「名古屋での冒険はトレジャー」。今なお心に響くストイコビッチの名言(前編)

「名古屋での冒険はトレジャー」。今なお心に響くストイコビッチの名言(前編)

2020.5.29 ・ Jリーグ

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 これまでインタビュー取材したなかで、特に記憶に残っているのがストイコビッチのそれ。2013年8月、当時名古屋グランパスの監督だったストイコビッチのウィットに富んだコメントに取材をしながら楽しませてもらったのを今でも強く覚えている(このシーズンを最後にストイコビッチは名古屋の監督を退任)。


 当時の記事を引っ張り出して改めて目を通してみると、所々に“ピクシー節”が散りばめられていることを再認識できた。今なお心に響くストイコビッチの名言──。名古屋のファン・サポーターにとって興味深い内容のインタビューではないだろうか。今回は前編をお届けする。


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──選手として約7年、監督として5年半も携わっている名古屋というクラブは、あなたの身体の一部になっていませんか?


「生活の一部になっているのは確かです。これも運命だったのでしょう。94年に来日した時には、こんなにも長くグランパスとともに歩むとは思いもしませんでした。ただ、年月が経った今はマイホームのように感じています。素晴らしい人々に囲まれながら、家族も楽しい時間を過ごせている。日本の文化に触れ、いろんな知識を得る機会に恵まれた。その機会こそまさにトレジャー(宝)であり、幸せを感じる部分でもあります。ですから、(08年に)監督として名古屋に戻ってきた時は私が愛する、そして愛してくれる人たちの両方に会えて深く感激しました。名古屋にいる限り、日本での冒険は続きます」


──トレジャーという表現がありましたが、ストイコビッチ監督を慕って名古屋に加入する選手も少なくないはずです。その意味で、あなたこそクラブの宝なのでは?


「そう言ってもらえるのは嬉しいですね。クラブとはずっと良いコンビネーション、満足できる関係にあります。94年に話を戻せば、来日当初はJリーグをどうサポートし、発展させるべきかを考えていました。かといって、できることは限られていましたけどね(苦笑)。だから私はサッカーの本当の素晴らしさを皆さんに知ってもらおうと、常に美しいプレーを心掛けました。使命感に燃えていたあの頃は楽しかったです。喜びに溢れていました」

 ──今のJリーグには、あなたのようなワールドクラスのエンターテイナーがハッキリ言っていません。


「簡単ではないでしょうね、そういう選手を引っ張ってくるのは。いわゆるビッグネームの眼は、ヨーロッパに向けられていますから。にわかには信じられない額の移籍金で動く選手もいますし、なかなかそういう状況下で真のエンターテイナーを呼ぶのは難しい。これはある意味、どうしようもない問題です」


──スター不足もあり停滞気味のJリーグですが、ここにきて「2ステージ制の復活」や「ポストシーズンの導入」が話題になっています。こうした改革案について、監督はどう考えていますか?


「立ち上げ当初もJリーグはいろんな試みをしていました。2ステージ制、チャンピオンシップ、それから延長Vゴール方式。どれもサッカーに興味を持ってもらうためのアイデアとして悪くありませんが、個人的には変える必要がないと思います。1ステージ制は至ってシンプルで、分かりやすいシステムですからね。Jリーグは組織的にまとまっていて、安定している。そこまでクラブ間の格差もない分、サポーターは拮抗した試合を楽しめているはずです」

 ──Jリーグ元年の93年シーズンは「お荷物チーム」と言われた名古屋(サントリーシリーズは10チーム中9位、ニコスシリーズは8位)も、今や他クラブに一目を置かれる存在です。この20年間の成長をどう見ていますか?


「ベリー、ポジティブ。一度も降格していませんし、クオリティを確実に高めてきたと思います。自分が監督に就任した2008年は、名古屋をトップに押し上げる、美しいサッカーで結果を出す。とにかく強いチームにしたいというのが、私の願いでした」


──2010年シーズンのリーグ制覇で、願いのひとつを叶えたわけですね。


「選手のメンタリティを変えられたのは大きな成功でした。先制されても、終盤までにリードされていても、最後まで諦めずに戦えたのが、あの優勝につながった。以後のシーズンも、トレーニングやミーティングで私のフィロソフィ(哲学)をしっかり伝えています。魂の部分でも戦えていますから、そういう意味でチームの方向性は間違っていません」


──それでも、2013年シーズンの前半戦は大苦戦しました。5月3日の川崎戦から5連敗。難しい時期だったはずです。


「悪い時もある。シーズンを通して同じペースでプレーするのは、不可能に近いですから。重要なのは、困難な状況下でどう立ち上がって結果を出すか。我々には不屈のメンタリティがある。その証に、今は復調していますよね」

 ──確かに、後半戦は強いです。7月13日の鳥栖戦から9戦無敗で、8位に浮上してきました。


「サッカーへの喜びを、みんなの力で取り戻せたと思います。中断期間中のキャンプなどで、選手一人ひとりと腹を割って話せたのは、今考えると大きかったですね。あとは質の向上。効果的なトレーニングで技術的に洗練され、チームとして上手く戦えている。強いグランパス、決定力のあるグランパス、負けないグランパス。今皆さんが観ているのは、そういうグランパスです」


──監督の言葉には、強いパワーを感じます。


「監督は強くないといけません。弱い監督なんて、選手は見たくありませんからね。自ら威厳を示し、自信につながるなにかを与えるのが指揮官の仕事です。その意味で、(リーグ優勝に導いた実績もある)私は監督としての責務を果たしていると自負しています」(後半に続く)


取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)


※『週刊サッカーダイジェスト』2013年9月24日号より転載。


記事提供:サッカーダイジェストWEB

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