2年連続選手権4強入りの矢板中央、夏の舞台を引き寄せた絶対的守護神の集中力

2年連続選手権4強入りの矢板中央、夏の舞台を引き寄せた絶対的守護神の集中力

2021.6.24 ・ 海外サッカー

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 難しい試合展開だった。矢板中央と佐野日大のライバル決戦となったインターハイ栃木県予選決勝は、試合中に降ったり止んだりを繰り返す雨と、接触プレーによる中断、そしてライバル決戦にふさわしいがっぷり四つの膠着状態と、一瞬たりとも集中を切らせない展開となった。


 矢板中央のゴールマウスを1年時から守り続け、選手権2年連続ベスト4進出の立役者のひとりとなったGK藤井陽登は、この展開の中で自身だけでなく、チームの集中力が切れないように目を光らせていた。


 安定したシュートストップとキャッチング、そして冷静なコーチングが魅力の彼は、「あいつしかいないと思った」と言う高橋健二監督からキャプテンに任命された。守護神であり、チームの精神的支柱。その高い集中力は、チームに絶大な影響力を持ち、前述した試合展開も相まって、より自身の本質が問われるゲームとなった。


 本領を発揮したのは後半だった。前半をスコアレスで折り返し、後半立ち上がりも冷静なコーチングで最終ラインを動かしてチームを引き締めた。47分に佐野日大に負傷者が出て必要な処置のために試合は二度の中断となった。


「両チームとも本当に難しい展開だったと思う。でも試合が続く以上、絶対に集中を切らしたらダメだと思い、周りに声をかけました」


 キャプテンとしてチームを盛り上げると、2度目の再開直後にまさに一瞬の隙を佐野日大に狙われた時、彼のここ一番の集中力がチームを救った。

  佐野日大GK吉野翼がプレースキックを矢板中央陣内に蹴り込むと、前線の180cmの長身FW影山虎楽の高い打点のヘッドですらされ、ディフェンスラインの裏にボールを送り込まれた。これにFW三浦直起が完璧なタイミングで反応。矢板中央は決定的なピンチを迎えた。


「8番(影山)がスラした段階で前に出るか、その場に残るか迷いましたが、バウンドしたボールがスリップして少しこっちに流れてきたので、自分が前に出る決断をしました」


 冷静だった。この日のピッチ状況を理解し、ボールの僅かな軌道の変化を感じ取ると、迷うことなく自分の決断を信じて実行した。三浦がボールに追いついて顔を上げた瞬間、目の前には両手を大きく広げブロックにきた藤井の姿があった。


「とにかく相手に対して自分を大きく見せれば、シュートが身体のどこかに当たったり、枠を外れると思った」と、意図的に壁を作って飛び込んだ藤井によって、三浦の判断の時間は瞬時に奪われた。それでも三浦はループシュートを選択し、藤井の身体にボールを当てないようにしたが、強く蹴ってしまったボールはバーの上を超えていった。


 あそこで瞬時にループを狙った三浦も素晴らしいが、この試合で唯一の決定機は藤井の冷静な判断が勝った。


 ピンチを切り抜けた矢板中央は、再び守備が安定し、その後は1本もシュートを許さなかった。逆に78分にロングスローからクリアのこぼれ球に反応したFW星景虎のシュートを、途中出場のFW小森雄斗がコースを変えてゴールに流し込み、決勝弾を叩き出した。


「点が取れない時こそ、守備陣の集中力が求められる。逆に僕らが仲間を信じて守備をし続ければ、攻撃陣が応えてくれる。今日の試合はそれをチームとして見せられたことが良かったと思います」

  3大会連続のインターハイ出場を掴んだ藤井は、難しい試合を制したことで今後のチームに大きなプラスになることを口にした。


「僕はインターハイに一度も出たことがないので、新たな気持ちで臨みたいし、チームとしては最高成績のベスト16を超えていきたい。それができれば選手権にもつながって行くと思う」


 目標は全国大会初のファイナリストと優勝。最高学年を迎えた守護神は、高校サッカーの総決算へ向けて、気を引き締め直してまずは夏の舞台へ挑む。


取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)



記事提供:サッカーダイジェストWEB

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