“計画的なリアリスト”鎌田大地はどんなキャリアを歩むのか。日本代表への返り咲きは?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第157回

“計画的なリアリスト”鎌田大地はどんなキャリアを歩むのか。日本代表への返り咲きは?

By 清水 英斗 ・ 2022.3.14

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【鎌田大地選手独占インタビュー動画】

「日本代表 最終予選のここまでについて思うこと」鎌田大地①
「海外クラブで活躍し続けるために」鎌田大地②
「サッカー選手としてのこだわりと理想の監督とは?」鎌田大地③

そこに鎌田大地の名前は無かった。


「僕もびっくりしました。正直」


この2年ほどの間、日本代表のスタメンに名を連ねた主力の一人。その鎌田の名が、1月末に発表されたワールドカップ・アジア最終予選、中国戦とサウジアラビア戦に向けたメンバーリストから、姿を消していた。


今回行ったインタビューで当時の心境を聞いたところ、招集外は自身にとっても驚きだったそうだ。


「(フランクフルトの)チームメイトや監督もびっくりしていたし、今のクラブの規模で試合に出続けて、選ばれないことはないと思っていた。そういう部分ではびっくりしました」


転機は昨年10月のオーストラリア戦だった。日本代表がシステムを4-3-3に変更し、以降の鎌田はプレー機会が激減した。3試合続けて出番がなく、その流れから、前回はまさかの招集外に至った。


もっとも、それをシステム変更のせい、とするのはやや誤った見方だろう。実際、鎌田自身は4-3-3のインサイドハーフを、自身の最適ポジションと捉え、森保監督にも直接伝えたことがある。2次予選の終盤は4-3-3にトライし、鎌田がインサイドハーフで起用された試合もあった。


しかし、今はそれを実践していない。守田英正や田中碧など、元々ハードワーカーであるボランチタイプを並べる形のほうが、森保監督が描くチーム像、あるいは4-3-3を選ぶ意図にも近いようだ。


それは前回、代表に復帰した久保建英についても、同様にインサイドハーフではなく、4-2-3-1に変更してまで、トップ下で起用した点からも伺える。


監督が描くチーム像と、選手のチョイス。4-3-3の意図。その方向性から、前回は鎌田が招集外になったわけだ。


ただし、彼は飄々と言う。


「そこまでダメージはなかったですね。チームにフォーカスできるし、自分はフランクフルトで、良いチームでやっている自覚があるので、このチームでプレーして選ばれないのなら仕方ない。そう割り切れるくらいの感覚です。フォーメーションとか、誰を使うかは僕が決めることではなく、監督が決めることなので、僕自身はチームで出続けていくのが大事です」



ドイツの2番手グループでプレー


昨季、フランクフルトはブンデスリーガ5位。惜しくもチャンピオンズリーグ出場権を逃したが、ここ数年は安定して一ケタ順位だ。バイエルンやドルトムントといったトップグループの後方に位置する、2番手グループの一員と言っていい。


今季のヨーロッパリーグでも、オリンピアコスやフェネルバフチェといった、CLで名を聞く強豪が集うグループを首位で通過し、決勝ラウンドに駒を進めた。


そのフランクフルトに、鎌田は5年所属している。(※18-19シーズンはシント・トロイデンに期限付き移籍)


「フランクフルトも僕が入った年は残留争いをしたけど、ドイツの中でも良いクラブになってきました。大きくなろうとするクラブだし、街も良くて、お金もかけ始めている。ただ、クラブが良くなって、ステップを踏む必要がなくなり、逆に今、フランクフルトの上を見つけるのが難しくなってきました」


たしかに、今のフランクフルトからステップアップするなら、行き先はビッグクラブばかり。ピラミッドは上へ行けば行くほど、席が少なくなる。昨夏、新しい景色を見るために移籍を考えたが、欧州クラブにコロナ禍の経営ダメージもあり、成立には至らなかったそうだ。


