7大会連続W杯出場決定! オーストラリア戦で示された”森保ジャパン”の基本姿勢

COLUMN河治良幸の真・代表論 第107回

7大会連続W杯出場決定! オーストラリア戦で示された”森保ジャパン”の基本姿勢

By 河治良幸 ・ 2022.3.25

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森保一監督率いる日本代表はオーストラリアに2-0で勝利し、アウェーの地でW杯の切符を掴んだ。


雨のピッチで、ともにミスが多い試合ではあったが、大迫勇也が不在の中、森保監督がセンターフォワードに抜擢した浅野拓磨が裏を狙い、右から伊東純也が鋭い仕掛けを見せるなど、オーストラリアのディフェンスにアップダウンをさせながら得点を狙った。


一方で、縦パスがカットされた後の裏返しや、ボールの奪い合いで負けた直後のカウンターなど危ないシーンはありながらも、吉田麻也と板倉滉のところでほぼ破られず、GK権田修一も落ち着いたプレーでゴールを死守した。


前半26分には権田がハイボールを被り、ファーサイドでジャンニ・ステンスネスと競り合う山根視来に当たったボールがゴールラインを割ったが、権田に接触したセインズベリーのファウルで難を逃れた。


ほかにも、フルスティッチのクロスをファジアーノ岡山所属のミッチェル・デュークが頭で合わせたプレーなど、危ないシーンはいくつかあった。


チャンスを作った前半


対する日本は、伊東純也のクロスに南野拓実が頭で合わせたシュートがクロスバーに当たり、吉田のロングフィードに抜け出した長友が、シュートではなく速いクロスを選択し、南野が合わせたボールは再びクロスバーに嫌われた。


トータルチャンスで日本が上回った前半に、浅野や南野などが決めていれば、大きなアドバンテージになったことは確かだ。


遠藤航は「前半に1点取りたかった。実際にチャンスもありましたし、そこで決めていれば、チームとしてもかなり大きかった」と言いながらも「前半の最後の方は空いてきそうな感覚があったので、(オーストラリアは)後半落ちてくるだろうなという予想はありました」と振り返る。


「後半、チャンスがあるだろうなというのはありましたけど、相手も後半、前に人数をかけて来たりもしたので、そこは自分も気を遣いながらだったというか。守備にフォーカスしながら、前の選手が取ってくれることを信じてやっていました」(遠藤)


森保采配が勝負を分ける


オーストラリアは後半、東京五輪世代から抜擢されたボランチのメトカトーフを経験豊富なジェゴに代え、さらにウルグアイからの帰化選手、FWフォルナローリを投入してきた。


日本は浅野に代えて上田綺世、長友に代えて中山雄太を入れ、落ち着いたビルドアップを強めながら、タイミングを見た縦の攻撃でゴールを目指した。


勝負を分けたポイントは、森保監督の采配だった。引き分けでも予選突破に大きく前進する日本が、スコアレスのまま試合をクローズするか、勝ち点3を目指して攻撃的に行くかと言うところで、森保監督は後者を選択した。中盤に原口元気、左サイドに三笘薫を投入したのだ。


結果的に三笘の見事な2ゴールがもたらされるわけだが、川崎時代の同僚でもある右サイドバックの山根視来は「(三笘)薫が入ってきたのが、1つのメッセージだと思いました」と振り返る。


見事な連携でゴール奪取


後半44分の先制ゴールは左サイドで三笘が起点となり、中山雄太と絡んでボールを持った原口が右にドリブルで流れたところがスイッチになった。


原口からメッセージ性の高いパスを受けた山根は、タイミングよくボックス内に入り込んだ守田英正にボールを預け、ゴール右脇に走ってパスに追い付くと、厳しい態勢からマイナスにクロスを入れる。


上田の動きにディフェンスが釣られ、空いたコースに走り込んで合わせたのは三笘だった。山根は言う。


「横目で守田と目があったときに、彼は隠れてたんですけど、絶対に前に入ってくるという確信がありました。当てて入って行くという川崎からずっとやってたことを表現して、クロスに関しては、(三笘)薫が絶対にあそこにいると思っていました。無理な体勢でしたけど無理やり上げて、薫が決めてくれました」


“川崎トリオ”が絡んだゴールだったが、起点になった原口、そしてゴール前でディフェンスを引きつけた上田を含めて、攻撃イメージが合わさった見事なゴールだった。


さらに終了間際、焦るオーストラリアを嘲笑うような三笘の個人技から、2点目が生まれた。


勝負師の一面を見せる


試合前、筆者は森保監督に終盤のクロージングについて話を聞いていた。指揮官は勝ち点3を狙いに行きながらも、勝ち点1を持ち帰ることの大事さも十分に認識している様子だった。


森保監督は「引き分けに関しては、勝ちを目指すことで、最後得点に至らなければ、引き分けという形で終わるのは、それはそれで現実的かなと考えていました」と語る。つまり点を取りに行く姿勢を失わずに行くことが、森保監督のクロージングだったと言うことだ。


「これまでも、いい守備からいい攻撃にというコンセプトは選手たちに伝えて、戦って、ここまで来ました。今日の試合も、そのコンセプトは伝えていますし、選手たちはそれをインプットしながら、勝ちにいくためにはどうしたらいいのかというプレーの選択をしてくれたと思います」(森保監督)


三笘の起用については「攻撃の切り札と思われているかもしれないですけど」と前置きした上で「彼はいま、ベルギーで攻撃力も上げていると思いますが、守備であったり、攻守ともにチームに貢献できるところを川崎でも培いながら、ベルギーで非常にレベルアップしています」と語る。


森保監督はオーストラリア戦で、改めてマネジメントをしっかりやりながら、勝負師としての一面も見せた。その根底にあるのは「チームでどう勝つか」である。


選手起用もその一部であり、試合に出ていない選手やスタッフも含めて、一体感を持って戦って行く。W杯予選を通して育まれた基本姿勢は、W杯の組み合わせが決まり、強化試合を経てチーム力を高めて行く上で、ベースになってきそうだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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