浦和の“矛”に対し、汰木を下げて郷家を投入。神戸の苦しい現状が垣間見られた62分の交代劇

浦和の“矛”に対し、汰木を下げて郷家を投入。神戸の苦しい現状が垣間見られた62分の交代劇

2022.6.27 ・ Jリーグ

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 多くの事象は結果論でしか語れない。ゆえ、試合中の判断が正しいかどうかは試合後にしか分からない。別の言い方をすれば、正誤は結果にゆだねられている。


 J1第18節の神戸と浦和の試合は、何が正しくて何が悪かったのかという判断の難しい一戦だった。


 神戸は大迫勇也、浦和はキャスパー・ユンカーというエースが復帰し、激しい撃ち合いになる可能性を秘めていた。開始20秒にユンカーが神戸のCB大﨑玲央からボールを奪って決定機を作った時点で、点の取り合いになる予感があった。


 だが、ユンカーのシュートはポストに嫌われた。そして7分にユンカーがアクシデントでピッチを去ると、予感を裏切るように0−0の均衡が続くことになった。


 ただ、ユンカーの惜しいシュートが、このゲームの構図を決定付けることになるからサッカーは面白い。あのワンプレーから神戸側はリスク管理を改めて意識し、感触を得た浦和はリスクを負ってでもゴールを奪いにいくことになる。


 直近の天皇杯に勝った神戸と負けた浦和という立場も関係はあっただろうが、いずれにしても時間を追うごとに“守る神戸、攻める浦和”という傾向は色濃くなった。


 試合後の監督コメントから察すると、浦和は意図してこういう戦い方を挑んでいたことがわかる。


 リカルド・ロドリゲス監督は選手交代について「交代の度にリスクをより冒すやり方をしていきましたが、それもうまくいったのかなと思います」と試合後に振り返っている。


 まず後半の頭から右SBに酒井宏樹を投入して前への推進力を高め、70分には左SBの大畑歩夢に変えてダヴィド・モーベルグを入れて攻撃にアクセントを加えた。さらに85分には攻撃力の高い平野佑一と関根貴大を送り込み、あくまでゴールを狙いにいった。


 結果的に、85分に入った平野が良い位置でFKのチャンスを奪い、それを70分に入ったモーベルグが見事に沈めて白星を手にする。リスクを負ってゴールを奪いにいった結果としての勝点3だった。


 逆に神戸はリスク回避の手を打ちながらゲームをコントロールしようと試みた印象がある。分かりやすい例としては、攻撃面で躍動していた汰木康也を下げて、郷家友太を投入した62分の選手交代だろう。

  試合後にロティーナ監督はこれに関してこう説明している。


「後半、相手がSBの交代をしてから相手の右サイド、こちらの左サイドで攻撃を組み立てられる展開が続き、汰木選手は攻撃ではすごくチームに貢献していたが、守備面で問題を抱えていたことが見えたので、より守備面でハードワークができる郷家選手を入れた」


 理にかなった采配だが、結果的に酒井宏の推進力をやや抑えられたものの、神戸は汰木という武器を失う結果にもなった。


 昨季まで浦和でプレーした汰木という矛に対して、特性を知るリカルド監督は酒井宏という矛をぶつけた。一方のロティーナ監督は酒井宏という矛に対して郷家という盾で対抗しようと試みた。まるでこの試合の縮図のような采配だったと言えるだろう。


 もちろん、采配の正誤を述べているわけではない。だが、神戸の苦しい現状が垣間見られた交代劇だったと言えるかもしれない。


取材・文●白井邦彦(フリーライター)



 

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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