「タキは“軽さ”がなくなった」南野拓実の“変貌”を英敏腕記者が評価!飛躍のカギとなるのは?【現地発】

「タキは“軽さ”がなくなった」南野拓実の“変貌”を英敏腕記者が評価!飛躍のカギとなるのは?【現地発】

2020.9.16 ・ 海外サッカー

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 南野拓実は、リバプールのプレシーズンで最も輝きを見せた選手の一人だ。彼とナビ・ケイタの2人が、スカッド内で最も評価を高めたと言っていいだろう。

 

 特にコミュニティーシールドでのゴールは、タキ(リバプールでの南野の愛称)にとって大きな意義があった。今年1月にリバプールに加入して以降、昨シーズンの後半戦は、実力を見せられずに自信を失いかけていたように映ったからだ。


 昨シーズンは惜しい場面も数回あったが、好機でゴールを決められなかった。例えば2月のサウサンプトン戦。与えられた出場時間は短かったが、あの時に得点していいスタートが切れていたら、状況は違っていたかもしれない。


 記憶が確かなら、モハメド・サラーからスルーパスに反応してペナルティエリアに走り込んだ南野と、同じくボールに向かったケイタが重なってしまい、前者のシュートが枠を外れた。シーンがあった。あれが決まっていたら、大きな自信を手にして、波に乗れたかもしれなかった。


 だから、れっきとした公式戦であるコミュニティーシールドでゴールを決めたことで、調子を上げていくのではないかと感じている。個人的には、今シーズンのタキは出場時間も増えて、結果も残してくれるはずと期待している。


 ユルゲン・クロップ監督は、1つのポジションに特化した選手よりも、複数のポジションを任せられるポリバレントなプレーヤーがお気に入りだ。その点、タキはすでにこれができることを証明している。


 プレシーズン最終戦のブラックプール戦では中盤の一角でプレーして、1ゴール・1アシストという好パフォーマンスを披露した。クレバーな選手で、求められている役割を分かっている。


 私がリバプールのコーチ陣から直接聞いたところによると、南野自身も、そういったマルチなポジションをこなすことを気楽に受け入れているそうだ。ポゼッション時だけではなく、オフ・ザ・ボールの動きもしっかり理解できている。


 英語もうまくなり、仲間たちとのコミュニケーションも以前より円滑になっている。積極的にチームメイトと接して、ピッチ外の部分でも成長しているようだ。 クロップ監督も、冬の移籍市場で加入したタキがすぐに活躍して、チームの主力としてゴールを量産してくれるとは考えていなかった。無論、そうなるに越したことはないが、「そうなったらボーナス」程度としかとらえていなかった。元々、将来を見据えた補強であり、2年目以降の活躍を期待して獲得したのだ。


 獲得に必要な移籍金も破格だったし、逆に言えば、獲りにいかないオプションはなかったように思う。大きな伸びしろのあるインテリジェントなフットボーラーで、何よりリバプールのプレースタイルにフィットするタイプの選手だと関係者は感じていた。


 首脳陣は、お世辞にもレベルの高いとは言えないオーストリア・リーグからより優秀な選手の揃うリバプールにステップアップし、厳しい環境に身を置くことでさらに成長してくれるはずと期待した。


 指揮官は長期的な展望で見ているし、もちろん彼にガッカリしているということは毛頭ない。アレックス・チェンバレンやアンディ・ロバートソン、ファビーニョといった選手も時間をかけてチームに慣らせていった。それと同様だ。


 そして今のタキを見ていると、チームに慣れているようだし、自信も持っているように見える。徐々に先発で起用されるのか、それともスーパーサブ的な役割になるのか。興味深いところだ。

  サディオ・マネとサラー、ロベルト・フィルミーノは不動の存在だ。それは開幕戦でも明らかだった。この3人は交代せずに、その影響で、結果的に南野に出番は訪れなかった。とはいえ、あまり深読みすべきでもない。


 まだ開幕戦。十分な休養を経て戻ってきたばかりで、疲労も蓄積していない。序盤戦は試合数も少ないのだから、初戦は3人を最後まで使おうという判断だったのかもしれない。特に、引き離してもリーズが追いついてくる展開だったために、攻撃陣をピッチに残すという選択肢になっていったのもあるだろう。


 今季は、中盤の3枚の一角に入り、攻撃的な役割を担う回数も増えてくるのではないだろうか。このオプションはブラックプール戦でも証明されている。とりわけ、守備的な相手では使ってみたい布陣でもある。


 またタキは、マネやサラーほどのスピードがないため、中央で起用された際のほうが実力を発揮できている。前線でも中盤でも、どちらで使われたときも一緒で、センターを任された南野はサイドでプレーするよりも怖さがある。


 ゼロトップ気味か、トップ下、10番的な使われ方のほうが持ち味を発揮できるだろう。その全てに対応できるだけに、ほかの選手、例えばディボク・オリギなどよりも優位にあるだろう。

  プレシーズンで見たタキはよりポジティブで、攻撃的に振る舞えている。ボールを受けてから顔を上げるタイミングも速くなり、前を見てプレーしている。だから以前よりも周りを見てプレーができているし、味方からのボールも出やすくなったと思う。


 加えてフィジカル面も強靭になっている。昨シーズンに感じられた“軽さ”がなくなった。おそらくロックダウン時から続けてきたフィットネストレーニングが実った形ではないか。プレミアリーグに慣れたように見えるのも、それがあるだろう。


 そしてクロップとコーチ陣はオフ・ザ・ボールの動きを大事にするが、すでに話したとおり、課される戦術のタスクを理解して動いている。それは、ボールをどこで受けるかであり、プレッシングであり、献身的にボールを追い回すワークレートにも表われている。


 昨季はシーズン途中に加入したために、プレシーズンもなく、チームに慣れるのにもちろん時間がかかった。特に試合数も多かったから、全体練習で戦術やプレースタイルを吸収していくのは困難だった。


 今夏は、最初から同行していて、代表戦ウィークもチームから離れずにいたから、その恩恵もあり、非常にうまくフィットしている。 ここから飛躍するためには、ファイナルサードで違いを生み出せる選手であることを証明しなくてはならないだろう。タキが好選手だというのはチーム内部の人間やサポーター、みんなが分かっている。だからあとは結果を残さなくてはならない。


 そういった意味では、アーセナル戦でのリバプール移籍後初ゴール、さらにブラックプール戦での活躍は大きい。昨シーズンはアシストだけでなく、攻撃の起点になるようなこともなかった。今後は積極的にゴールに向かって、がむしゃらにアピールすること。途中出場でもいいからリーグ戦の早い段階でポンポンと得点できれば、波に乗っていくのではないだろうか。


 信頼を得られれば、フィルミーノを休ませたい時や攻撃的MFのポジションで使われるチャンスは増えることは間違いない。攻撃的な選手を獲得するという話は、チアゴ・アルカンタラ以外は聞いていない。ただこれさえも、ジョルジオ・ヴァイナルダムが放出されたときに限ってのことになる。タキの出場時間は長くなるだろうし、リバプールの“Xファクター”になる可能性もあるだろう。


文●ジェームズ・ピアース(The Athletic記者)

翻訳●松澤浩三

 

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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