鎌田大地の評価は、なぜ二分しているのか? 日本人選手がドイツで批判される理由を読み解く【現地発】

鎌田大地の評価は、なぜ二分しているのか? 日本人選手がドイツで批判される理由を読み解く【現地発】

2021.2.19 ・ 日本代表

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 鎌田大地に対する評価が、フランクフルト・ファンの間で二分しているという記事を見つけた。


 鎌田はここまで2ゴール・9アシストという成績に加えて、数字には残らないがアシストに繋がるひとつ前のパスで、何度もゴールシーンを演出している。こうした面が評価されている一方、「ピッチ上のボディランゲージに納得がいかない」という声が一定数あるようだ。


 思い当たったことがある。あくまで一例であり、個人差はあるが、日本人選手は、欧州の選手と比較してうつむいて立ったり、歩いたりすることが多い。本人は別にネガティブな気持ちになっているわけではない。自然な動作であり、ちょっとした考え事をしているだけ、それこそ気持ちの切り替えるための振る舞いのこともある。だが、欧州の人からはそうは見られない場合があるのだ。


 というのも、骨格的に骨盤が立ち、胸をはる姿勢が普通の彼らにとって、「下を向く」という動作は意図的なもの。かつ、「落ち込む」といったいうネガティブな気持ちが行動に表われたものと同一視されがちだ。そのため、ピッチ上でそうした仕草が見られると、マイナスな印象を持たれてしまうことが多いのかもしれない。


 特に、フランクフルトは時にやりすぎと思われるくらい、ハードで熱いサッカーが特徴だ。中盤の選手は試合中に足を止めず、攻守にわたって動き続けることが要求される。それゆえ、闘争心が目に見える選手が愛されやすいという背景もあるだろう。CBマルティン・ヒンターエッガーや、引退した元キャプテンのダビド・アブラアムはまさにそうした姿勢を体現している選手であり、ファンは最大限にバックアップをする。

  もちろん、すべて合わせる必要はない。選手個々にそれぞれの性格があり、それぞれの自然体があり、意識しすぎるあまりに自分のリズムを崩してしまったら意味がない。だが、すべてを大きなお世話だと切り捨てるのもまた違うのだろう。


 オフェンシブな選手には、「試す」プレーが必要だ。相手をいなして裏を取るためのプレーは、百発百中で成功するわけではない。うまくいけばビックチャンスという場面では、リスクに挑むべきなのも確かだ。


 ただ、サッカーの試合では「この場面ではボールを失ってはいけない」という状況も存在する。うまく相手ボールを奪い、まさに攻撃へと転じようとする局面、ドタバタしてしまい、一度ボールを落ち着けたい局面では確実にボールをおさめ、味方に丁寧につなぐことが求められる。そうした時に、きらりと光るプレーを試そうとしてボールを奪われたら、「今じゃない!」とブーイングを受けることになる。 メンタル面での影響は、プレーに表われることも少なくない。ボールを奪われた際に数秒でもその場で立ち尽くしたり、頭を抱えたりしようものなら、チームそのものに迷惑がかかる。守備を頑張った証に走り回るのではなく、ボールをロストした後に決死の表情を浮かべ、全力で追いかけてボールを奪い返そうとする。そうした選手の思いと姿勢に、ファンは拍手を送るのだ。


 たとえば、長谷部誠は肉弾派でもなく、ハードさが売りでもない。しかし、「インテリジェンスのある、フランクフルトで一番サッカーがうまい選手」としてファンから絶大な信頼を得ている。


 つまり、プレースタイルそのものの話ではないのだ。長谷部はひとつひとつのプレーに妥協しない。ミスをしたら取り返すべく全力でポジションに戻る。味方のさぼりを怒鳴りつけ、チームがいつでも100%の力を出し切るために何をすべきかを理解し、実行している。そのパッションがいまでも燃え続けているのを、ファンはモニター越しにも感じ取ることができる。

  それに、鎌田はここ最近、ピッチ上でエモーショナルな姿をよく見せているように思う。うつむく回数は格段に減ったうえ、球際の激しさも見て取れる。そして、その姿を指揮官もきちんと認め、見守っているのだ。ホッフェンハイム戦後にアディ・ヒュッター監督が次のように語っていた。


「ダイチは彼の持つ天才性で違いを生み出すことができる、クリエイティブな選手だ。それを今日は見せてくれた。彼の意思を、試合開始から見せてくれたと思う。とても存在感があり、ボールを何度も奪い、1対1の競り合いに激しくいき、しっかりと相手守備を潜り抜けていた」


 これから波はまだあるかもしれない。流れに乗れないときもあるだろう。だが鎌田はそうした自分と向き合い、らしさを損なわずに、チームのためにできることに取り組んでいる。彼はそうやって昨シーズンも大きな成長を遂げてきたのだ。今の取り組みが今シーズン終了時に、あるいは来シーズンにどんな形で実を結ぶのか、楽しみに見守りたい。


筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)


ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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