カップ戦の魅力が凝縮! 王者・川崎をギリギリまで追い詰めたJ3長野は“サジ加減”が絶妙だった

カップ戦の魅力が凝縮! 王者・川崎をギリギリまで追い詰めたJ3長野は“サジ加減”が絶妙だった

2021.6.10 ・ Jリーグ

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 第101回天皇杯・2回戦の32試合のうち、26試合が6月9日に行なわれ、ここから登場したJ1勢がいきなり大苦戦を強いられた。


 前回大会の初優勝に続く連覇を狙う川崎フロンターレも、長野県代表のAC長野パルセイロ(J3)にあわや敗退の瀬戸際まで追い込まれた。試合は長野が42分にMF藤山智史のミドルシュートで先制。後半アディショナルタイム1分にMF橘田健人が同点とした川崎が、1-1で終えた延長戦後のPK戦を4-3で制し、辛くも3回戦進出を果たした。


 川崎が日本代表、U-24日本代表に招集された主力選手を欠いたとはいえ、長野の堂々たる戦いぶりが印象的だった。先制点は「特に(川崎のMFジョアン・)シミッチがポイントなので、そこを抑えること」(横山雄次監督)という狙いが的中。シミッチと競り合い、上手く身体を入れてボールを奪ったFW榊翔太のパスを受けた藤山が右足を振り抜くと、ゴール右隅にシュートが決まった。GKチョン・ソンリョンは一歩も動けず、ただボールを見送るしかなかった。


 延長戦を含めた120分間のシュート数、5本対25本が示すように、長野は予想通り守勢に回った。そこで効果的だったのが、「ボールホルダーに前を向かせないこと」(横山監督)。ボールをキープするのが上手い川崎の選手に対し、「相手がプレッシャーを感じる距離」(同監督)で背後から身体を寄せ、時にはボールに足を出して揺さぶりをかける。これを力づくで行くと、勢い余って反則になることもあるし、巧みにかわされて一転、ピンチを招くこともある。長野の選手たちはそのサジ加減が絶妙だったように思う。


 もちろん、25本ものシュートを撃たれ、肝を冷やす場面は何度もあった。それでも最後にはGK田中謙吾が立ちはだかった。90分に自身の左下隅を捉えたMF塚川孝輝のヘディングシュートを、左手一本で逃れたセーブは圧巻。これがリーグ戦で1試合も出場していないGKかと思うほど、その守りは素晴らしかった。


 その後間もなくの同点ゴールは残念だったが、川崎はこの1点を奪わんがために「後半の最後は迫力があった」と鬼木達監督が認めるほどのエネルギーを傾注。それが延長戦でのパワーダウンにつながり、追加点を許さないことにもつながった。

  長野はJ3開幕戦で勝利を挙げて以来、6月6日の第10節、FC今治戦まで8試合勝ちなし(5分け3敗)と苦戦が続き、15チーム中12位と振るわない。ただ、9試合で失点8という堅守は少ないほうから3位タイ。リーグ戦の長野を見る機会はなかったが、守備がしっかりと構築されているのは、川崎戦からもうかがい知れる。


 名実ともに現在の日本最強チームに健闘して、自信を掴んだかどうか。苦しみながらも最後は勝利という結果を出す王者の勝負強さと、それに臆せず自分たちのサッカーを貫いて“格下”を感じさせなかったチームの対戦という、カップ戦の魅力を堪能させてもらった一戦だった。


取材・文●石川 聡



記事提供:サッカーダイジェストWEB

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