を感じていたが、今のところは回避できそうでホッとしている。
そんなわけで、メンバー発表まで残り1週間ほど。候補選手の招集はほぼ全員可能、という前提の下、『森保殿の26人』を予想してみよう。
選手の具体名を挙げる前に、26人の考え方を整理する。今大会は中3日で連戦が行われ、5人交代も可能であるため、試合中、試合毎のターンオーバーが過去の大会以上に重要になる。
かといって、9月のようなターンオーバーは避けたい。アメリカ戦はAチーム、エクアドル戦はBチームと、同じシステムと戦術の中で明らかに序列が付けられたスタメンだった。Aチームがスムーズな連係を見せたのに対し、Bチームは選手間のノッキングが目立った。
理想のターンオーバーは?
いかにターンオーバーが大事と言っても、Bチームへの変化でパフォーマンスが急激に落ちてしまっては、プラスマイナスゼロだ。それなら多少疲れていても、Aチームを連続で出したほうが結果につながる、となりかねない。
理想を言えば、AとBではなく、AとアナザーA。
たとえば、ドイツ戦はボールを握られることを想定したAチーム、逆にコスタリカ戦はボールを握ることを想定したアナザーAチーム。
このように試合毎のゲーム戦略に最適化させる目的で、選手を使い分け、同時にコンディション問題をクリアする。プラスマイナスではなく、プラスプラス。それが理想のターンオーバーだろう。
その点で思い当たるのは、6月と9月のシステムの違いだ。6月の代表戦4試合は一貫して4-3-3が用いられたが、9月の代表戦は一転、2試合共に4-2-3-1(守備4-4-2)に固定された。
一般的には「森保ジャパンは4-2-3-1に変更した」と受け取られたかもしれない。
しかし、これをFIFAワールドカップ用の2通りの準備と考えるなら、ドイツ戦は4-2-3-1(4-4-2系)でプレッシングとカウンターを重視したAチーム。
コスタリカ戦は4-3-3で主導権を握ろうとするアナザーAチームと、戦略を分けた選手起用につながり、6月と9月で準備した点が線になっていく。
希望含みだが、ゲーム戦略の最適化とコンディショニング、両取りのロジックが成立している。
ドイツ、コスタリカ戦のスタメン予想
その線で考えると、ドイツ戦のスタメンはこんな感じだ。
浅野拓磨
久保建英 鎌田大地 伊東純也
守田英正 遠藤航
長友佑都 伊藤洋輝 吉田麻也 冨安健洋
シュミット・ダニエル
ショートカウンターが冴え渡った、9月のアメリカ戦がベースになる。GKは基本的に権田修一だが、ドイツ戦に関しては空中戦の高さがあり、ロングキックで局面を変えられるシュミット・ダニエルが適任だろう。
一方、コスタリカ戦は主導権を握る4-3-3として、
大迫勇也
南野拓実 伊東純也
守田英正 田中碧
遠藤航
中山雄太 冨安健洋 板倉滉 酒井宏樹
権田修一
といった最終予選風の並びを考えた。6月のチュニジア戦では遠藤がプレッシングの的として狙われたが、あの試合は守田を欠いていた。彼がピッチにいれば、下がって立ち位置をズラし、ボールを運ぶことは出来たはず。
コスタリカのカウンターは怖いので、不安定なポゼッションは避けたいが、守田、遠藤、田中の3人が揃うなら、4-3-3は試合に安定感をもたらすだろう。
相手によって、顔ぶれを変える
両サイドに目を移すと、南野は最近のパフォーマンスが良くないので、このシステムなら久保や三笘をスタメンに置くか、あるいは相馬勇紀に入れ替えてもいい。
伊東の箇所は、堂安律もあり得る。東京五輪のように酒井とセットで起用すれば、右サイドで強烈な輝きを放つ。
また、右サイドバックの酒井だが、浦和での状態を見る限り、フル出場で連戦をこなすのは難しそうだ。いずれかの試合で冨安なり、長友なりに代えて出場時間を減らす必要がある。
そのためドイツ戦はベンチスタートで考えた。一方センターバックは、コスタリカのスピードあふれるカウンターに対抗するため、吉田を休ませ、伊藤と板倉に入れ替えた。
このように、選手をゲーム戦略に合わせてやり繰りしつつ、コンディションを整える。最後のスペイン戦はドイツ戦をベースに、それまでの出来と勝ち点状況で少し調整する。ドイツ戦がメインだった選手は試合間隔が空くので、回復してスペイン戦へ向かえる、という算段だ。
残りの7人は誰に?
