ネイマール、カバーニなしと手負いのPSG。それでもマンチェスター・U有利と言い切れないワケ

ネイマール、カバーニなしと手負いのPSG。それでもマンチェスター・U有利と言い切れないワケ

2019.2.12 ・ 海外サッカー

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パリ・サンジェルマン(PSG)を率いるトーマス・トゥヘルは、着任以来最大の勝負に挑もうとしている。


2月12日に、『シアター・オブ・ドリームス』ことオールド・トラッフォードで行われる、チャンピオンズリーグラウンド16 のマンチェスター・ユナイテッド戦だ。


今月3日にリヨンに敗れるまで(2-1)、リーグ戦22試合で無敗と予想以上の好調をキープしている新監督だが、この重要な一戦に限られた戦力で挑むという試練を、彼は与えられている。


■相次ぐ負傷者でプランは…



今季の“チームリーダー”ネイマールは、1月23日のフランス杯戦で右足の第5中足骨を痛めて10週間の離脱。


そこで頼みの綱だったエディンソン・カバーニまでもが、ユナイテッド戦直前のリーグ戦、ボルドー戦で負傷してしまった。ペナルティキックを蹴った際に右臀部の筋組織を痛め、診断結果は約1か月の離脱。3月6日のパリでの第2戦も危うい。


加えて、同じ試合では右SBのトマ・ムニエも相手選手との激しい接触で倒れ、軽度の脳震盪を起こして12日のユナイテッド戦を欠場する。


ボルドー戦後の会見で「カバーニがプレーできない場合のプランBの用意は?」と聞かれたトゥヘルは、「プランBどころか、ネイ(ネイマール)は使えない、マルコ(ヴェッラッティ)もわからない…プランDくらいまで用意しないとダメだよ!」と答えて笑いをとったが、ジョークどころではなくなってしまった。


現在、起用可能なメンバーで考え得るPSGの布陣は、今季多用している3バックシステムを想定して、ゴールマウスにはブッフォン。バックラインはプレスニル・キンペンベ、チアゴ・シウバ、ティロ・ケーラー。右サイドにダニ・アウベス、左サイドにフアン・ベルナト。中盤はヴェッラッティとマルキーニョス。トップはキリアン・ムバッペ&アンヘル・ディ・マリアにユリアン・ドラクスラーというラインアップだが、ここでキーマンとなるのは、中盤のクリエイター、ヴェッラッティ、そして攻撃を担うムバッペとディ・マリアの3人だ。


ヴェッラッティも1月19日のギャンガン戦で左足首を負傷し、約3週間離脱していたが、9日のボルドー戦で復帰して約60分間プレーした。


絶好調時のリズム感はなかったが、明確な意図をもって出される彼のパスが“骨組み”を創り出していた前半と、彼が退いてからの、場当たり的にボールを前に出していた後半のゲーム内容の差はあまりにも明白だった。


■カギとなるのは前線2人



ネマニャ・マティッチ、ポール・ポグバらが陣取るユナイテッドの中盤は相当骨太だ。とりわけポグバは、前監督のジョゼ・モウリーニョが去った12月以降、暫定監督のオーレ・グンナー・スールシャールのもとで目に見えてパワーアップしている。


左サイドのアントニー・マルシャルとのホットラインは、今のユナイテッドで最も強力なポイントの一つ。モウリーニョの元では放出の噂が絶えなかったマルシャルも、先日契約を延長してモチベーションがさらに上がった様子で、直前のリーグ戦、対フルアム戦でも疾走感あふれるソロドリブルから鮮やかなゴールを決めている(このフルハム戦ではポグバも2点をあげ、フランス人デュオによる得点でユナイテッドは0-3で快勝した。PSGの前に立ちはだかるのが同胞の2人というのもなんとも奇妙な巡り合わせだ)。


一方のPSGは、契約問題でアドリアン・ラビオがファーストチームから外されていることで、ただでさえ層の薄い中盤はさらに深刻な人材不足にある。


膝の靭帯負傷から昨年11月に復帰後、年明けからは毎試合先発出場しているダニ・アウベスや、センターバックのマルキーニョスが本職ではない守備的中盤のポストを埋めている状態だ。


