【現地発】ブレーメン監督が惚れ抜いた逸材・大迫勇也。高いインテリジェンスと卓越した柔軟性は”クルゼ以上”だ

【現地発】ブレーメン監督が惚れ抜いた逸材・大迫勇也。高いインテリジェンスと卓越した柔軟性は”クルゼ以上”だ

2019.8.15 ・ 海外サッカー

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 カップ戦ではジャイアントキリングが起きやすい。それはドイツでも同じだ。


 恒例行事のように、今季のDFBポカール1回戦でも、ブンデスリーガのクラブが下部リーグ所属クラブを相手に失態を演じている。マインツは3部リーグのカイザースラウテルンに0-2で完敗し、アウグスブルクは4部リーグのフェールに2-1で敗北した。


 また、勝ち上がったとはいえ、ホッフェンハイムは3部リーグのビュルツブルクとPK戦にもつれこみ、長谷部誠と鎌田大地が所属しているフランクフルトも、3部のマンハイムに一時は2-3と逆転を許していた(最終的には5-3で再逆転勝ち)。


 そんななか、全く危なげなく1回戦を突破したのがブレーメンだ。相手は5部リーグのデルメンホルストであり、実力差が大きかったことは確か。だが相手のゲームプランを全く許さずに、格下相手だからと油断することなく、終始自分たちでゲームをコントロールしていた点は評価されるべきだろう。


 下部リーグ所属のクラブがジャイアントキリングを成し遂げるために一番大切なことは、可能性の保持だ。普段以上のモチベーションでこれまでのベストプレーをしようとする選手たちが、「ひょっとしたらいけるかもしれない」という自信を持ち続けられる時間。これが長ければ長いほど、地力を以上を発揮する可能性が高まっていく。


 具体的に言えば、相手の嫌がるプレーを徹底し、リズムに乗らせずに、どこまでもガツガツとぶつかり、ゴール前では人数をかけて守り、失点をしないで試合を進めていくことだ。

 そんな目論見を抱いていたであろうデルメンホルストの野望を、あっさりと打ち砕いたのが大迫という存在だった。


 大迫は開始直後からボールを絶え間なく動かして、デルメンホルスト陣営を揺さぶり続けた。そして、9分に自ら先制ゴールを決めてしまう。DFニクラス・モイサンデルからのパスから完全にフリーで抜け出した右SBゲブレ・セラシェが、ゴール前にダイレクトで折り返すと、素早く反応した大迫が右足でゴールを捉えた、完璧な崩しからの得点だった。


 さらに19分には、ヌリ・シャヒンからのCKを大迫がヘディングで流した先、モイサンデルが右足で押し込んで2-0とリードを広げる。ゴールシーンだけではなく、大迫は軽やかな動きでチームの起点としてボールを収め、パスを展開し、ゴール前では常にシュートを狙えるポジションを取り続けていた。 今季のブレーメンは、昨シーズンまでエースとして君臨していたマックス・クルゼの移籍で生じた穴を、どう埋めるのかが最大の課題とされている。スポーツディレクターのフランク・バウマンは、その穴を埋める存在として、アウグスブルクのオーストリア代表ミヒャエル・グレゴリッチ獲得に乗り出そうともしていた。


 ただ、昨季までのブレーメンは、クルゼが活躍しなければ勝つのが難しいというジレンマが常につきまとっていた。だからこそ、フロリアン・コーフェルト監督が目指すのは、いち選手に依存することから脱却した、「バリエーションが豊富なチーム」だ。そんなコーフェルトにとって、新しい軸となるべき選手が大迫なのだ。つねづね彼は、大迫を高く評価している。


「ユウヤは狭いスペースでもいつでも解決策を見出し、空いたスペースでうまく動くことができる。ゴールを背に向けてプレーするクラシカルなFWではなく、常に裏へ動けるFWだ。非常にクリエイティブで決定的なパスを出せて、自分自身でも決めることができるんだ」

 様々な状況・システムに瞬時に対応してみせる大迫は、コーフェルトのアイディアを具現化するために欠かせない存在なのだ。勝利したデルメンホルスト戦後でも、コーフェルトは大迫を絶賛していた。


「ブンデスリーガで違いを生み出せる選手だ。自信を持ち、とても集中してプレーできているんだ。今季はとてもいいシーズンを送ってくれるはず。ユウヤは、私にとってレギュラーが確約されている選手だよ」


 指揮官じきじきに定位置を確約された大迫は、今夏は十分なオフを取れたことで、プレシーズンから好調を維持している。


 インテリジェンスの高さに加え、クルゼ以上の柔軟性を併せ持つ大迫。彼が、ブンデスリーガどんなプレーを見せてくれるのか、そしてその活躍でチームを上位に導くことができるのだろうか。


 今週末に控えるブンデス開幕が、楽しみでならない。


文:中野 吉之伴


【著者プロフィール】

なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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