日本人未踏の領域へ!エイバル乾貴士に求められるのは“自立”か/コラム

日本人未踏の領域へ!エイバル乾貴士に求められるのは“自立”か/コラム

2017.1.10 ・ 海外サッカー

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エイバルの乾貴士は、1月7日のアトレティコ・マドリー戦でリーガ・エスパニョーラ9試合連続の先発出場となった。12月21日と1月3日の国王杯こそ出場しなかったものの、主力の1人として定着している。


乾は直近30日間でリーグ戦3試合に出場したが、チームは2分1敗と勝利がない。もっとも、チームとして結果が出ない中で、乾個人はどの試合でもコンスタントにチャンスを演出している。継続的に起用されることで、味方からの信頼も高まってきたと言える。


過去1カ月のプレーぶりを振り返るとともに、今後への課題を探っていこう。


▽12月11日(日) リーガ・エスパニョーラ アラベス戦


試合結果:0-0(引分け)


83分(途中交代)


評価:6.0


前節のビルバオ戦でシーズン2つ目のアシストを決めていた。この試合では、左サイドで中盤からパスを引き出し、そこからゴール方向に鋭いドリブルを仕掛け、惜しいシュートを放つなど存在感を示していた。守備でも相手右SBキコ・フェメニアを牽制し、チャンスを作らせなかった。


ただし、奮闘虚しく結果はスコアレスドロー。5バックの相手を崩し切るには、もう少しオフ・ザ・ボールの動きを活用し、バイタルエリアにおけるプレーが必要だったかもしれない。


▽12月18日(日) リーガ・エスパニョーラ レガネス戦


試合結果:1-1(引分け)


70分(途中交代)


評価:6.5


早い時間帯にリードを許したエイバルだが、直後に相手GKラゴ・エレインが退場となり、長い時間を数的優位で戦える状況となった。その退場劇を誘発したのが乾の飛び出しだった。乾はその他の場面でも左サイドから何度もチャンスを作り、存在感を放った。


しかし、警告を受けていたこともあって途中交代でピッチを後にすると、交代で入ったライバルのペペが同点ゴールを決めた。乾のプレーは及第点に値したものの、チームが数的有利な状況をいかして勝ちきれなかったことも含めて歯がゆい試合となってしまった。結果として一人多い状況下で、ゴールやアシストといった結果に直結する働きが求められた試合だった。


▽12月21日(水) 国王杯 スポルティング・ヒホン戦


試合結果:3-1(勝ち)


出場せず


評価:なし


▽1月3日(火) 国王杯 オサスナ戦


試合結果:3-0(勝ち)


評価:なし


▽1月7日(土) リーガ・エスパニョーラ アトレティコ・マドリー戦


試合結果:0-2(負け)


68分(途中交代)


評価:6.0


前半のプレーぶりは今シーズンでも最高レベルだった。格上のアトレティコ・マドリーに対し、積極的に攻めたホームのエイバル。欧州屈指の堅守を誇るアトレティコのディフェンスに最も脅威を与えたのは乾だった。


凍てつくピッチも全く気にすることなくドリブルを仕掛け、チャンスを作った。31分には鋭いサイド突破からカバーに来た相手キャプテンのガビを股抜き。そこからのクロスが精度を欠いたものの、このスーパープレーは地元の大手メディアが動画をピックアップしたほど。ホセ・ルイス・メンディリバル監督は「まるで絵に描いた様な選手だ」と絶賛した。


不安な表情で戦況を見守った敵将のディエゴ・シメオネ監督は、乾と対峙していた右SBのシメ・ヴルサリコを前半のみで下げ、経験豊富なスペイン代表DFファンフランを投入した。ヴルサリコは乾のドリブルをファウルで止め、警告を受けていた。シメオネは試合後「退場のリスクがあった」と語った。


相手に警戒された後半は縦の鋭い仕掛けが鳴りを潜めた。惜しいシュートにつながるクロスは上げたものの、68分にベベと交替。チームは5試合ぶりの敗戦を喫した。大人しくなってしまった後半を差し引いても、乾個人のパフォーマンスは十分に評価できる内容だった。ただ、アトレティコ相手にゴールかアシストを記録するチャンスを逃したという意味では残念な結果だ。


■今後の課題


アトレティコ・マドリーとの試合後の記者会見でメンディリバル監督は乾のプレーを称賛した上で、彼の課題を語った。


「彼という人間は、あまりにも従順過ぎる。いつも言われたことだけをやろうとするんだ。彼には競争に臨む、ということが欠けている」


2011年から欧州でプレーする乾はドイツ時代から指揮官の求める役割を理解し、その中で自分の特徴であるテクニックやスピードを発揮することを意識してきた。彼なりに課題を克服して現在に至っている。どちらかと言えば苦手な守備が伸びたことで、欧州でも評価されるようになった。ただ、今シーズンここまでフル出場が1試合しかないのは、体力面の問題ではなく、「従順過ぎる」ことに起因する部分が多いのだろう。


昨年11月のレアル・ベティス戦で2得点に絡み勝利に貢献したが、レスターの岡崎慎司から「役割をあまり気にしない様に」とアドバイスを受けて吹っ切れたと語っていた。恐らく、それと似たことを指揮官も求めているのだろう。基本的なチームの約束事を無視するわけにはいかないが、試合中に何を重視すべきか決断を求められるのが選手の宿命でもある。


守備のタスクや周りを使うベースのプレーをこなしつつ、機を見てドリブルを仕掛けてゴールに飛び出す前向きな意識が、ここ数試合のパフォーマンスに表れている。ただ、例えばガビを股抜きしたシーンでも、さらに敵陣に切り込み危険な動きをしていけば得られた結果は違ったかもしれない。


スポーツにおいて「かも」を言い出したらキリがないが、乾は日本人選手がなかなか結果を出せなかったリーガの舞台で光る動きを見せている。とりわけ個人技は光っていて、相手ディフェンスが警戒する対象になっている。ここ最近のプレーを見る限り、日本人が踏み入れられなかった領域や、さらにその先に行ける可能性も示している。それだけに、より危険な動きを、目に見える結果につながる動きを求めたい。


さらに加えるなら、この活躍を継続していけば3月に再開されるロシア・ワールドカップ・アジア最終予選に臨む日本代表に復帰する未来も十分に見えてくる。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は選手に色々な戦術的タスクを課すが、逆説的に選手が自分で考えてプレーすることも求める。エイバルでメンディリバル監督の評価を高めることが、そのまま代表復帰に直結するのだ。


文=河治良幸


記事提供:Goal

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