マルキーニョスはこのポジションで新たな才能が開花した感もあるが、今冬のメルカートでロシアのゼニトから獲得したアルゼンチン人MFレアンドロ・パレデスも、まだ2試合で起用しただけで試運転中。いきなりCLラウンド16のユナイテッド戦先発は荷が重い。


この状況の中、ユナイテッドの中盤に太刀打ちするには、たとえトップコンディションではなくとも、抜群のゲームビジョンを持つヴェッラッティの存在は欠かせない。


そして、ゴールを託されるムバッペとディ・マリアだが、利点と言えるのは、この2人はいずれも、希少なチャンスからゴールを生み出す飛び道具を持っていることだ。


ムバッペは超高速速攻、そしてディ・マリアは、至高のフリーキック。


PSGの試合を現地で視察したスールシャール監督も、「生で見ると選手のペースやパターンなどがよく把握できるが、とくにムバッペは…」と、生ムバッペに相当な衝撃を受けたことを前日会見で打ち明けていた。


ネイマールとカバーニの不在で、ムバッペにのしかかるプレッシャーを危惧する声も上がっているが、彼はそんなことに潰されるやわな男ではない。むしろ「望むところ」くらいの気合だろう。


ムバッペとディ・マリアをサポートするユーティリティー役のドラクスラーも、「自分はネイマールの代わりではなく、自分のプレーをする」と意気込んでいる。今季はウィングやボランチなど、複数のポジションを器用にこなしている彼には、ネイマール不在のこの試合ではゲームメイク力も期待される。


■逆境を力に



12月にラウンド16の対戦相手が発表された当時、前監督モウリーニョの下で低迷していたユナイテッドを引き当てたことで、フランスはラッキームードに沸いた。ところがスールシャールが着任してから、無敗と結果を出しているだけでなく、チーム全体がより攻撃的に生き生きとプレーしている今は「これは危ないぞ」という空気に一変している。


ただ、主力選手が不在といった劣勢な状況に立たされた側が、予想以上の団結力や底力を発揮して勝利をさらう例はスポーツ界には多々ある。


前日練習でのPSGの選手たちのはつらつとした様子を見ても、「あきらかにユナイテッドに分がありそうだ」とは思えなかった。むしろ、ドラクスラーのように、絶対的なエースが不在のチャンスに自分の真価を発揮したいと燃えている選手もいるだろう。


スールシャール監督の、「いつものメンバーであればどういうプレーをするのかだいたい予想はつくので対策しやすかったが、このような状況になると彼らの出方は読みづらく、どのようにアプローチすれば良いのか、かえって難しい」という発言にも実感がこもっていた。


■「50-50」の大一番へ



国内では無敵のPSG軍団の選手たちは、対戦相手や状況に応じて出力をコントロールしている。無意識なのかもしれないが、明らかに気が抜けていたリーグカップ準々決勝では、リーグ最下位のギャンガンに1-2で敗れた。しかしその10日後、同じ相手とリーグ戦で対戦した時には、ムバッペとカバーニの“ダブル・ハットトリック”で9-0とコテンパンに叩きのめした。マンチェスター・ユナイテッド戦で見せるのは、最大級の集中力で挑む、彼らのMAXに強い顔だ。


がしかし、クラブレジェンドに率いられた今のユナイテッドにも、「負ける気がしない」という勢いがある。


12月下旬にスールシャールが着任してから11戦で10勝1分けの無敗。完璧な成績だが、監督によれば、選手たちは、2-2で引き分けた24節のバーンリー戦で失った2ポイントをいまだに悔やんでいるという。それになんといってもスールシャールは、トレブルを達成した1999年のCL決勝戦で、ロスタイムに衝撃的な勝ち越し点を決めた最高に勝負強い男だ。


トゥヘル監督は、ファーストレグでの勝算はわからないとしながらも、2戦を合わせた180分なら、「50-50」だと言った。


「火曜の試合には、我々は万全の体制で挑む」


どう転んでもドラマになりそうな、大注目の一戦になることは間違いない。


取材・文=小川由紀子



記事提供:Goal

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