大会概要

2019年、アジアカップは変貌を遂げる。名実共に「アジアチャンピオンをかけて戦うビッグタイトル」として開催される最初の大会になる、と言っても良いだろう。

もちろん、これまでも重要なタイトルマッチではあった。だが、そのタイトルの意義を高めていた大きな要因の一つに、優勝国に与えられるFIFAコンフェデレーションズカップへの出場権が挙げられる。プレW杯としてW杯前年に開催国で行われていたコンフェデは、アジア諸国にとって「世界の強豪と真剣勝負ができる貴重な機会」だった。そのため、アジア全ての国が目指すタイトルというより「W杯出場が現実的な視野に入れることができる国だけが狙う大会」という印象が少なからずあった。しかし、コンフェデ自体が2017年のロシア大会を持って廃止されることになり、アジアカップは純粋にアジアNo.1の称号をかけて戦うのみとなった。

この決定にアジアカップの求心力が下がることを懸念するメデイアや関係者も少なくなかったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。理由はシンプルで、「アジア王者を狙う」というファンや選手の熱だけで、十分なモチベーションを維持できそうだからだ。日本代表としては2011年のカタール大会に分岐点を見ることができる。日本は4回目となる優勝を飾るのだが、その盛り上がりは過去3回の優勝とは一線を画していた。ザッケローニ監督の下、2010年の南アフリカW杯で活躍し、新しい象徴となった本田圭佑、長谷部誠、長友佑都らを中心としたサムライ・ブルーは、途中で松井大輔や香川真司といった主力が負傷離脱するなど、ドラマティックな過程を経ながら開催国カタール、韓国、オーストラリアを退けてタイトルを勝ち取った。そして、多くのファンがこの成果を讃えたのだ。

ザックジャパンの主軸となった本田、香川、長谷部、長友、松井、川島永嗣、吉田麻也など主力選手の多くは海外のクラブでキャリアを積んでいた。そのためヨーロッパで日常的に揉まれており、選手はもちろん、その姿を毎週テレビで見ていたファンも対世界の経験値を積んでいた、ということであろう。コンフェデ出場という特典の重要性は感じつつも、アジアを勝ち抜く価値の方が上回り始めたのだ。

この傾向がより鮮明になったのが2015年のオーストラリア大会だろう。アギーレ監督に率いられた日本代表は、前回大会の優勝メンバーを中心にさらに成熟されたチームで上位進出は堅いと見られていたが、実際にはUAEにPK戦で競り負け、ベスト8で大会を去ることとなった。内容的には押し気味だったものの、要所を抑えられ、UAEの術中にハマってしまった形での敗退だった。アジアを勝ち抜くことが容易ではなくなったことを改めて痛感する機会となった。

内容だけではない。2011年大会の動員が40万人だったのに対し、2015年大会は60万人、テレビ視聴者数は延べ10億人を超えた。ロシアW杯の入場者数が300万人超、テレビ視聴者数が35億と言われているが、アジア地域内の大会であることを考えれば大きく躍進したと言えるだろう。賞金も2015年大会から総額1千万ドルが設定され、国際大会として十分なレベルとなっている。

参加チームも24に増える。このチーム数は1998年にフランスで開催されたFIFAワールドカップに並ぶ。UEFA欧州選手権とも同じ出場国数だ。アジアには中国やインドといった多くの人口を抱える国がいくつも存在するため、さらに多くの人々の耳目に触れる事になるだろう。近い将来、規模的にユーロやコパ・アメリカを超えることは想定の範囲内だ。

日本、韓国、オーストラリア、イランといったW杯常連国を中心に享受されていた大会から、リアルにアジアのトップを決めるトーナメントへとレベルアップするアジアカップ。森保ジャパンの成績はもちろん、これからのサッカー界の動向を占うためにも注目すべきだろう。