プロ分析官が前田大然&L・ダミアンのゴールパターンを徹底解剖! 得点王争いのキーマンは仲川輝人と山根視来!?

プロ分析官が前田大然&L・ダミアンのゴールパターンを徹底解剖! 得点王争いのキーマンは仲川輝人と山根視来!?

2021.12.3 ・ Jリーグ

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 Jリーグは12月4日、J1最終節を迎える。日産スタジアムでは、2位の横浜F・マリノスと連覇を達成した王者の川崎フロンターレが激突。すでに雌雄は決しているが、22得点で得点王レースの首位に並び立つ横浜の前田大然と川崎のレアンドロ・ダミアンの争いに大きな注目が集まっている。


『サッカーダイジェストWeb』では、Jリーグの各クラブでスカウティング担当を歴任し、2019年には横浜でチームや対戦相手を分析するアナリストとして、リーグ優勝にも貢献した杉崎健氏に、今回の横浜対川崎、そして前田対L・ダミアンの得点王争いにおける勝負のポイントを伺った。

 

 確かな分析眼を持つプロアナリストは、注目の一戦をどう見るのか。予想布陣の解説とともに、両者のゴール傾向、横浜と川崎の敵陣局面での攻撃という4つの観点から見どころを語ってもらった。


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●横浜F・マリノス

今季成績(37節終了時):2位 勝点78 24勝6分7敗 81得点・34失点


●川崎フロンターレ

今季成績(37節終了時):1位 勝点91 28勝7分2敗 80得点・27失点

 【予想布陣解説】

 ともに累積警告による出場停止がなく、お互いにエースストライカーの得点王以外に懸かっているものがないなか、前節から大幅な変更はないと見ています。


 横浜からすれば、この最終節は開幕戦で負けた借りを返したいところでしょう。2位フィニッシュとはなりましたが、勝点で13も離されてしまい、直近5試合でも2勝3敗と自ら追撃の手を緩めて独走を許してしまった側面もあります。今季の集大成として、何がなんでも勝ちに行くはずです。


 フォーメーションは前節と同じ前田選手を左サイドに置いた4-3-3(4-2-1-3)と予想します。36節の浦和戦で前田選手を1トップに配置しましたが、なかなかうまくいかず、前節の神戸戦で左に戻してゴールという結果も生まれました。川崎戦も同じ形を取るのではないでしょうか。


 一方で、右サイドには前節ベンチスタートだった仲川選手が入ると予想しました。これは個人的な願望もあるのですが、前田選手に点を獲らせるには誰がサポート役として適任かと考えると、彼に最もアシストをしているのが仲川選手なのです。フィーリングも含めて、ふたりのスピード感がマッチしているのだと思います。


 またボランチも本来であれば、扇原選手の起用が濃厚なのかもしれませんが、渡辺選手も前節は88分まで出場し、いいパフォーマンスを見せました。また後述しますが、やはり川崎の強度の高い中盤3センターを抑えるためには、彼の機動力も必要だと考えます。


 続いて川崎ですが、こちらは前節のガンバ大阪戦を踏襲したスタメンになるでしょう。前節は相手がトップ下を置かない4-4-2だったので、中盤は3対2で数的優位からボールを握ることができましたが、今回は2ボランチとトップ下を置く横浜なので、中盤の組み合わせが完全に噛み合う形になります。ここで、どちらが優位に立つのか。


 ここ最近起用が続いている脇坂選手、旗手選手、アンカーの橘田選手の中盤3人は非常に距離感がいい。おそらく、このトリオは継続して起用してくるでしょう。ただ、試合中に脇坂選手と旗手選手が入れ替わったりもしますし、ポジションは状況に合わせて臨機応変に変化していくはずです。

  前田選手は37節までにスタメン出場32回、途中出場3回、欠場が2回で、出場時間が2721分となっています。そのなかで1試合・2得点をマークしたのが2回、ハットトリックが2回と固め取りもできる。またシーズン中の連続ゴールも3度あります。やはり、こうした一気にゴールを量産できる得点能力が引き出されたからこそ、今季は得点王を狙う位置にいるのだと思います。