「僕は25歳だし、正直もう若くないので、ここから先は考え方を少し変えながらやっていく必要があるのかなと。今まではスモールステップアップに留まるクラブからのオファーは、基本的に断ってきました。ただ、契約も残り1年になるし、今後はたとえ自分が夢に描いたようなクラブからのオファーでなくても、ある程度チームと話し合って決めていかなければ、と思っています」


鳥栖で2年半プレーして海外へ行くことも、フランクフルトで共に上位へステップアップすることも、鎌田は計画通りにキャリアを積み上げてきた。ともすれば次は、悩ましい選択を迫られるかもしれない。


だが、鎌田はそのステージに立っている。今が何合目かはわからないが、少なくとも中腹に立ち、頂きを望む。


チームで試合に出続けることが大事


日本代表に話を戻すと、ブンデスリーガ2部で残留争いの中、3部落ちも危ういデュッセルドルフで主力になれていない、田中碧がレギュラーだ。鎌田は招集外。


フランクフルトの同僚が驚くのも無理はないが、ある意味、これがサッカーだ。監督が描く戦略やチョイス、好みにかなり左右される。それは日本代表の鎌田にも、デュッセルドルフの田中にも通じる。


だからこそ、「誰を使うかは監督が決めることなので、僕自身はチームで出続けるのが大事」というわけだ。物差しがはっきりしているので、招集外もすぐに割り切り、「ダメージはなかった」のだろう。


このようにチームと自分の方向性が多少ずれるのは、鎌田にとっては珍しいことではないようだ。


「自分に合ったプレースタイルでプレー出来ていたのは、正直中学生ぐらいまでです。高校も、プロで入った鳥栖も、特につなぐチームではなく、守備やハードワークを求められる中で自分の良さを出そうとしました。フランクフルトも去年はうまくパスをつないだ時期もあったけど、基本的には守備から速いカウンターです」


今季フランクフルトで指揮を執るのは、元ヴォルフスブルクのオリバー・グラスナーだ。昨季よりも、守備とカウンターに重きを置いている。


「1年目のニコ・コバチもトレーニングはきつかったけど、今の監督(グラスナー)のほうがきついですね。今までやってきた中で一番きつい。練習自体の量が多いし、スプリントをめちゃくちゃする。フランクフルトはリーグの中でも走りの数字が上位なので、成果は出ているけど、結構きついです」


「正直、自分に合っているかと言われると、そこまで合っているチームとは思えないですけど、まずはサッカー選手なので。合う合わないどうこうの前に、自分の仕事。自分に合わないと言ってプレー出来なければ、仕事が無くなるだけ」


首がもげるほど頷く。合う合わないは確かにあるが、それは考えすぎても無駄。仕事なら、合わせるしかない。最初から一択なのに、そこで悩んでも仕方がない。


日本代表への復帰は?


ただ反面、合わせるだけでは、先がないのも確かだ。


「試合に出るために、チームに求められる仕事だけをやって、選手として上に行けるかというと、そこは難しい。だから僕が思っているのは、自分の良さをなくさず、どれだけチームに求められることを出来るか。それを常に意識しています」


計画的なリアリスト。鎌田は今後どんなキャリアを歩むのか。そして、いつ代表へ返り咲くのか。早くも3月か、あるいは最終予選突破を決めた後か。


鎌田は現役引退後、日本で監督をやりたいそうだ。なぜなら欧州へ来て、監督がどれだけ大事なのかを知ったから。動画中でも語られている。


監督には様々なタイプがいるが、ジネディーヌ・ジダンのように、元選手の圧倒的なカリスマでマネジメントする指揮官が理想らしい。


さらにニコ・コバチのように家族や友人をコーチに置き、ユリアン・ナーゲルスマンのように若い監督にもなりたい、と。そして、そんな野望を語りつつ、「第一人者がいい。誰かが先にやったらやめるかも」と掴みどころなく笑う。それも彼らしい。


まあ、ジダンが理想なら、キャリアはもっと必要だろう。まだまだここから。楽しみだ。

(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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