勇気を持って戦う、大分の片野坂サッカーを師匠ミシャも称賛!「将来が楽しみな監督だ」

勇気を持って戦う、大分の片野坂サッカーを師匠ミシャも称賛!「将来が楽しみな監督だ」

2019.7.16 ・ Jリーグ

シェアする

 師匠との高尚な攻防戦は、片野坂監督にとって至福の180分間だったに違いない。「僕にとってペドロヴィッチさんは師匠。学ぶべきことが多い」と片野坂監督。札幌をホームに迎えての今季2度目の対戦。試合前に再会するとペトロヴィッチ監督は「試合後に話そう」と約束し、抱擁した。この試合には、同門の兄弟子である日本代表の森保一監督も観戦に訪れており、「勇気を持ったいいサッカーをしているね」と声を掛けられたという。


 

 師匠との今季第2ラウンドは、「前回の対戦では勝ったけど、札幌のサッカーに押し込まれた。今回は結果も内容も上回りたい」と綿密なスカウティングをもとに、陣取り合戦において優位に試合を進めるために選手に戦術を落とし込んだ。GKからビルドアップしてボールを運ぶスタイルは、札幌の前線からのプレッシングとの相性は悪い。捕まればピンチの連続になるが、剥がせば展開はガラリと変わる。それを承知の上で敢えてリスクを冒してつなぐスタイルを貫いた。これはペドロヴィッチの哲学だ。「いかにして、攻撃的サッカーを表現するか」である。その方法論のひとつとして「後ろからボールを持ち上がって数的優位を作る」と考え、試合中でも立ち位置を変えて対応し、試合の中で「ミスマッチ」をどう作るかが肝となる。

  試合前のロッカールームでは「勇気を持って自分たちの戦い方をしよう」と選手に呼びかけた。片野坂監督は最近「勇気」という言葉をよく使う。「トリニータのサッカーは後ろでパスをつなぐ。ミスをすれば失点になりやすいが、怖がって(相手を)剥がすことができなければ先はない。消極的なミスより積極的なミスであれば先につながる」。そんな思いを込める。

 

 試合序盤は札幌の勢いに屈し、主導権を握られ先制点を許した。大分は3−4−2−1をベースとするが、守備時にはウイングバック(WB)が最終ラインに入り5−4−1の形となる。一方、この試合は攻撃に転じるとボランチの長谷川雄志が最終ラインに下りてきて、WBが1トップと同じ高さにポジションを取り、4−1−5に変形した。この形が功奏する。先制されてから3分後、高い位置にいた三竿からのクロスをオナイウが頭で合わせて同点とする。

  その後も攻撃的姿勢は貫くと、札幌のプレスを無効化するパス回しで流れを持ってきた。追加点は相手のミスによるものだったが、それを見逃さない抜け目なさと集中力があった。リードしてからは自陣でブロックを築き、スペースを与えない。最終ラインでボールを回すところから攻撃が始まる大分のサッカーでは5バックで守ることは大きな問題ではない。守から攻への切り替えのスピードはあまり求められず、じっくりパスをつなぎながら攻撃へと移行していくからだ。ただ、そのボール回しが機能しなくなると、相手に押し込まれる時間が増えるが、この試合ではその心配はなく、正しいポジションを取り、優位性を作り続け、相手がその優位性を潰そうとしたときに、どこにスペースが空くのか選手は共有できていた。

  弟子に逃げ切られ、今季ダブルパンチを食らったペドロヴィッチ監督は、試合後の記者会見で「片野坂監督は素晴らしい指導者だ。J3からJ1に押し上げ、素晴らしいサッカーをしている。やりたいサッカーがチームに浸透している。将来が楽しみな監督だ」と称賛した。しかし、悔しさもあったためか、試合後に片野坂監督とサッカー談義に花を咲かすことはなかった。片野坂監督は「勇気を持って自分たちの戦い方ができた。札幌にダブル(2勝)は素直に嬉しい。今日は話せなかったがオフ中にどこかで話したい」と師匠に思いを馳せた。

 

取材・文●柚野真也(スポーツライター)

記事提供:サッカーダイジェストWEB

シェアする

最新記事