日本代表、欧州遠征終了。FIFA ワールドカップ登録メンバー、26人の行方は?

FIFA ワールドカップ カタール 2022まで、50日を切った。日本代表は9月の欧州遠征でアメリカ、エクアドルと親善試合を行い、1勝1分で終えた。
欧州がネーションズリーグを行なっている関係で、欧州勢とテストマッチはできなかったが、欧州クラブ所属の選手が多く、組織がオーガナイズされているアメリカ、選手が口々に「いいチーム」と語ったエクアドルと体を合わせたことで、本番に向けて目指すスタンダードが引き上がったのではないか。
そうした基準に照らし合わせ、11月1日に発表が予定される26人のFIFA ワールドカップメンバーのうち、22人ぐらいまで、森保一監督の構想は組み上がってきたはず。
9月の30人に怪我で招集外だったDF板倉滉(ボルシア・メンヒェングラードバッハ)とFW浅野拓磨(ボーフム)。しばらく代表から外れているFW大迫勇也(ヴィッセル神戸)など、最終候補も絞られた中で、どういうメンバーになるのだろうか。
有意義だった、9月の2試合
おそらく重視されるのは、グループリーグ3試合のシミュレーションだ。ドイツ戦、コスタリカ戦、スペイン戦を想定した時に、どういうスタメンで、誰がサブ側に回って、どういう試合展開で、いつ誰を投入するかというレベルまで、シミュレーションして行くはず。
もちろん、怪我や退場、累積での出場停止に加え、大会中に新型コロナ陽性者が出る事態にも供える必要がある。リスクを考えたらキリはないが、過密日程で進行する3試合で起用するイメージにマッチしていなければ、招集しても意味は無い。
その意味でも9月の2試合は、ドイツ戦とコスタリカ戦の流れをイメージする上で、非常に有意義だった。
アメリカとドイツ、エクアドルとコスタリカでは特長が異なるので、具体的な対策はあらためてシミュレートして行く必要はあるが、アメリカ戦のスタメンは、前からボールを奪いに行き、ショートカウンターで仕留めるためのベスト布陣だろう。
久保建英(レアル・ソシエダ)の左サイド起用はチャレンジだったが、守備のタスクを精力的にこなし、明確なプラス材料になった。久保自身も、攻撃ではこれまでの活動でアピールしてきたことを踏まえ、守備のタスクにテーマを置いて臨んだことを明かした。
攻撃の軸となった鎌田
1トップで起用された前田大然(セルティック)については、浅野拓磨がいたら、スタメンのチャンスが巡ってきたかはわからない。その中で、守備のスイッチになる役割を果たし、右足の負傷というアクシデントはあったが、アピールに成功した
攻撃の軸として再浮上したのが、鎌田大地(フランクフルト)だ。4-2-3-1のトップ下の位置から、強度の高い守備、ポゼッションの狭い局面とカウンターの両面でクオリティを発揮できる技術。前方のスペースを逃さないビジョンは、さすが昨シーズンのヨーロッパリーグ優勝に主力として貢献した選手だ。
吉田麻也(シャルケ)や遠藤航(シュツットガルト)、アメリカ戦でセンターバックと右サイドバックをこなしたDF冨安健洋(アーセナル)、右サイドバックの一番手・酒井宏樹(浦和レッズ)、日本の最大の武器と言える右の伊東純也(スタッド・ランス)といったチームの主軸に、鎌田が加わったことは間違いないだろう。
新守護神、シュミット・ダニエル
エクアドル戦で獅子奮迅の働きを見せたDF長友佑都(FC東京)は言わずもがな、アメリカ戦で遠藤とボランチのコンビを組んだ守田英正(スポルティング・リスボン)も、効果的なボール奪取でカウンターを支え、鎌田のゴールをアシストするなど、ボランチのファーストセットに名乗りをあげた。
右サイドで伊東と争う堂安律(フライブルク)も守備ではアピールしたが、チャンスに決め切る部分でインパクトは残せなかった、それでもメンバー入りは確実で、あとは中断までのリーグ戦と開幕直前のカナダ戦で序列に挑むことになる。
