ドイツとはまるで違う日本人選手の“スペイン挑戦”。「なぜ言葉がわからない人間にパスを出す必要がある」【小宮良之の日本サッカー兵法書】

ドイツとはまるで違う日本人選手の“スペイン挑戦”。「なぜ言葉がわからない人間にパスを出す必要がある」【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2020.9.18 ・ 海外サッカー

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 海外挑戦。


 それは一括りにするべきではない。例えば、ヨーロッパだけで見ても、各国、成功する条件は違っている。その難易度も当然、別だ。


 例えば、ドイツでは日本人の勤勉さ、規律正しさ、真面目さが尊ばれる。組織のために振る舞える、仕事をやり切る献身性などが一定の評価を受ける。それはドイツ人にとってもプライオリティーの一つで、逆に寡黙であっても、その国の言語ができなかったとしても、致命的にはならない。


 その環境が、ブンデスリーガで多くの日本人選手が活躍できている理由の一つになっている。日本人であることがマイナスにならない。仕事が認められることによって自信にもつながり、精神的なゆとりにもなり、十全に力を発揮できるのだ。


 ドイツ語を喋れた方が良いが、運命を左右することにならないし、少なくとも猶予が与えられるだろう。


 ところが、スペインではまるで勝手が違う。

  スペイン人は、日本人の勤勉さ、規律正しさ、真面目さを正しく評価しない。彼らにとって、そうした性質はプライオリティーが低いのである。それよりも、オープンに人と付き合い、コミュニケーションの中で理解を深められることを、彼らは当然の義務として求める。


 意思疎通の中で、自己主張できるような選手のみが認められるのだ。


 スペイン語が喋れない、というのは大きなハンデになるだろう。コミュニケーションの意志を見せない日本人選手は、ことごとく失敗してきた。それはスペイン、ラ・リーガにくる選手の多くが、南米やポルトガル、イタリア、フランス、ルーマニアなどで、「言語が同じか、言語体系が同じ国」という理由もあるだろう。


「なんでスペイン語もわからない人間にパスをし、活躍させて、同胞やスペイン語の分かる友人がポジションを取られなければならない」


 憤慨気味に語っていたスペイン人もいたほどだ。


「パスが来ない」


 リーガでは、日本人はその憂き目を多く見てきた。


 生活様式だけでなく、道徳観や環境がまるで違う。日本人よりも、スペイン人はコミュニケーションをベースにしている。ドイツなどではお互いの距離感を大事にするだけに、やはりヨーロッパと一括りにはできない。 そして同じスペインでも、地域性が見られる。


 スペインでも、北にあるバスク地方の人々は、スペイン人よりもドイツ人に気質が似ている。非常に真面目で、労働意欲も高い。バスク人にとって、日本人は相性が良いのだろう。リーガ史上最も成功した日本人と言える乾貴士が、バスクのクラブであるエイバルで活躍しているのは、最たる例と言えるだろう(一昨シーズンの乾は、アンダルシアのベティスでは苦しみ、バスクのアラベスで復活している)。


 そう考えると、リーガで一番期待できるのは、やはり久保建英だろう。久保はスペイン語が流ちょうで、コミュニケーションに問題がないだけではない。その主体性の強いパーソナリティーも、スペイン人の中に入っても際立っている。彼が切り開く道は、これからも大きく広がっているだろう。


文●小宮良之


【著者プロフィール】

こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。

 

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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