チームと個人の成長を目指し、モーリスレベロ・トーナメントに臨む”03ジャパン”

COLUMN河治良幸の真・代表論 第112回

チームと個人の成長を目指し、モーリスレベロ・トーナメントに臨む”03ジャパン”

By 河治良幸 ・ 2022.5.30

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冨樫剛一監督が率いるU-19日本代表は、5月29日からフランスで行われるモーリスレベロ・トーナメント(旧トゥーロン国際)に臨む。2003年生まれ以降の選手たちで構成される”03ジャパン”にとって貴重な国際経験の場だ。


日本はC組で5月31日にアフリカ勢のアルジェリア、6月3日にコモロ、6日に南米のコロンビアと対戦し、成績に応じて順位決定戦もしくは準決勝に進む。A組には開催国のフランスやアルゼンチン、B組にはメキシコなどがおり、理想は準決勝、決勝と強豪と戦うことだ。


JFAの反町康治技術委員長は、この大会に参加する意義を次のように説明する。


「この世代は(コロナによる)空白の2年間で、全く海外と試合していない。欧州や南米の国に比べると、どうしても先頭を走っているところが見えなくなって来ている。なるべくこの1年半年で、テンポアップしないといけない」


ほぼ同時期に、カタールW杯を半年後に控えたA代表、2年後のパリ五輪を目指すU-21日本代表が活動するため、日本代表サポーターにとっても忙しい期間になるが、来年のU-20W杯を目標とする”03ジャパン”からも、パリ五輪世代に食い込む選手が出てくる期待は高い。


欧州組を選出


現時点でも、2003年生まれの松木玖生(FC東京)や2004年生まれのチェイス・アンリ(シュトゥットガルト)が、ウズベキスタンでアジアカップU-23に挑むU-21日本代表に招集されており、東京五輪の候補合宿を経験した中野伸哉(サガン鳥栖)は「僕自身も、上の方でやりたい気持ちはあります」と語っている。


それでもフランスの地で、普段は経験できない相手と最大5試合できるのは貴重な経験で、国際的な目はアジアカップU-23よりも高いかもしれない。


中村仁郎(ガンバ大阪)は「そこで違いを見せれば、海外のスカウトの目に留まるかなと思っている。自分は絶対海外に行きたいと思っているので、そこで結果を残せたらいい」と野心的だ。


今回のチームには、サガン鳥栖からオーストリアに渡って活躍するFWの二田理央(FCヴァッカー・インスブルック)。さらに母親が日本人という髙橋センダゴルタ仁胡(バルセロナ)、前田ハドー慈英(ブラックバーン・ローヴァーズFC)という欧州組が招集されており、多くの選手にとって刺激になるだろう。


U-20アジアカップ予選を控えて


冨樫監督としても、”海外組”の実力、チームでの適性を見極めるチャンスでもある。中井卓大(レアル・マドリー)をはじめ、まだまだいる海外組から、来年のU-20W杯に向けて、チームに組み込まれていく可能性はある。


まずはバルセロナ所属の髙橋、香港生まれの前田、そしてサガン鳥栖アカデミー出身の二田がどう言ったパフォーマンスでアピールするか注目だ。


二田について、鳥栖のアカデミーで同僚だった中野は「帰って来た時にちょっと話をしたりとかして。体もすごい大きくなってって。シュートのパンチ力とか、前よりゴールに向かう意識が変わった」と言う。


「本当に、代表で一緒にやれるというのはすごい嬉しいことです。サガン鳥栖にとってもすごく嬉しいことだと思うので、僕のアシストだったりを決めて欲しい」(中野)


大会後の9月にU-20アジアカップ2023の予選があり、日本はC組でイエメン、パレスチナ、ラオス、グアムと対戦することが決まっている。


その中で1位になるか、2位の場合は10組中上位5チームに入らないと、U-20W杯の予選を兼ねる来年のアジアカップ2023に進むことができない。冨樫監督としては、その予選に臨むベースとなるメンバーを国際舞台で見極めるチャンスでもある訳だ。


注目の横山歩夢


今回のチームを構成するにあたって、冨樫監督は「できるだけ、所属チームで出場機会を得ている選手を優先した」と語る。


GKが木村凌也(日本大)など大学生3人になったのも、そうした事情が関係しているようだ。実際、高卒1年目やユースからの昇格年で、Jクラブでレギュラーを取れている選手は少ない。


その意味で大きな期待を集めるのが、横山歩夢(松本山雅)だ。早生まれのため高卒2年目というアドバンテージもあるが、所属チームのエースに君臨する横山は、J3でここまで6ゴールを記録している。


前回の合宿では大学選抜を相手に2ゴールを記録するなど、存在を大きくアピールして背番号10を与えられた。


「得点王は目指していきたい」という横山は、日の丸を背負う自覚と同時に、松本山雅の代表としての意識を強く持っての参加となる。


今回は”インターナショナルマッチデー”と同時期に開催されるが、J3はこの期間にも行われる。つまり松本はチームのエースである横山を欠いて、数試合を戦うことになるのだ。


それでも松本山雅から代表選手が出て、しかも10番を背負う価値ははかり知れないものがある。


松本山雅の元監督でもある反町委員長は「(松本には)なかなか高卒の選手が来ないけど、(横山の選出で)そこに効果が出てくる。名波監督も僕も、同じように考えていると思う」と語り、クラブの中長期的なメリットになってくることを強調する。


貴重な国際経験を積める場


松本山雅といえば、同じく高卒で加入した前田大然(セルティック)が、水戸への期限付き移籍などを経て、現在はA代表でカタールW杯を目指す有力候補の一人にまで成長している。


そうした価値が代表にあると同時に、所属クラブの大事な時期に、代表チームで活動する選手には責任がある。


『故郷に錦を飾る』ではないが、代表で活躍することで、クラブの名前を知らしめる役割も背負って戦うことになる。横山は松本のエースとしての自覚を感じさせるが、多くの選手はまだ、チームで地位を確立できていない現状がある。


現在、サガン鳥栖で主力に定着できていない中野も「良い自信を付けて、チームに帰った時に勝利に貢献できることだったり、主力で出て戦っていくことが大事だと思う」と意気込む。


チームにとってモーリスレベロ・トーナメントは、U-20アジアカップ予選、その先のU-20W杯に向けて経験を積み、ベースを作っていくための機会であり、選手個人が飛躍の転機とするための舞台でもある。


そうした思いに共通するのは、大会での優勝を目標に、1つ1つの試合で勝利を目指してベストを尽くすということ。


筆者も3つのカテゴリー、さらに”なでしこジャパン”の活動も含めて追うのは大変ではあるが、若き日本代表のフランスでのチャレンジにも注目していきたい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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