  また、ゴールを決めたエリアを細かく見ると、22点のうちの21点が「ペナルティエリア内」で、そのうち、よりゴールに近い「ゴールエリア内」で8点を取っています。左ウイングの選手にもかかわらず、なぜこれだけゴールに近い場所で得点ができるのか。


 やはり前田選手は、チームが右サイドで攻撃をつくるなかで、逆サイドから相手ゴールに近いところへ飛び込んでいく。また一度中に入ると、サイドチェンジでボールが右から左へと展開されても、左に開いてポジションを取り直すでもなく、中にとどまって相手の背後を狙ったり、クロスに飛び込んだりしていくのも特徴的です。


 さらに言うと、前田選手はゴールエリアの幅より外側からのゴールが少ない。ほとんどがゴールエリアの幅の内側でのシュートで、やはりスピードはもちろんですが、駆け引きなどから一瞬の隙を突いてゴールを奪う得点感覚も磨かれてきていると感じます。


 それを証明するのが、ヘディングでのゴールの多さ。L・ダミアン選手の4点を上回る6点をヘディングで挙げていて、リーグ1位の数字です。173cmという上背でこれだけ頭でゴールを奪えるわけですから、いかに駆け引きや得点感覚に優れているかが分かりますし、時には低いボールに頭から突っ込んでいくような勇気も持ち合わせていると言えます。


 前田選手のゴールは、時間帯別に見ても興味深い傾向があります。じつに、後半の残り30分(60分以降)のところで、半分の11ゴールを挙げているのです。これには先ほどの仲川選手のほか、水沼選手の存在も大きいと思われます。前田選手は、仲川選手から最多4アシスト、水沼選手から2番目に多い3アシストを受けています。ふたりとも今季は途中出場が多く、そしてともに右サイドを主戦場とする選手たち。やはり右サイドでのチャンスメイクから中で前田選手が仕留めるという形が多くなるわけです。


 残り30分、相手の足が止まり始め、前田選手の絶え間ない運動量、スプリント力がより際立つ展開となる時間帯で、技術の高い選手が右サイドに途中投入されて精度の高いパスが供給される。こうした展開が今季の前田選手のゴール量産を生んでいる必勝パターンのように感じられます。

  前田選手の得点パターンの傾向からも分かるように、横浜としてはいかに右サイドでつくって中央に質の高いボールを入れられるか。川崎の右サイド、横浜の左サイドには日本代表の山根選手や2018年MVPの家長選手もいて、ここを破ってチャンスをつくるのは簡単ではない。そうなると、川崎のウィークポイントと言えそうな川崎左サイドのマルシーニョ選手の守備の甘さを突いていくことで、相手のバランスを崩したい。


 そして横浜は、右サイドでつくっている時に、前田選手が外からグッと入ってくる。対峙する山根選手の前から入ってくるのか、後ろから入ってくるのか。その動き出しにも注目したいところです。

  スピードに関しては、山根選手もかなり速いですが、初速に関して言えば、前田選手のほうが上のように感じます。ただ、この場面は予測がモノを言うでしょう。どのタイミングでクロスが入ってくるのか。そこへ山根選手の裏を初速で上回れるのか。前田選手にとっては、そこが生命線と言えそうです。


 一方で、チームとしては左サイドからの攻撃も無視するわけにはいきません。この左サイドからの攻撃時には、前田選手は比較的中央寄りのいわゆるハーフスペースと言われる場所にポジションをとって、大外はサイドバックのティーラトン選手やボランチの選手、あるいはトップ下の選手に任せることが多い。そうすることで山根選手からのプレスを回避して谷口選手との間で勝負するような場面をつくれれば、スピード勝負で裏を取るチャンスが訪れるのではないでしょうか。


 最初から前田選手がペナルティエリアの中に立つと対応されてしまうので、少し引いた位置で相手のアンカーの脇のエリアへ一度振って、そこから捕まらない位置からのランニングで狙えればいいでしょう。また、シンプルにサイドからのクロスに飛び込んだり、水沼選手からの早いタイミングのアーリークロスに飛び込んだり、というのは当然ながらイメージできますが、単にサイドからだけではなくスピードを活かして中央からも得点が獲れる選手ですし、そういった強みを生かしたいところです。


