トルシエジャパンで身につけた“黒子の哲学”。明神智和氏は才能ひしめく激戦区でいかに不可欠な戦力となったのか

トルシエジャパンで身につけた“黒子の哲学”。明神智和氏は才能ひしめく激戦区でいかに不可欠な戦力となったのか

2021.3.6 ・ 日本代表

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「完璧なチームとは、8人の明神と3人のクレイジーな選手で構成される」


 元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏にそう言わしめた明神智和氏。当時の代表には、上は中山雅史や中田英寿が、下には小野伸二をはじめ、稲本潤一、遠藤保仁、小笠原満男、中田浩二、高原直泰、本山雅志ら1999年のワールドユースで準優勝に輝いたいわゆる“黄金世代”がいた。


 そんななかでもレギュラーを勝ちとり、チームに不可欠な存在となった明神氏は、いかにして生きる道を見つけ、指揮官から絶大な信頼を得たのか。同氏は、この度刊行した著書『徹する力 “らしく”生きるための考え方』(KADOKAWA)のなかでその心構えを明かしている。


 そして今回、サッカーダイジェストWebでは、明神氏に自身のプレースタイルにも通じる、トルシエジャパンでの“黒子の哲学”について、その極意を語ってもらった。


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 冒頭の言葉はトルシエから直接言われたわけではないですけど、素直に嬉しかったですね。どれだけチームの戦術を理解しているかという評価だと思っています。


 代表では僕が得意じゃない右サイドをやることも多かったのですが、気持ちの持ち方として得意ではないので、最悪そこで上手く行かなくても仕方ない。だけど、「やりたくない」とはならなかった。自分の得意じゃないポジションで少しでも良いプレーをして、右サイドもできると思われればラッキー。前向きにトライして、少しでも自分の幅も広がれば良いなくらいに思ってやっていました。

  また、選手である以上、やはり試合には出たいので、監督がどういう選手を好んでいて、どういうプレーを好んでいないのかというのは、常にアンテナを張っていました。実際に、直接言われたこと以外にも、他の選手に言っていること、練習以外にホテルで言っていることとか、様々なところで情報を得ていました。大変かもしれないですが、それで自分が得するならラッキーじゃないですか。


 とはいえ実際にピッチ上でプレーするのは選手なので、お互いどういうプレーをしてほしいのか、どういうプレーが好きなのか、お互いに話し合うこともやりました。


 もちろんプレーの部分では、自分の特長をとにかく出す。同時に、どうやって周りの選手たちを活かすか。とにかく、その部分は考えていました。


 僕の場合、結局それが自分の特長だと思いますし、自分が出来ることと、周りから望まれていることが、けっこう一致していたので。まずは自分のプレーを出しながら、自分の出来ることをしっかりとやりながら、周りの選手がいかに気持ちよくプレーできるかだけを考えていました。


 普段から取り組んでいたそうした部分が認められたように思っています。

  その一方で、「8人も僕がいたら点取れないな」とか。そういうことは自分でも分かっていましたし、どこかで11人全員が“クレイジーな選手”でも面白いなと思ったりもしていました。


 トルシエジャパンに選ばれた時というのは、周りは本当にすごいメンバーばかりでした。天才と感じるような、中村俊輔、小野伸二、中田英寿、遠藤保仁……。そんな選手たちを目の当たりにして、改めて自分の技術の無さを知るというか、衝撃を受けるというか。


 もちろんその選手たちも見えないところで、ものすごく努力をしているというのは知っています。ただ同じチームでプレーして、やはり衝撃でしたね。


 なかでも小野伸二選手は凄かった。


 相手選手を分析するのは好きだったので、プレーの特長やボールの持ち方などを見て対応を考えます。ただ、それは自分が考えられる範囲でプレーしてくるのが前提なので、小野選手とか、海外ではジダンとか、自分の発想を超えるプレーをしてくるので、そうなると手に負えない。対応ができない。


 だけど、そこでこんな発想があるんだと知り、相手から刺激を受けて勉強するというか。そういう気づきがあることは嬉しいことでもありました。そうして周りの選手から刺激を受けることで選手としてもさらに成長できた実感もあります。

 “3人のクレイジーな選手”と言われるような、本当に才能豊かな選手じゃなくても、戦術を全て理解して、それを表現できる選手になれれば、生きる道が見えてくる。


 小学生、中学生、当時の僕もそうでしたけど、憧れる選手を聞くと“3人”の側の選手たちになると思います。それは間違いじゃないし、自分もそうでした。


 でもプロでやっていく時に、もし自分がそういうタイプの選手じゃなくても、考え方ひとつでプロでもやっていける。“8人の明神”とは言い過ぎかもしれませんが、そういうタイプの選手は、チームに1人、2人は絶対に必要だと思うし、いろんな役割があると思う。


 活躍するというのは、派手なプレーじゃなくても良いし、みんなが見ているところじゃなくても良い。そういう人もいてこそのチームだと思うし、小さいころから特別華があって、才能があって、上手くて、という選手ではなかった僕が、いろいろと考えながらやってきて、代表にも行けて、長い間プロ生活ができた。


 黒子に徹するような役割もあるし、誰にだって無限の可能性がある。そんなことが著書のなかで少しでも伝われば良いですね。


【プロフィール】

明神智和(みょうじん・ともかず)/1978年1月24日、兵庫県出身。シドニー五輪や日韓W杯でも活躍したMF。黄金の中盤を形成したG大阪では2014年の国内3冠をはじめ数々のタイトル獲得に貢献。現在はガンバ大阪ユースコーチとして活躍中。また、「初の著者『徹する力』を2月26日に上梓した。


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記事提供:サッカーダイジェストWEB

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