鹿島が見逃した逸材!? 法政大に35年ぶりの総理大臣杯をもたらした1年生ストライカー

鹿島が見逃した逸材!? 法政大に35年ぶりの総理大臣杯をもたらした1年生ストライカー

2017.9.11 ・ Jリーグ

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 大学サッカー夏の全国大会である総理大臣杯において王座に輝いたのは法政大だった。前年度王者であり3年連続で決勝に進んだ明治大を下して実に35年ぶり4度目の頂点に立ったのだが、大会を通じてチームを快進撃に導いた主役はなんと、1年生のFWである。

 

 法政は今大会、2回戦で九州産業大を3-0で破り、続く3回戦ではJリーグ内定者3人を要する阪南大を3−3からのPK戦の末に撃破した。ここで2得点を決めたのが件の1年生、上田綺世だ。準決勝の筑波大戦では彼のボレーシュートのこぼれを武藤友樹が詰めて決勝点が生まれ、ファイナルの舞台では相手の不意を突くミドルをネットに突き刺し、チームを勝利に導いた。

 

 序盤から明治にボールを持たれて守備陣のスペースを突かれる展開が続くも、大ピンチと言うほどの場面は生まれない。その一方で攻撃でも形を作れない。そんな堅い展開ではあったが、試合の流れから言えば明治にゴールが生まれそうな予感はあった。

 

 だが、その予測は見事に裏切られ、文字通りのワンチャンスを上田が沈めて法政が勝利を手にした。放ったシュート本数はわずかに「3」であり、長山一也監督も「公式記録を見てびっくりした」と振り返るほどだ。劣勢というほど劣勢ではなかったかもしれないが、決して優位に試合を進められていた訳ではなかった。

 

 決勝点を決めた上田も、これまでの試合と比べれば存在感はほとんど無かったと言って良い。しかし、ワンプレーで試合を動かし、誰もが認めるMVPになった。まさに”ストライカー”だ。

 

「守備ができても点がとれないFWは意味がないと思っているので。FWは守備をするというポジションではないと思っているし、やっぱり点を取れてなんぼかなと。守備をしなくても、極端な話、点を取れば良い。プレーが全部ミスでも試合を通して2点取れれば良いんじゃない?という考えです。うまくいかない時もありますけど、どこかで1点取ればというのはあります」

 

 これは準決勝が終わった後の上田の言葉である。長山監督は決勝の後に「もっと守備を……」と苦笑いをしながら口にしていたが、結果的に上田の”勝ち”になった。この言葉を決勝で体現してしまうあたりにも凄みを感じさせる。

「“持っていたのかな”と思います」 本人は大会をこう振り返った。

  鹿島学園から法政大に進学したこのルーキーは、高校時代からその得点感覚が際立っていた。180センチの長身を武器にした空中戦も去ることながらスピードでも負けない。ボックス内でDFの背後を取って供給されたボールに合わせる力は秀逸で、今大会でもそうした長所をいかんなく発揮してきた。そして何より、シュートが上手い。運びながらのシュートはもちろん、横からのボールに対して確実にミートして枠に飛ばすことにも長けている。高校時代には直接FKも蹴っていた。

 

 ことゴールを奪うという部分については申し分ない生粋のストライカーだ。長山監督も「彼は持っているものが違う。日本のサッカー界にとっても大事な選手」と賛辞を送る。

 

鹿島アントラーズノルテで過ごした中学時代は身長も170センチほどであり、スピードはその頃からあったものの「体的にも未熟だった」ことが、ユースに昇格できなかったひとつの要因だと本人は考えている。しかし、高校時代に180センチまで成長し、フィジカル面での強さをつけた。決して身体が大きくなかった頃に武器であった機動力をそのままに新たな力を養ったことで、今の彼がいる。

 

 そして、大学に入学して半年も経たずして「これまで経験したことのなかった」頂点に立った。

 

「僕はこの大会で自分の価値を上げられた。ここからは相手からも自分の見方が変わってくると思いますし、その中で何が出来るかというのが伸びしろというか、自分の成長ポイントになる」

 

 急速に進歩を遂げるこのストライカーには、まだ世代別代表の経験はない。しかし、そこに名を連ねる日は近いだろう。もしかすると鹿島は、ものすごい逸材を逃してしまったかもしれない。

 

取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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