 とはいえ、チームとして前田選手にのみ得点を獲らせるような戦い方はしないでしょうし、気を付けたいのが単独得点王を獲りたいがゆえに、エゴに走ってしまうこと。前節・神戸戦の74分のシーンでは、エウベル選手がドリブルで持ち運び、前田選手にスルーパスを通した。ゴール前に侵入した前田選手は自分で打つか、味方にパスするかで「迷った」と言っていましたが、シュートを打った結果は外れてしまいました。意外に「俺が俺が」となると、うまくいかないことが多いので、そういったものを捨ててチームプレーをしながら、最後の結果として自分に返ってくればいいという気持ちで臨む方がいいのかもしれません。今シーズンは、ずっとそうしたスタイルでやってきたと思うので、この試合でも同じようにできるのかがポイントです。

  レアンドロ・ダミアン選手の今シーズンを振り返ると、スタメンは27回、途中出場が7回。欠場は3回で出場時間は2203分。チームの選手起用の方針や戦い方、求められる役割の違いもありますが、前田選手よりも500分以上短い出場時間ながら同じゴール数を挙げ、コンスタントな結果を出しています。ハットトリックこそありませんが、2点獲った試合が5回、連続ゴールが4回と、やはり固め取りができていることで、今季は得点王を狙える位置に顔を出せています。

  L・ダミアン選手も前田選手と同様、ペナルティエリア内での得点が多いのですが、違いはゴールエリア内での得点が4つだけで、少しゴールから遠い位置からでも得点が奪えるということ。あまり深い位置に入らずとも、DFを背負いながらもゴールを奪える。象徴的なのが、16節の湘南戦でも見せたオーバーヘッドでの得点でしょう。こうしたアクロバティックな形でのゴールもあれば、さらに前田選手にはあまりないゴールエリアの幅の外からの得点も5つあります。逆サイドへのパワーシュートが打てるのもL・ダミアン選手の特長です。


 一方で前田選手と同じ傾向にあるのが、右サイドの選手からのアシストが多いということ。最も多いのが右サイドバックの山根選手の7アシストで、続いて右ウイングの家長選手、センターバックの谷口選手の2アシストです。ひとりの選手がこれだけアシストをするというのも珍しいですが、横浜とすれば山根選手とL・ダミアン選手のホットラインをいかに阻止するかは、大きなテーマになるでしょう。もちろん、山根選手を抑えるには、キープ力の高い家長選手とのコンビネーションをどう封じるかもカギを握ります。


 逆に左サイドはマルシーニョ選手、登里選手が1アシストずつで、三笘選手を入れても3つと少ない。L・ダミアン選手のゴールの内訳は右足15点、左足3点、頭が4点。この数字からは、右からのパスを右足で決めるのが得意と見て取れますが、家長選手のアシストには左サイドへ移動してからのクロスも含まれていますし、左からのボールが不得意とも言い切れません。いずれにしても、精度の高いボールが入ってくれば、L・ダミアン選手の得点の可能性は高まるでしょう。


 また、前田選手と対照的なデータとして、時間帯別得点を見るとL・ダミアン選手はゲームの序盤15分が最も得点が多い。他の時間帯でもバランスよく得点を挙げていますが、最初からギアを入れて飛ばせる選手だと言えます。これはコロナ禍以降のスタイルで、後半途中に小林選手や知念選手と交代することが多いためでもありますが、だからこそ試合の頭から飛ばせる。ただ、ここ数試合は鬼木監督も小林選手を右サイドに回して、L・ダミアン選手をそのまま残したりしているので、L・ダミアン選手に得点王を獲らせたいという思惑も感じます。そのあたりの采配とともに、やはり立ち上がりの15分でゲームがどう動くのかは注目です。

  続いて川崎の攻撃面の特徴を見ていきましょう。レアンドロ・ダミアン選手を中心に見れば、なんといっても先述した通り、22点のうち7アシストを挙げた山根選手との関係性が注目されます。アシストのパターンとしては大きく分けて2つあります。家長選手とのコンビから外をグーっと上がっていきクロスを供給するパターン。それから、パス回しの中から低い位置でスルーパスを通したり、タイミングよくクサビを打ち込んでそのままL・ダミアン選手が抜け出していくパターンです。


