「トップチームに昇格できない=進学か引退」はもったいない。クラブ所属の高3に昇格可否期限の設定を!

COLUMN川端暁彦のプレスバック第45回

「トップチームに昇格できない=進学か引退」はもったいない。クラブ所属の高3に昇格可否期限の設定を!

By 川端 暁彦 ・ 2017.7.28

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第41回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会が、7月23日より群馬県内にて開催されている。部活動に所属せず、クラブチームでのプレーを選んだ高校生による夏の祭典であり、高校年代のクラブチームの大会としては最も長い歴史を持つ全国大会だ。現在は出場チームのほとんどが、Jリーグの育成組織によって占められるようになっている。


多くの「タレント」を観ることのできる大会だが、この大会に出場する高校3年生の進路も、大体この時期に前後して決まっていくのが通例だ。トップチームに昇格できるか否か。それがこの大会で決まってしまうこともある。大学推薦を取るためにも、実は重要な大会だったりもする。


別のクラブなら、プロになれているのでは?


その一方で、「トップチームに昇格できるかどうか」に、選手側の視点がしばし限られてしまう弊害も感じる大会だ。進路が見えてくる大会なので、「あの選手が昇格できないのか」と驚くことも少なくない。そして同時にこうも思ってしまうのだ。「別のクラブなら、プロになれているのではないか」と。


Jリーグは善くも悪くも平和で友好的なリーグであり、ユース年代での選手移籍に関してJクラブ同士で紛争が発生することは非常に少ない。コーチ研修でベルギーにいる横浜FMの坪倉進弥氏は、育成年代から選手に代理人が付いて“青田買い”をやり合っている欧州の環境にあらためて驚かされる部分があったそうだ。


試合中に選手と監督が口論したら、対戦相手のクラブからその選手にオファーが来るなんてこともあったそうだが、日本では考えられない事態だろう。日本では18歳になっても契約で縛られている選手はごく少数で、ファジーなルールと暗黙の了解によって拘束を受けている。


所属選手の昇格可否に期限を設ける


現状のように、昇格させるかどうかのジャッジを当該クラブが決める。ここまではいい。紳士的な移籍環境もいいだろう。恐らく日本人の多数派はそちらを望むはずだ。ただ、より多くの選手がチャンスを得られるために、もう少しルール化も必要だと感じている。


一つの提案としてあるのは、そのジャッジに期限を設けることだ。


たとえば「高校3年生の7月31日までに、昇格可否の判断を下す」といったことである。プロ選手でも契約切れの6カ月前から移籍に関する交渉を自由にすることができるようになるが、同様の規定をユース年代の選手に適用できないだろうか。


当たり前だが、昇格可否の判断は当該選手の実力のみならず、トップチームの状況に大きく左右される。左サイドバックが豊富なチームで左サイドバックの選手が昇格を勝ち取るのは難しいが、そうでないチームであれば逆に可能性は広がる。


観る人が違えば評価が変わるのもサッカーの常なので、そのクラブのフロントが「プロに値しない」とジャッジしたとしても、他のクラブで違う評価をくだされることはある。これはカテゴリー違いの場合も同様で、J1の上位クラブで昇格できない選手が、J2クラブでプロになれないレベルかと言うと、話は違ってくる。


別のJクラブからオファーを受けても進学を選ぶ?


有力なJクラブの多くは大学との「パイプ」を重視する考えから、選手をプロテクトしながら大学へと送り出すところが多い。本人が本当に進学を希望しているのならまったく問題ない選択だが、別のJクラブからオファーを受けられるとして、なお進学を選ぶプレーヤーばかりではないという感触もある。


Jリーグが四半世紀の歴史を刻んで育成組織を整備してくる中で、そこに所属するタレントの質は確実に上がってきた。一方で、「雇用のミスマッチ」と言うべき状況も生まれている。


Aというクラブのユースチームにいる選手が、そのクラブのトップチームに需要のない選手だとしても、Bというクラブのトップチームでは需要がある。そんな可能性は大いにあるはずだし、少なくともそうした選択の可能性を探る機会はもっとあっていいのではないか。


現状では高校生が所属するチームが認めたケースだけ限定的に許されている状況であり、クラブによっては「時たまそういう例もある」という程度だが、明瞭化していけば、可能性は広がっていくはずだ。


7月31日までに、トップチームは所属している高校3年生と契約する意思があるかどうかを明確化する義務を負う。同時にそこで明示されなかった選手が誰なのかという情報をJクラブは相互に共有し、契約を交渉する権利を互いに認め合う。もちろん、他クラブの育成組織に所属する選手獲得に際しては、規定のトレーニング費用を支払うこととワンセットだ。


選手の可能性を広げるルールを


育成年代で、欧州のような殺伐とした選手の引き抜き合いが行われることへの弊害が大きいというロジックは分かる。一方で、欧州ではビッグクラブのユースから昇格できなかった選手がプロ入りをあきらめるのかと言えば、そんなことはないだろう。


雇用の流動性を高めてミスマッチを解消することは、選手にとってもリーグ全体にとっても利益が大きいのではないだろうか。「Jリーグは活躍している十代の選手が少ない」のではなく、そもそも「需要のあるクラブに若手が行っていない」面もあるのではないか。


「昇格できない=進学か引退」という現状の流れは乱暴に過ぎる。7月の群馬で可能性を秘めた選手たちの戦いぶりを観ていて、あらためてそんな気持ちを抱いた。(文・川端暁彦)


写真提供:川端暁彦

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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