W杯優勝の強豪から新風を呼んだ北欧の小国まで...最新育成メソッドを日本サッカーの血肉に加え頂点を目指す

W杯優勝の強豪から新風を呼んだ北欧の小国まで...最新育成メソッドを日本サッカーの血肉に加え頂点を目指す

2019.3.13 ・ 日本代表

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カンファレンスの2日目はJFAがベンチマークとした国々からのプレゼンテ−ションが行われ、興味深い話が目白押しとなった。映像的にはパート1にて紹介されているが、イングランドのU18/20代表GKコーチを務めるリチャード・ハーティス氏からはイングランド代表のPK戦に特化したリサーチプロジェクトについて説明があった。イングランドがPK戦で結果が出せていなかったことを改善するための対策だったが、PK戦が選手に与える心理的負荷などを細かく分析、実戦に活かしている点などは日本も大いに学ぶべきと感じさせる内容。また、出場の可能性がかなり低い第2、第3GKへのメンタルケアやGKとしては若手の部類に入るジョーダン・ピックフォードを抜擢した話も非常に興味深いものだった。こういったアクションを含めFAが行っている『イングランドDNA』という改革は、日本のJAPAN’S WAYに通じる部分も多々あり、参加している指導者たちも聞き入っていたようだ。参加者のみが見ることが出来るサウスゲート監督のインタビュー映像も貴重で、かなり充実した内容だった。


次に登壇したのはEURO2016で旋風を巻き起こし、そしてロシアW杯でも鮮烈な印象を残したアイルランドから、テクニカルダイレクター兼指導者養成ダイレクターであるグンナーソン・アルナール・ビル氏。このセッションもかなり盛り上がった。30万人強という人口は高知県人口の半分にも満たない数字である。その上、屋外でのプレイシーズンが5〜9月に限られてしまう寒冷地帯の厳しさを知恵と工夫で乗り越えているアイスランド、実はかなりのサッカー先進国である。コーチは全てプロで男女問わず、誰もが一定のレベルを超えた指導を受けられる環境が整っており、女子サッカーの価値も非常に男子と同様に評価するなど、公平性を重んじるスタイルはサッカーを超えて、教育モデルとしても参考にすべきレベルだった。また、子どもたちの競技レベルの調整方針も注目に値する。日本でも優秀な子供を上のカテゴリーに飛び級させることは近年、珍しくなくなってきているが、アイスランドでは逆のパターン、つまり、あるレベルに付いて来れなければ下のカテゴリーに移す、ということを日常的に行っている。ちょっと聞くと子供のプライドを気にしてしまいそうな判断だが、『サッカーは拮抗した条件で競わせることで伸びるし、やっている方も楽しいからサッカーを好きになり、結果的に競技レベルが上がる』というポリシーに基づくものだった。アイルランド協会のメソッドは日本という国全体での実施を考えると規模や地域性の違いがあり導入しにくいが、都道府県レベルで少年少女を育てていく場面ではかなり参考に出来るアイディアが目白押しだった。


フランスからはあのクレールフォンテーヌでアカデミーディレクターを務めるジャンクロード・ラファルグ氏がフランスの取り組みを紹介した。次世代スターとしてロシア大会でも活躍したエンバペの幼少期のエピソードもかなりユニークだった。彼の幼少期の映像も会場内限定で公開されたが、非常にロジカルに動き、課題を解決する能力が抜きん出ている。爆発的な身体能力に目が行きがちだが、高いセンスとインテリジェンスを有していると幼少期から見抜き、伸ばしてきたというエリートプログラムもまた、日本が大きく学ぶべきものだろう。


上記3人に加え、フランク・ルドルフUEFA指導者養成ダイレクター、ジョン・ピーコック元イングランド代表コーチ兼指導者養成ダイレクター、JFAからは小野剛技術委員が加わってフォーラムが行われた。テーマは多岐に及んだが、特にコーチ育成がかなり重要な課題であることが共有された。世界の最新をキャッチアップしつつ、グラスルーツの裾野を広げながら、エリートをさらなる高みへ導くことが出来るコーチ。一朝一夕では誕生しない存在だろう。


最終日となった3日目のプログラムも充実していた。アンディ・ロクスブルグ氏と昨年U-20女子W杯で優勝、U17女子ワールドカップでもベスト8という結果を残した現U19日本女子代表監督・池田太氏が対談、女子サッカーの未来について議論した。選手たちから厚い信頼を得ながら、結果も出している池田監督だが、今後に関しては強い危機感を持っていると表明、『どの国も今、女子サッカーに力を入れ始めているので、これまでと同じだったら日本はすぐに追いつかれる』という発言はは世界で修羅場を潜った池田氏ならではのリアリティを帯びていた。


そしてこのカンファレンス最後のフォーラムとして池内豊JFAユース育成ダイレクター、森山佳郎U17日本代表監督、影山雅永U20日本代表監督など育成年代で活躍する指導者たちが登壇、これからの日本の育成についてそれぞれの立場で課題や方向性などを議論した。高体連やクラブの立場からも闊達に意見が出て、かなり熱いトークセッションとなった。トーナメント戦、リーグ戦のメリット・デメリットやどうやって大会・試合を組んでいくかというカレンダーの問題、子供たちにどうコミュニケーションさせるか、子供たちにはどうコーチングするのか、そして、エリート選手の最終的なゴールであるSAMURAI BLUEをどう意識させるかなどかなり突っ込んだ話も展開された。来場した指導者にとっては最も聞きたかった話だったかもしれない。


かなり濃厚な3日間で、多くの学びがあるカンファレンスであった。映像と文章はダイジェストでしかないが、雰囲気は掴んでいただけるはずだ。JAPAN’S WAYを確立し、W杯の優勝を勝ち取るにはSAMURAI BLUEの強化だけでは事足りない。多くの指導者にとって、育成の重要性を改めて知ることが出来る貴重な機会となったはずだ。


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