「大迫がいれば…」エース不在を契機に改めて考える。日本ではなぜ1トップが育ちにくいのか?

「大迫がいれば…」エース不在を契機に改めて考える。日本ではなぜ1トップが育ちにくいのか?

2019.10.9 ・ 日本代表

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「大迫(勇也=ブレーメン)がいるわけじゃないんで、蹴ってもしょうがないですよね。前にそんなに大きい選手がいるわけじゃないからつないで崩していかないと。大迫がいれば彼を狙ってロングボールってのもあるだろうけど、なかなかそうもいかないですね」



 長友佑都(ガラタサライ)が苦渋の表情を浮かべた通り、10日の2022年カタール・ワールドカップ・アジア2次予選、モンゴル戦(埼玉)に臨む今回の日本代表には最前線で起点を作ってくれる絶対的エースFWがいない。代役候補の永井謙佑(FC東京)と浅野拓磨(パルチザン)はスピードタイプであり、鎌田大地(フランクフルト)は点取り屋というよりお膳立てを得意とする選手。高さや強さで勝負できる人材がいないため、日本がこれまでと異なる戦い方を見出さなければならないのは確かだ。


 大迫ひとりを欠くだけでこれほど大きな影響が出るほど、現在の日本には1トップをこなせる高さと強さを兼ね備えたFWが少ない。その要因を改めて考えてみたい。


 ひとつは大半のJクラブが助っ人FWに依存していることが挙げられる。今季J1得点ランキング上位をディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)やマルコス・ジュニオール(横浜)、ドウグラス(清水)らが占めていることからも現状がよく分かる。目下、首位の鹿島アントラーズには伊藤翔、4位・川崎フロンターレにも小林悠、ACL4強を戦う浦和レッズにも興梠慎三といった日本人FWがいるものの、彼らはいずれも30代。若返りを目論む森保監督は代表招集に二の足を踏んでしまうのだろう。

  ふたつ目がFW育成の問題だ。かつてジュビロ磐田を指揮したことのある日本サッカー協会技術委員の内山篤氏が「日本のFWは30歳前後に円熟期を迎える選手が多い。中山雅史(沼津)も前田遼一(岐阜)がまさにそうだった」と語ったことがあるが、特に大型FWはその傾向が強い。平山相太(仙台大コーチ)やハーフナー・マイク(バンコク・ユナイテッド)が好例だが、長身選手は身体のバランスが安定するまで時間を要するため、早いうちから実戦の場で起用しにくいのだ。


 彼らを辛抱して使い続けて成長を待つという時間的余裕を持てる監督やチームはそう多くない。すぐに結果を出してくれる外国人FWを連れてくるか、技術とスピードのある小柄なアタッカーを並べた方が手っ取り早いのだ。結果として、香川真司(サラゴサ)や久保建英(マジョルカ)のようなタイプが若いうちから活躍し、ターゲットマン的FWは頭角を現わすのが遅れる。その積み重ねが、代表1トップ問題の遠因になっているのだ。

  そんな中、南野拓実(ザルツブルク)や中島翔哉(ポルト)らが名を連ねた2011年U-17日本代表(94ジャパン)は、身体能力の高いスペシャル枠の選手を意図的に育てた数少ない年代別代表チームである。それに該当するのが鈴木武蔵(札幌)と植田直通(セルクル・ブルージュ)と室屋成(FC東京)だ。


 彼らを指導した菊原史郎コーチ(現広州富力)は「当時のコアメンバーは南野や中島ら総合力の高い面々でしたが、将来につながりそうなフィジカル的長所を持つ人間も見つけていこうと彼らを抜擢しました。『なぜ足もとの技術の低い選手を代表に呼ぶのか』という批判もありましたが、『世界に通用するストロングがひとつでもあるかどうか』に注目することも大事だと考えたんです」と話したことがある。そういう視点を持ってFW育成に取り組まなければ、高さと強さとスケール感を兼ね備えたFWはそうそう出てこない。

  今のU-22世代にも小川航基(水戸)や上田綺世(鹿島)、田川享介(FC東京)ら潜在能力の高いタレントがいるが、彼らがA代表の軸を担うまでにはまだ時間がかかりそうだ。そうした下の年代も含めて、1トップを徹底的に育てる覚悟を持つこと。今回の大迫問題を契機に、日本サッカー界全体がその重要性を再認識することが肝要ではないか。


文●元川悦子(フリーライター)



記事提供:サッカーダイジェストWEB

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