佳境を迎えた欧州の移籍マーケット。“カネ”以外で決め手となるのは?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

佳境を迎えた欧州の移籍マーケット。“カネ”以外で決め手となるのは?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2019.8.20 ・ 海外サッカー

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 欧州サッカーマーケットは、8月末(今夏は9月2日)で一区切りとなる。


 現時点で、夏の移籍の目玉は誰だったか?


 アトレティコ・マドリーからFCバルセロナに移籍したフランス代表FWアントワーヌ・グリーズマン、あるいは、ベンフィカからアトレティコに移籍したポルトガル代表FWジョアン・フェリックスか。二人のスターの移籍では、150億円とも言われる大金が動き、大きなニュースとなっている。


 そして8月19日、バルサがブラジル代表FWフィリッペ・コウチーニョのバイエルン・ミュンヘンへの期限付き移籍が決定。今後も移籍期限ぎりぎりで大物の移籍が成立する可能性もあるだろう。


 レアル・マドリーのコロンビア代表MFハメス・ロドリゲスはジネディーヌ・ジダン監督と公然と反目しており、移籍話がくすぶる。アトレティコ・マドリー、もしくはナポリが有力な候補に挙がったが、交渉は行き詰まっている。


 同じくマドリーのウェールズ代表FWガレス・ベイルも、ジダンから婉曲的に構想外を告げられた後、中国のクラブへの移籍は破談。プレミアリーグ復帰も市場は閉じ、残留の可能性が高まっているものの、電撃的移籍が決まっても不思議はない。


 その一方、マドリーはパリ・サンジェルマンのブラジル代表FWネイマールとも契約交渉を続けていると言われる。

  夏の移籍は、噂として立ち上っては消える、ということを繰り返し、全く別のチームとの契約に至ることもある。選手もクラブも同時に複数と交渉しているからだろう。情報リークもあって、虚々実々のやり取りになる。


「蛇」


 ヨーロッパでは、夏の移籍の噂をそう表現する。夏の蛇のように、見かけたと思ったらさっとどこかに消え、突然現れたりするからだろう。気まぐれで、煙のようでもある。


 そんな移籍を実現させるのは、実は大変な労力がいる。大金を用意し、ドンと積む。それだけでは、事足りない。やはり、人脈の中で決まる場合は多いだろう。


結局は人と人、その関係性の中で動くのだ。


 例えば、ジョゼップ・グアルディオラがマンチェスター・シティの監督を引き受けたのは、バルサ時代の盟友であるアイトール・ベギリスタインがフットボール・ディレクターの要職にいた影響が大きい。同じフットボールコンセプトを持った、バルサ時代の僚友として過ごした。また、グアルディオラがバルサ監督時代、ベギリスタインはテクニカルディレクターだった。

  ベティスは元バルサの選手が多いが、それも必然がある。強化部にバルサの監督や育成部長を経験したロレンソ・セラ・フェレールが在籍。クリスティアン・テージョ、マルク・バルトラ、アントニオ・サナブリア(ジェノアにレンタル中)、ウィルフリッド・カプトゥムなど、いずれもバルサ下部組織のラ・マシア出身で、コネクションを生かしている。ちなみにベティスからは今シーズン、ジュニオル・フィルポがバルサへ移籍した。

 

 個人同士であれ、チーム同士であれ、つながりがなければ交渉はなかなか進展しない。一つのルートができたら、大いに人の流れができる。

 

 そして交渉事は壮大に見えて、実に身近なものとも言える。

 「メッシがネイマール復帰に一役買う!」

 

 そんな記事が出たが、主力選手の口利きがクラブを動かす場合もある。Jリーグでも、そうしたケースが実は少なくない。契約を望む場合は、その縁を探すのが常套手段と言える。それがスポンサーだったり、メーカーだったり、どんな縁も手がかりになる。

 

 夏の移籍マーケット。最後に大きな動きがあるとすれば、やはりネイマールか――。蛇が出る。

 

文●小宮良之


【著者プロフィール】

こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。

 

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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