左サイドアタッカーの三笘薫(ブライトン)は、途中出場のアメリカ戦で得意のドリブルを発揮し、貴重な追加点をあげた一方で、スタメンのテストとなったエクアドル戦はインパクトを残せず。守備でも後手を踏むシーンが目立った。
一方でE-1選手権MVPの相馬勇紀(名古屋グランパス)は、鎌田や上田綺世(セルクル・ブルージュ)と迫力ある攻撃を繰り出し、メンバー入りの可能性が出てきた。
GKシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)は、アメリカ戦で権田修一(清水エスパルス)に代わって後半から投入されると、エクアドル戦でフル出場を果たした。
エクアドル戦ではPKを止めてMOMに輝くなど、守備範囲の広さ、ハイボールや頭上を狙ったシュートの処理、相手のプレスを回避できるパスワーク、的確なフィードで存在感を発揮。GKは大会を通してゴールを守る可能性が高く、現時点の最有力だろう。
本番を見据えた選手起用
アメリカ戦とエクアドル戦は本番のテストを兼ねて、スタメン全員を入れ替えた。その影響がエクアドル戦前半のパフォーマンスに出たように思うが、マックスの強度で挑むことになるドイツ戦にスタメンで出たメンバーには、通常のリーグ戦とは比較にならない負荷や疲労がかかるだろう。
中3日のコスタリカ戦までに完全回復は難しく、中4日のスペイン戦、ラウンド16にチームとして体力を残し、選手層を厚くする意味でも、大幅な入れ替えは必要になる。
筆者は、ドイツ戦とコスタリカ戦では7、8人が入れ替わると想定している。2試合連続でスタメンとなる選手は、ドイツ戦で途中交代していることが条件になる。
コスタリカ戦は5-4-1で、堅守速攻を狙う相手に対し、ボールを握りながら相手のディフェンスを崩すと同時に、守備のリスクのマネジメントが求められるだろう。ドイツ戦、コスタリカ戦と、異なるプランで戦うことになるので、左右のインサイドハーフに攻撃的な選手を入れる、4-3-3も有効かもしれない。
スペイン戦は柔軟な策を
3試合目のスペイン戦は、ポゼッションで押し込まれるかもしれないが、粘り強い守備から伊東、浅野、前田、古橋亨梧(セルティック)などのスピードを生かしやすい。
ただ、この試合はドイツ戦とコスタリカ戦でどれだけ勝ち点を取れているかで、求められるミッションが変わってくる。また、スペインの勝ち点獲得状況も影響するだろう。現段階では、3試合の中でもっとも柔軟にプランを用意しておき、怪我人などの状況にアジャストさせていくことが必要になる。
上記のことを踏まえて、森保監督の基準をイメージしながら、ドイツ戦、コスタリカ戦、さらにスペイン戦でいくつかのシチュエーションをシミュレートしてみても、従来の23人から増えた3枠をどう使うかで、チーム編成が変わってくる。したがって上記の相馬や、9月の2試合で出番の無かった旗手怜央(セルティック)も候補となる。
筆者がシミュレートしたドイツ戦とコスタリカ戦で、10番の南野拓実(モナコ)と初期から“森保ジャパン“を支えてきた柴崎岳(レガネス)をスタメンには組み込めなかったが、そこはスペイン戦も含めて、森保監督はプランニングしているだろう。
怪我で離脱していた菅原由勢(AZ)も復調しており、守備的なポジションのマルチであることから、滑り込み選出は十分にあり得る。
FIFA ワールドカップ カタール 2022 メンバー候補予想
■当確 14人
シュミット・ダニエル
酒井宏樹
冨安健洋
吉田麻也
長友佑都
遠藤航
守田英正
田中碧
鎌田大地
久保建英
堂安律
伊東純也
三笘薫
前田大然
■ほぼ当確 10人
権田修一(怪我)
板倉滉(怪我)
浅野拓磨(怪我)
山根視来
谷口彰悟
伊藤洋輝
中山雄太
原口元気
南野拓実
上田綺世
■有力 6人
川島永嗣
柴崎岳
相馬勇紀
旗手怜央
古橋亨梧
大迫勇也
■当落線 4人
谷晃生
菅原由勢
瀬古歩夢
町野修斗
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