「もう、こういう試合がないように…」原口元気に芽生えたリーダーとしての責任と危機感

「もう、こういう試合がないように…」原口元気に芽生えたリーダーとしての責任と危機感

2019.11.20 ・ 日本代表

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 開始8分、1点目を早々に取られた後から日本の選手たちは自分を見失った――。


 パスミスを連発し、カウンターを受けるとズルズルとラインが下がり出した。ベネズエラの手数をかけないシンプルな攻撃と高い技術に翻弄され、30分に2点目を失うと、33分に3点目を決められた。相手の勢いに飲まれ、悪い流れを断ち切きれない。38分に4点目を失うと何名かの選手は下を向いて戦意を失った。


 前半を終えて4-0。珍しくスタジアムのサポーターからブーイングが起こり、選手が茫然としたままロッカーに引き上げていく。


 原口元気は、腰に手をやり、怒りというよりも悲し気な表情を見せていた。


「あんまりやられそうな感じがしない中で、前に出て行くとき、横パスをかっさらわれるシーンが多すぎた。点差ほど悪くはなかったと思うけど、(代表での)経験をしていない選手が多かった中で、自分たちの想像をこえていくような強さだったり、前へのスピードだったりという部分で後手を踏んでしまってやられた」


 65分、永井謙佑と山口蛍が入り、積極的にボールを奪う動きを見せると、チーム全体が前掛かりになり、山口のゴールが生まれた。日本は攻勢を強めるもベネズエラは身体を張った守備で得点を許さず、そのまま1-4で試合を終えた。ブラジル・ワールドカップでコロンビアに4-1で負けた時のようにいろんな問題を突き付けられたゲームだった。

 試合後、原口は前半の4失点について問われるとしばらく沈黙し、声を絞り出すように話を始めた。


「うーん……ワンチャンス、ツーチャンスで1点目、2点目を失ったし……、一歩の間合いとか、相手の高さとかに対応できなかったというのがあった。今まではアジアの戦いでギリギリのところで無失点が続いていたけど、自分たちよりも能力の高い選手と対面した時にそんなアバウトな守備をしていたらやられてしまう。今までアジアだからやられなかっただけかなって思いますね」


 不甲斐ない戦いの中、相手にプレスを掛け、ボールを奪おうと必死にプレーしていた原口。だが、1人で行っても後が続かない。全体的に低い位置にいるので、距離があり、連動した守備ができなかった。チーム戦術が機能せず、個人でも球際が緩く、ボックス内で相手選手と競り合うこともない。4失点は必然だった。


「失点を重ねて、みんな、ちょっと怖がっているというか、そういうところがあった。全員でボールを獲りに行く時に誰かひとりが下がったら、剥がされてしまうので、全員が行くという姿勢がないとボールは獲れない。獲れない時、じゃあどうしようという考え方が前半はできなかった。後半は、前から獲りに行くようになり、ショートカウンターが増えた。強い相手に勝つには全員が取りにいかないとボールを取れない。それは勉強になったと思います」

 この試合で、ひとつ明確になったのではないだろうか。


 国際試合で戦える選手とそうではない選手。さらに代表経験があり、レギュラークラスの選手と海外組がいないなかでチャンスを掴むべき選手の間には、まだ大きな差があると誰もが実感しただろう。


「今回、海外組が抜け、”俺らだけでもやれる”というのを見せないといけない中で、こういう試合をしてしまった。これじゃ底上げにならないですね」原口は残念そうに表情をしかめた。


 また原口は、こういう試合にしてしまったことに責任を感じているという。


 カタール・ワールドカップ・アジア2次予選のキルギス戦の海外組中心のメンバー編成から今回は初選出の4名に加え、国内組中心にメンバーを入れ替えた。この日のメンバーで代表キャップ数が30を超える選手はGKの川島永嗣(90)、MFの柴崎岳(44)、山口蛍(47)、そして原口(55)と4名しかいなかった。


 前半は川島、柴崎、原口の3名がピッチに立っていたが、チームが失点し、混乱している時、チームを落ち着かせ、率先して修正を進めていく役割が経験豊富な選手には求められる。その役割を原口は果たせなかったという。

「僕は試合に出ているひとりなので、(結果について)いい訳するつもりはないです。日本代表の試合ですし、ホームなので、なんとか挽回しようと思いましたけど、こんなみっともない試合をしてしまった。正直、情けないし、責任を感じている。下を向いている選手が多い中で、プレーで引っ張ることができたらよかったけど、それができなかった。自分の力不足を感じています」


 サッカーは、ひとりがどれだけ奮闘しても勝てるわけではない。チーム全員で戦わないと最高の結果を得ることは難しいスポーツだ。原口だけが責任を感じるのではなく、この試合の敗戦と内容を試合に出ている選手も控えの選手も全員で共有すべきだろう。


「本当にサッカーってそういうもんで、素晴らしい試合をしようと思ったら、すべてが良くないといけない。(大敗は)まぁこの時期でよかったなと……。本当はよくないですし、ファンに申し訳ない気持ちが強いですけど、もう、こういう試合がないように、危機感を持ってやっていかないといけないと思います」原口は、厳しい表情でそう言った。


 まだ、カタール・ワールドカップ・アジア2次予選の途中だが、来年の残りの2次予選の試合、そして最終予選に向けて、この日の敗戦がチームを引き締める苦い良薬になれば良い。


 原口にとっては苦い経験になったが、持ち前のギラギラ感はこのおとなしいチームには必要だ。さらに、経験のある選手として、よりリーダーシップを発揮することが求められる。まだやるべきことが多いことを実感し、次のステージに進む際のモチベーションになれば、この日の敗戦は決してムダにはならないはずだ。

 

取材・文●佐藤俊(スポーツライター)



記事提供:サッカーダイジェストWEB

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