 面白いもので横浜は、この山根選手の動きを誰が見るのかというと、ポジション的には前田選手になる。山根選手のオーバーラップやインナーラップにどこまで前田選手がついていくのか。ここはひとつの見どころです。

  例えば、家長選手が図のように中に入ってきた場合、左サイドバックのティーラトン選手も付いていくような感じになると、その空いたエリアに山根選手が上がっていくでしょう。横浜は前節の神戸戦でも、ティーラトン選手の裏のスペースをかなり使われていた印象です。川崎とすれば、山根選手と家長選手が絡んで右サイドを崩していくのはいつも通りですが、いかに前田選手とティーラトン選手にポジショニングを迷わせながら裏を取るかがポイントになります。逆に横浜はこのエリアを機動力の高いボランチでカバーしたい。そうなると、扇原選手よりも渡辺選手が適任かもしれません。


 一方L・ダミアン選手にフォーカスすると、まずは相手のセンターバックの前に入って、くさびを受けようとします。基本的にDFの前に入って背負った時には、相手にやらせないFWなので、これに対してチアゴ・マルチンス選手や岩田選手がどこまで挟み込んで抑えられるか。DFからすれば、いったんボールが収まると懐が深くて飛び込めないし、飛び込まないと前述した湘南戦のようにオーバーヘッドでゴールを狙ってきたりするので、非常に厄介な選手です。


 それならばと、L・ダミアン選手に入るクサビのボールを奪いに行こうとすれば、スルーパスを通されて一発で裏をとられる危険性がある。こうした局面でのL・ダミアン選手と相手CBの駆け引きは注目です。ボールがどの位置にあっても、いま彼らが何をしているのかを見てみると面白いのではないでしょうか。


 またL・ダミアン選手は右からのクロスを合わせるパターンが多いのですが、前節・G大阪戦で旗手選手が決めた2点目のように、右から大外へのクロスの“折り返し”を合わせるといった狙いも持てれば、左からのゴールの可能性も高まるでしょう。横浜は前節の神戸戦で、同じようなパターンで狙われていた面もあり、頻度は少なくとも効果的な狙いになるかもしれません。


 川崎がどちらのサイドから攻撃するのか。カギを握るのは家長選手であることが多いのですが、後半戦を通じてアンカーの橘田選手の存在も大きくなっています。当初はインサイドハーフでの起用でしたが、ケガ人や移籍する選手も出てくる中でアンカー起用が増え、彼が中心となって左右へ展開するようにもなっています。そして橘田選手を助けるように、脇坂選手と旗手選手が相手のギャップに顔を出して、パスを受けてと繰り返す。この3人が非常にいい距離感で繋げている時は、崩しの部分でも違いを生み出せています。


 前節のG大阪戦はシステム的に橘田選手にきっちりつく選手がいませんでしたが、今回の横浜戦はおそらくマルコス・ジュニオール選手あたりがしっかり見る構図になる。ここをどれだけ剥がし続けられるか。非常にプレスが強い相手ですし、そうしたなかで球際での勝負もシビアになる。橘田選手にとっては、アンカーとしての才能をどれだけ開花できるのか、今後の成長も含めて重要な試合になりそうです。


 得点王争いに話を戻すと、お互いに特定のFWに点を獲らせるというサッカーはしないでしょう。あくまで、自分たちの形の中で最後の仕上げを彼らに任せるはずです。そうなると中盤の3対3の構図や、サイドの2対2の構図で、どちらが優位に立って自分たちのやりたいことを出せるのか。そこが得点王レースの分岐点となりそうです。


【著者プロフィール】

杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督のもとで、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。


◇主な来歴

ヴィッセル神戸:分析担当(2014~15年)

ベガルタ仙台:分析担当(2016年)

横浜F・マリノス:アナリスト(2017年~20年)


◇主な実績

2017年:天皇杯・準優勝

2018年:ルヴァンカップ・準優勝

2019年:J1リーグ優勝

 

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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