取材記者が見た屈辱のGL敗退…東京五輪へ向けて突き付けられた課題とは何だ?

取材記者が見た屈辱のGL敗退…東京五輪へ向けて突き付けられた課題とは何だ?

2020.1.17 ・ 日本代表

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 最終戦でも日本は白星を挙げられなかった。


 タイで行なわれているU-23アジア選手権のグループステージ第3戦、日本はカタールと1−1で引き分け、1分2敗と未勝利のまま大会を去ることになった。


「これが今の、個人としても、チームとしても、実力かなと思います」


 第3戦でキャプテンマークを巻いた杉岡大暉は力なく振り返った。


 アジアの大会のグループステージで日本が姿を消したのはちょっと思い出せないが、それもそのはずで、2006年のアジア大会まで遡らなければならないのだ。


 なぜ、このようなことが起きたのか――。


 苦戦を強いられる予兆は、確かにあった。そのひとつがメンバー編成とコンディションの問題だ。


 23歳以下の東京五輪世代の主力はヨーロッパのクラブに所属している。堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、冨安健洋(ボローニャ)、板倉滉(フローニンヘン)、中山雄太(ズウォーレ)、三好康児(アントワープ)、前田大然(マリティモ)、安部裕葵(バルセロナB)といった選手たちだ。


 インターナショナルマッチウィークでも、A代表の公式戦でもない今大会には彼らを呼ぶことができなかった。あるいは、東京五輪本番で招集できるよう、無理をして呼ばなかった面もある。その結果、今回参加した海外組は、食野亮太郎だけだった。


 それゆえ、今大会は「国内組のサバイバル」といった位置づけになったが、国内組も万全の状態だったわけではない。

 湘南ベルマーレの杉岡と齊藤未月は12月14日にJ1参入プレーオフを戦い、町田浩樹は元日の天皇杯決勝のピッチに立った。さらに12人が12月半ばにA代表のE-1選手権に参加し、5人が12月28日のジャマイカとの親善試合に出場している。その後、1月2日に集合してタイに飛んだ。ただでさえ本来はオフ期間であり、疲労も蓄積しているうえに、コンディションのバラツキもあったのだ。


 日本はリオ五輪の出場権が懸かった4年前の同大会で優勝したが、この時は年末に沖縄で8日間のキャンプを張った。万全の準備をした4年前とは対照的だ。


 森保監督は「12月28日のキリンチャレンジカップの期間を準備期間にあてるプランもあった」と明かしたが、照準はあくまでも半年後の東京五輪。アウェーでの真剣勝負を体感できたE-1選手権や、チームに一体感が生まれ、攻撃のイメージが共有されたジャマイカ戦の成果を考えると、それらを捨てて、今大会に向けて万全の準備をすべきだったとは言えない。


 何かを取れば、何かを失う――。東京五輪本番を見据えると、そうせざるを得なかったわけだ。

  問題は、コンディションだけではない。日中は30度を超え、練習を行なった夕方も多湿だった気候、さらにはピッチコンディションにも苦しめられた。


 とりわけ第1戦、第2戦を戦ったタマサート・スタジアムのピッチは劣悪で、「ジャマイカ戦ではパススピードやコンビネーションを出せていた。そういう強みを出せない状況だった」という杉岡の言葉はうなずけるものだった。


 一方、気になったのは、チームの雰囲気だ。


 今回のテーマのひとつが密なるコミュニケーションだった。五輪代表チームは活動機会が多いわけではなく、海外組を常に呼べるわけでもない。「招集のたびに『はじめまして』というメンバー」(岡崎慎)という状況でコンビネーションを成熟していくためには、選手同士の深いレベルでの意識の共有が重要になる。


 今回も選手ミーティングを行なっており、多くの選手が「コミュニケーションは取っている」と語っていたが、一方、「このチームはコミュニケーションが少ない」(齊藤)、「もうちょっと初戦の前に深く話し合うべきだったなって思います」(小川航基)という指摘もあるように、甘さがあったのも否定できない。


 トレーニング中も、試合前のアップも静かで、活気や闘志が伝わって来なかったのも残念だった。


 全体的に疲労感が漂っていたから、明るい雰囲気を作り出せなかったのか、凡ミスで第1戦を落とした悪い流れを断ち切るようなリーダーが不在だったからか、サバイバルと言いながら、実際には海外組とオーバーエイジで本大会のメンバーの大半を占めることを感じてしまっているのか……。


 むろん、これまでどおり選手の自主性を促しながら観察するというスタンスを貫いた森保一監督のチームへのアプローチにも問題があった。ただでさえ準備不足のなか、それでも決勝までの6試合を経験し、東京五輪へのシミュレーションを行ないたかったのなら、本番モードのアプローチの仕方があったはずだ。


 振り返ってみれば、準優勝に輝いたアジア大会や同じく準優勝のトゥーロン国際大会、敵地で勝利したブラジル戦などは、スピーディな攻撃で効果的にカウンターを繰り出し、ゴールを陥れてきた。

 だが、今大会ではすべての試合で日本がボールを支配する展開だった。


 本来ならディフェンスラインと中盤でボールを回して相手を引き出しておいて、鋭い縦パスで背後を突き、アタッキングサードを攻略する「疑似カウンター」の状況を作るのがチームとしての狙い。しかし、今大会では、ボールを晒して相手を釣り出す余裕がなく、ピッチ状態やコンディションの不良もあって、「ゴールに直結するプレーの精度が低かった」と杉岡が振り返ったように、アタッキングサードでの連係に課題を残した。


 その点で、カタール戦の後半、ひとり少なくなって劣勢を招いた時間帯のほうが、攻撃に鋭さとスピードがあったのは、示唆に富んでいた。

  チーム全体が低パフォーマンスだったなか、評価を上げたのは、食野、相馬勇紀、田中駿汰、岡崎、齊藤、橋岡大樹だろうか。


 カタールとの3戦目はガス欠になったが、食野の貪欲にゴールを目指す意欲と鋭い仕掛けは頼もしかったし、1対1に持ち込めば必ずクロスを上げてくる相馬の突破力は本大会でも武器になるはずだ。


 田中駿汰の縦パスを入れるタイミングや裏への狙いは的確だったし、岡崎はボランチや前線に何度も好パスを届けた。


 鋭いアプローチで相手を潰し続けた齊藤は、闘志が伝わってきた数少ない選手のひとり。ウイングバックと3バックの一角を務めた橋岡のポリバレントな能力と3試合フル出場を果たしたタフネスぶりも、本大会に必要なものだろう。


 考えられ得る悪いことがすべて噴出したU-23アジア選手権。「俺らは弱い。このままじゃいけないと思っている。幸い、これが本番でなくて良かった。ここで気付けたのは良かった」と小川が語るように、重要なのは、ここで得た教訓、課題を東京五輪にどう繋げるか。繰り返すが、あくまでも照準は8月の東京五輪でのメダル獲得なのだ。

 3月の南アフリカ戦、コートジボワール戦では海外組はもちろん、オーバーエイジを招集する可能性もあるという。


 指揮官が本番に向けてようやく着手する仕上げの一手、今大会で悔しい思いをした国内組の選手たちの逆襲に期待したい。


取材・文●飯尾篤史(スポーツライター)

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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