日本代表が6月シリーズで試した「2つのこと」とは?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第165回

日本代表が6月シリーズで試した「2つのこと」とは?

By 清水 英斗 ・ 2022.6.20

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6月のA代表シリーズで、森保ジャパンが挑戦したことは何か?


一つは、ドイツやスペインを想定したブラジルとの対戦で、最終予選の完成形であるファーストセットをぶつけたことだ。東京五輪の反省から、強豪チームに勝つためには自陣深くからのビルドアップを向上させなければならないと、課題を立て、試合に臨んだ。


それ自体は良いトライ。しかし、落とし穴もある。ファーストセットの主役と言ってもいい守田英正が、コンディション不良で出場できなかったことだ。


最終予選では彼と田中碧がポジションを入れ替えたり、下がる位置を変化させたり、サイドバックを押し出したりと、ビルドアップ全体を司る指揮者を務めた。間違いなくキープレーヤーだ。


ところが今回、守田を欠いた日本は、そうした可変が消えてしまった。ブラジルの連動したプレッシングに対し、4-3-3の初期配置で硬直したまま、自陣、特にゴールキックからの脱出に苦しみ続けた。


結局、ファーストセットは守田、田中、遠藤航の3人が揃わなければ機能不全。今回は課題をビルドアップに設定した以上、せめて連係のパターンを準備するべきだったが、そうした変化が乏しく、最後まで4-3-3の硬直は解けなかった。


鎌田が見せた、個の力


後半になると鎌田大地を投入したことで、彼のキープ力を起点に、敵陣へ展開できる場面が増えた。個人に頼るしかないのは気にかかるが、守田を欠いた際のピースとして、鎌田は頼もしかった。


ただ、個人的には前半の戦い方も、後半の戦い方も、両方ダメだと思っている。


試合後のオンラインインタビューで遠藤の話を聞いたが、前半のビルドアップは縦へ急ぎすぎて展開がなく、逆に後半はボールを展開できたけど、横パスが多くなってしまった、と彼は感じたそうだ。遠藤にとっては前半も後半も、ビルドアップの手応えはある程度でしかなかった。


筆者も同感だ。前半の日本は、吉田麻也から中山雄太、中山から南野拓実、あるいはサイドへ走る田中へ、相手を背負わざるを得ないタッチライン際の縦パスの連続で、全体的にワンサイドへ追い込まれる場面が目立った。


その結果、縦へ運べば運ぶほど、窮屈になる。そのサイドを個人がズバッと入れ替われば、状況は激変するが、攻めの効率は悪い。


後半は鎌田が入り、前半に乏しかった逆サイドへの展開が増えた。ワンサイドからは脱出したが、ブラジルは素早く帰陣し、真ん中を固めてしまう。日本は三笘薫らを投入してサイドを攻めたが、決定機には至らなかった。


チーム戦術に改善の余地


ペナルティーエリアの幅を攻略できない、という意味では、縦に急いだ前半も、横につないだ後半も、両方ダメだった。後半の改善に関しては、サイド勢の三笘薫、伊藤洋輝、伊東純也、山根視来らを中心に、コンビネーション打開の向上を期待するしかない。


では、前半についてはどうか。こちらはチーム戦術として改善の余地が大いにある。


ロングカウンター、あるいは相手のハイプレスを受けての疑似カウンター、どちらでもいいが、最初からサイド、サイドではなく、一度中に起点を作って縦へ飛び出せば、かなり形は変わってくる。


パラグアイ戦の1点目がまさにそれ。伊藤からのロングパスで浅野拓磨が中央でつぶれ、原口元気が拾った形から速攻が実った。


ブラジルの守備は甘くないので、原口から浅野へのスルーパスは通らず、サイドを走らせる形になるかもしれない。ただ、相手の帰陣前かつ、一度中へ絞らせているので、ウイングがスピードを伴ってペナルティーエリアの幅へ仕掛ける機会は、十分に想像できる。


ワールドカップではスペイン、ドイツ、決勝トーナメント1回戦と、ベスト8を見据えれば、強豪と3回戦うことになる。3つの引き分けでベスト8を成し遂げることも不可能ではないが、確率を上げるには、強豪相手でも点を取らなければならない。


どうやって相手のアタッキングサードへたどり着くか。相手の守備がどうなっている状態で、たどり着くか。ここが重要だ。


……ただ、間に合うのだろうか。


セカンドセットの模索


6月に森保ジャパンがチャレンジしたことの二つめは、セカンドセットの模索だ。もはや模索と言っていられる段ではないが、模索と言うしかない。


パラグアイ戦とチュニジア戦では、浅野、鎌田、原口、遠藤、さらにGKシュミット・ダニエルのセンターラインが共通して起用された。


カタールワールドカップは5人交代が可能になるため、連係が取れている箇所を2~3枚、同時交代させることが容易だ。たとえば守田、田中、遠藤の中盤ファーストセットを、丸ごとセカンドセットに変更してもいい。


鎌田や原口をいかに川崎組のコンビネーションに馴染ませるかと、頭を悩ませる必要はなく、連係セットのまま、丸ごと入れ替えればいいのだ。


ファーストセットにはない特徴


この6月、パラグアイ戦とチュニジア戦の2試合で、センターラインに共通メンバーを並べたことには必ず意味がある。


ロングキックの飛距離を誇るシュミット・ダニエル、背後へ走れる浅野と原口、その近くにキープとパスに長けた鎌田。この面々、カウンターなど縦の鋭さはかなり魅力的だ。ファーストセットには無い特長を備えた、セカンドセットの匂いがぷんぷんする。遠藤……はとにかく頑張ってもらう。きついときは守田で。


ただ、パラグアイとチュニジアに対し、セカンドセットで挑んだということは、本戦もこのセットでコスタリカと戦うことを想定したのだろうか。コンディション的に言えば、ドイツにファーストセット、コスタリカにセカンドセット、スペインにファーストセットと、3戦のマネージメントは考えやすい。


しかし、特徴的に言えば、このセカンドセットこそ、対強豪向けだ。守勢からのカウンターに個性を出せるメンバーが揃っている。出来れば[5-3-2]のような並びで、相手を引きつけてロングカウンターを繰り出す形をドイツやスペインにぶつけてほしいし、ブラジル戦でも起用してほしかった。


注目したい、初戦のメンバー


そうなると難しいのは、初戦の考え方。上記の想定でいくと、日本は本大会、初戦のドイツ戦にセカンドセットで向かうことになる。


強化試合のブラジル戦さえ、「せっかく強豪と戦う機会なのだから、変なことせず、真っさらにぶつかったほうがいい」と主張する識者が日本は多いくらいなのに、その日本が、4年に1回のワールドカップ初戦に、セカンドセットで向かう? 


正直、イメージしづらい。オランダやメキシコなど熟練の国ならともかく。やっぱり日本は、森保ジャパンは、ファーストセットで真っさらに、初戦に臨むんだろうなと思う。


欧州組が増えた昨今、個人は普段からそのレベルでプレーしているのだから、本来はチームがもっと色々なことを仕掛けたほうがいい。


「せっかく強豪と戦う機会なのだから、変なことせず、真っさらにぶつかって力を試したほうがいい」


こうした三下発想の国が、ワールドカップのベスト8に輝く姿は、なかなか想像できないのだが。


前回大会で苦汁をなめたドイツに油断はない。相当日本を研究してくるはず。まさかのセカンドセットで、ドイツをひっくり返らせたら面白いのだが。


まあ、妄想はタダだ。いずれにせよ、カタールワールドカップは『セカンドセット』が戦術トレンドになると思う。5人交代も恒久化が決まったことだし。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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