ベトナムに引き分けた森保ジャパン。W杯に向けた収穫と課題とは?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第108回

ベトナムに引き分けた森保ジャパン。W杯に向けた収穫と課題とは?

By 河治良幸 ・ 2022.3.31

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29日に行われたW杯最終予選のベトナム戦は、アウェーで予選突破を決めた後の試合だけに、戦略的にもメンタル的にも難しい試合だった。


この試合に勝ってFIFAランクを上げることで、W杯の抽選会でポット2に入る可能性も残されていた。しかし招集したメンバーでできるテストはしておきたいし、選手に経験を積ませたいとなったときに、その見極めは難しかったはずだ。


「チーム全体として、誰が試合に出ても隙を突かれないように、我々がやろうとすることをよりスムーズに発揮できるように、選手層を広げていかなければいけないと思いました」


森保一監督がそう振り返るように、この試合で戦術的なチャンレンジをするというよりも、最終予選の後半戦でベースになった4-3-3(森保監督は4-1-4-1と呼んでいる)を、これまでと違うメンバー構成でトライした。


メンバーを見るとGK川島永嗣、4バックが右から山根視来、吉田麻也、谷口彰悟、中山雄太。中盤が右から原口元気、柴崎岳、旗手怜央、3トップが右から久保建英、上田綺世、三笘薫という布陣だった。


オーストラリア戦からは吉田と山根が残り、9人が入れ替わった。A代表の公式戦でスタメンがこれだけ入れ替わるのは珍しく、けが人などを除き、ほぼメンバーを固定して戦ってきた森保監督にとっては大きなチャレンジだった。


システム上の噛み合わせ


その中で、コミュニケーションや連携面での不足があり、森保監督の掲げる4-3-3は5-3-2のベトナムとかみ合わせがあまり良くなかった。(アウェーのベトナム戦は冨安健洋と大迫勇也がおり、ベストメンバー度という意味では、W杯出場を決めたオーストラリア戦より上だった)。


アウェイのベトナム戦は、序盤にカウンターから伊東純也が先制ゴールを決めたが、リードを奪ってからも攻撃がうまく行かず、セットプレー以外はあまりチャンスがない中で、1-0の勝利をあげたに過ぎない。


これまでのベトナムの戦いぶりを見ても、ホームだからといって圧倒できる見込みが高くはない相手だった。


勝利という結果を最優先に考えるなら、4-2-3-1で入る方が、ベトナムとの噛み合わせは良い。森保監督の4-3-3は、サイドの守備を安定させることをベースに考案されたものだからだ。


ベトナムはサイドバックが駆け上がるシーンこそあるものの、基本は2トップにボールを当てる中央の速攻で、ゾーンでワイドをケアする4-3-3はあまり効率が良くない。


5バックを攻略する1つの鍵は、外側から一度背後を狙い、相手のラインを下げながら開かせることだが、左利きの久保が右、右利きの三笘が左に配置された4-3-3の場合、中央に矢印が向いてしまう。


4-2-3-1にしても4-3-3にしても、サイドバックの上がりが鍵になるが、柴崎がアンカーを担う組み合わせで、右サイドバックの山根も左の中山も、中央のカウンターのリスクケアを意識したポジションになってしまっていた。


前半の失点が響いた


最終戦に臨むにあたり、ベトナム対策というよりは、自分たちに矢印を向け、従来通りのシステムを異なるメンバーでテストし、経験を積ませる狙いがあったのだろう。しかし、噛み合わせを考えずに押し切れるほど、ベトナムは甘い相手ではなかった。


前半をスコアレスで折り返すことができれば、後半のメンバー交代でギアを上げて勝負をかけるプランはあったはず。しかし、セットプレーでの失点というビハインドが加わってしまった。前半20分、グエン・コン・フォンの速くファーに伸びるボールを、グエン・タイン・ビンにフリーで叩き込まれたのだ。


失点シーンについて、森保監督は「相手が我々のマークを上回る陣形を組んできて、彼らがデザインされていたものを出してきた」と振り返った。これに関して、より詳しい説明をしてくれたのは、キャプテンの吉田麻也だ。


「相手が縦並びで待っていたので1、2、3でポジションに戻るって、マークじゃなくてゾーンで戻りながらということだったのですが、ミスというよりは認識不足というか、守備の仕方がうまくいかなかった。後半はマンツーでしっかりつくと変えて、うまくいきました」


結局、ここで負ったビハインドを取り返したのは、伊東純也を入れて、4-2-3-1にした後半9分だった。左に開いた久保のパスから原口がシュートに持ち込み、GKに弾かれたボールを吉田が押し込んだ。


主力を出してギアが上がる


その後、日本はカウンターで危ない場面を迎えながらも、前半より高い位置でのボール奪取やサイドバックが攻撃参加する形ができていた。試合の流れが日本に向く中で、森保監督は田中碧、南野拓実、守田英正と主力メンバーを出してギアを上げた。


そうした効果が田中碧と上田綺世の”幻のゴール”につながったわけだが、前者は南野のハンド、後者はオフサイドに嫌われた。


この試合、いつもと違うメンバーをテストした以外で収穫があるとすれば、前半にリードされ、後半をビハインドで迎えるというW杯で起こりるシチェーションを経験できたこと。そしてオーストラリア戦の勝利で浮かれたわけではないが、チームを現実に引き戻したことだ。


W杯で戦う相手は、ベトナムより強敵だ。早い時間にリードを奪われると、相手は固い戦いをしてくるだろう。そうした相手から同点、逆転のゴールをあげるのは簡単ではない。それをベトナムに思い知らされた。


限られた強化試合を有効活用したい


この結果により、W杯抽選のポット3が確実になったことについて、森保監督は「ポットにおいては、有利になることも考えられるかもしれませんが、W杯に出てくるチームはすべて強豪です。我々がベスト8以上の結果を掴み取る部分において、ポットが結果を保証してくれるものではない」と語った。


この言葉を信用するならば、ベトナム戦はポット2にこだわって戦っていたわけではないということだ。


今後、限られた強化試合で、戦術的なオプションをテストすることになるだろう。その際に、ベースの戦い方をする中で、組み合わせやメンバーの慣れでパフォーマンスに影響が出ることも認識しておかなければならない。


ここから抽選会があり、反町康治技術委員長を筆頭に、本大会に向けてベストのマッチメイクを探っていくことになる。さらには、選手個々のレベルアップとコンディショニングも大事な要素になる。


ただ、結局は彼らをまとめる森保監督のプランニングがものを言うだけに、「W杯ベスト8以上」という目標達成のために、研ぎ澄ませて行ってもらいたい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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