カタールW杯まであと3ヶ月。新天地を求めた欧州組は、出場機会を得られるか?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第168回

カタールW杯まであと3ヶ月。新天地を求めた欧州組は、出場機会を得られるか?

By 清水 英斗 ・ 2022.8.22

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欧州シーズンが開幕した。今季は多くの日本代表の中心選手がクラブを移り、新天地でプレーを始めている。


サンプドリアを退団した吉田麻也はシャルケへ加入し、南野拓実はリヴァプールからモナコへ移籍した。伊東純也はゲンクからスタッド・ランスへ移り、リーグ・アンに参戦。守田英正はサンタ・クララから強豪スポルティングへの栄転を果たした。


シャルケでのローンが終了した板倉滉はボルシアMGへ移籍し、三笘薫は保有元のブライトンに戻ってプレミアリーグに初挑戦。久保建英はレアル・ソシエダで再スタートを切り、堂安律もフライブルクへ移籍した。


代表視点で言えば、彼らの今季前半戦の出場機会は、極めて重要なポイントだ。


3カ月後に控えるカタールワールドカップは史上初の冬開催であり、同時に欧州サッカーのシーズン中であるため、大会前の準備期間が10日程度しか与えられない。


これはチーム作りだけでなく、個人としても大きな課題だ。クラブでのパフォーマンスの好不調が、そのままワールドカップへ持ち込まれる。


前回のロシア大会で日本を率いた西野朗監督は、チーム合流時点で抱えている怪我、試合勘が無いことを問題とせず、直前キャンプを通じて本番に合わせてくれると信じ、ベテランの招集に踏み切った。


しかし、今回この手法は通じない。合流して10日程度で本番なので、直近のパフォーマンスがすべてだ。試合勘もコンディションも、クラブで充実させることがマストになる。


思い切った移籍が多い


だがその割には、チャレンジングな移籍が多い印象を受けた。特にフランス行きを選んだ伊東や、スポルティングへ移籍した守田、ブライトンに復帰した三笘らは、コンスタントに出場機会を得るのが簡単では無さそう。大丈夫か?


この辺りはタイミングも大きいが、選手自身のポテンシャルの自己評価も関わってくる。たとえば先日インタビューした遠藤航に、ワールドカップに際しての準備を聞くと、「正直ここから自分が劇的に伸びることはないと思うので、いかに最高の状態に自分を持っていくかが重要」と語っていた。冷静で現実的。計算できる主力だ。


その前にインタビューした三笘の場合は、「本大会までに、個人としてどれだけ成長できるかがカギ」と答えた。たった半年でも、彼は劇的に伸びる自信を強く持っていた。


29歳で欧州5年目と、25歳で欧州2年目。今回のワールドカップをキャリアのピークと捉えるか、通過点と捉えるかで考え方が違うのは当然だが、このタイミングで思い切った移籍を試みた選手は、三笘側の感覚なのだろう。


強気なステップアップで、名のあるクラブやリーグに所属する選手が増えた。計算できない強気な選択が、良い方に転がればいいが。


国内組の選出はどうなる?


11月のカタールワールドカップにおいて、クラブで出場機会を確保したまま合流してもらうことが何より大切だ。


その意味では9月のキリンチャレンジカップ2試合、アメリカ戦とエクアドル戦をドイツのデュッセルドルフで開催できる意義は大きい。


この最後の強化試合を欧州ではなく、仮に日本で開催すれば、移動負担のために選手がクラブでポジションを失うリスクが高いからだ。準備期間のない今回のワールドカップは、特にそれが致命的。そのリスクを強化試合の欧州開催で避けられるのは重要だ。


ただ、主力である欧州組の負担が減る一方で、大迫勇也や酒井宏樹ら国内組は移動の負担が増す。E-1選手権を回避してクラブに専念していた大迫や酒井らは、ようやくコンディションが上がってきた感があるので、9月に長距離移動させるか否かは微妙なところ。そこでコンディションを崩せば元も子もない。


彼らを再回避させ、空いた枠にE-1で活躍したマリノス勢を招集するのも一つの考え方だ。


横浜F・マリノスはこのところ、公式戦4連敗と調子を落としているが、彼らのサイド連係は、個人頼みになっている今のA代表に還元する価値が大きい。共にプレーするだけでも意味はあるはず。


「戦術・マリノス」を試すか


そのままのスタイルでドイツやスペインに向かえば玉砕必至だが、スコアや勝ち点状況に応じ、攻撃的に舵を切るオプションとして有効だろう。


組み入れるとすれば、1人や2人を招集して機能するスタイルではないので、水沼宏太、小池龍太、岩田智輝、藤田譲瑠チマ辺りから、少なくとも同サイドで3人以上は招集したい。


本大会のメンバー登録は26人に増えているので、不可能な話ではない。E-1で優勝を成し遂げた『戦術・マリノス』を9月に試すか否かは、一つの見どころだ。


とは言うものの、現状のマリノスは8月に入ってルヴァンカップとACLの敗退など、公式戦4連敗を喫しており、下降線の入り口にいる。この不調を長引かせれば、試合勘とコンディションの問題から、やはりカタールワールドカップでは期待できないことになる。


9月のキリンチャレンジカップに関しても、不調や失意を引きずった選手が代表に来たところで、還元されるものは乏しいだろう。まずは直近、マリノスの復調に期待したい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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