……と、こうしてスタメンの候補を計算していくと、堂安も含めて19人がターンオーバーでの起用になる。ゲームプランに入って来なかった7人は、試合に変化を付ける途中出場の役割に期待だ。
まずは絶対ジョーカーの三笘薫。これで、ひと枠は確定だ。次に第3GKはチームマネージメントを重視して川島永嗣か。
FWの控えだが、浅野拓磨と大迫勇也の2人ではパワープレー気味に攻めなければならない状況で駒が不足するので、上田綺世は欲しい。エクアドル戦ではパワーを見せつけ、26人入りに大きなインパクトを残した。
三笘と上田。攻めのジョーカーを中と外に確保。あと4人だ。最低限の陣容として、ボランチと右サイドバックの控えにもう1人ずつが必要であり、前線も補強したい。
この最後、3~4人の選び方は、本人だけでなく周囲の状況にも左右される。たとえば浅野は現状、FIFAワールドカップに間に合う見込みではあるが、コンディションが初戦から100%とは限らない。
1トップは浅野、大迫、上田ですでに3人いるが、前田大然は浅野の代役にもなれる前線のプレッシング部隊として、1トップの4人目に名を連ねるのではないか。
とはいえ、さすがに1トップに4人は過多なので、前田は両サイドの控えとしても計算しておく。そして前回のコラムでも書いたが、森保ジャパンであまり生かされてない古橋亨梧は、正直厳しいと思う。
5バックに向けた人選
あと3人。右サイドバックの控えは最終予選では山根視来だったが、6月シリーズで重要性が高かったブラジル戦とチュニジア戦で、長友が右サイドバックに置かれたり、9月のアメリカ戦では冨安が入ったりした。
酒井がいないにもかかわらず、山根がスタメンで起用されない現状は気にかかる。
冨安と長友が右サイドバックを兼務するなら、センターバックの吉田、冨安、伊藤、板倉の4人に、谷口彰悟あるいは瀬古歩夢を足し、山根が落選する可能性は高い。
森保ジャパンは終盤の5バック化が有力な選択肢なので、センターバックの枚数を充実させることを踏まえると、重ねて山根の状況は厳しい。谷口が優先されるのではないか。
柴崎はどうなる?
あと2人。ボランチは森保監督の序列によって柴崎岳か、あるいはユーティリティな原口元気か。ボランチは控えの1枚が田中なので、柴崎と組んで強度不足を晒すよりは、原口のほうが安心だ。個人的には原口だが、柴崎は森保監督の信頼が厚いので、可能性は捨てきれない。
最後の1人。26人目の枠だ。旗手怜央、相馬勇紀辺りが候補だろう。
旗手はミドルシュートの武器があり、エリア内への侵入も鋭い。他の攻撃的な選手とは異なる個性を持っている。その反面、ボールロストの多さと守備強度の低さは否めないので、メンバー入りするならトップ下、インサイドハーフで途中出場し、流れを変える役割だろう。
相馬はどうか。ハードワークと突破力に長けたウイングだが、三笘をジョーカーで固定するなら、あまり出場機会はない。守備的クローザーも、原口と前田がいれば事足りる。ただし、三笘を先発起用するプランがあるなら、相馬も欲しい。
西村拓真も気になる
個人的に言えば、横浜F・マリノスの西村拓真も気になる存在だ。野生、狂気、突撃タンク。9月は怪我があり、招集の候補ではなかったが、その怪我も予定より早く治してしまった。
この少しぶっ飛んだ狂気の男を、FIFAワールドカップで見てみたい。知性派が多い現代表では、異質のアタッカーになりそう。
他には下田崇GKコーチが言うように、PKストップが得意な4人目のGKを加える選択肢もある。とはいえ、権田はPKもよく止めるので、差し当たって必要とは思わない。
さて。26人目は旗手か、相馬か。あるいは南野がサプライズ落選し、相馬も旗手も当選? それとも西村だったりして? いや、森保監督の性格を考えると、そういう揺れの大きい選考は避ける気がする。
となると、監督の信頼が厚い柴崎と原口が2人共にメンバー入りし、『26人目の枠』は最初から無いかもしれない。そんな気もする。
26人はこれだ
というわけで、筆者の予想をまとめておこう。
FW:浅野拓磨、大迫勇也、上田綺世、前田大然
MF:久保建英、三笘薫、原口元気、南野拓実、鎌田大地、伊東純也、堂安律、守田英正、遠藤航、田中碧、柴崎岳
DF:長友佑都、中山雄太、伊藤洋輝、冨安健洋、吉田麻也、板倉滉、酒井宏樹、谷口彰悟
GK:権田修一、シュミット・ダニエル、川島永嗣
ガッチガチのガチ。願望的には何人か入れ替えたいが、『森保殿の26人』という雰囲気はかなりある。
果てさて。11月1日に発表されるメンバーは、史上最もサプライズのないメンバーか。あるいは……何かを期待する自分もいる。それもまた、FIFAワールドカップのメンバー発表よ。(文・清水英斗)
写真提供:getty images