森保ジャパン成功のカギは、ホスト国のメリットの最大化

COLUMN川端暁彦のプレスバック第50回

森保ジャパン成功のカギは、ホスト国のメリットの最大化

By 川端 暁彦 ・ 2017.10.31

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4年前、リオ五輪を目指して就任した手倉森誠監督の記者会見は「U-21日本代表・手倉森誠監督記者会見」という呼称で行われている。これに対し、10月30日に行われた森保一監督の記者会見は、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)サッカー男子 森保 一監督 就任記者会見」である。


会場もJFAハウス内の会議室でしんみりと行われた4年前に対し、今回は日本サッカーミュージアムを使い、田嶋幸三会長も参加する大々的なもの。このスタート地点の差をチームにとっての福と成すか災いとしてしまうか。それが“森保ジャパン”にとっての大きなポイントとなりそうだ。


五輪で勝つためのチーム作り


4年前のチームがあくまで年代別代表の一つとしてスタートを切っているのは、慣例的に日本サッカー協会は予選突破までは「オリンピック代表」という呼称を使わないからなのだが、今回の東京五輪は開催国としてすでに出場自体は決まっており、チーム立ち上げの時点から「オリンピック代表監督」という位置付けになるわけだ。これは過去のチームとの決定的な違いだ。


記者会見では予選という真剣勝負を経ることのできないマイナス面についての質問も出たが、森保監督は「予選がないということは、全体的な底上げをしながらチーム作りをしていけるメリットがあると思っている」と回答。


予選突破というプレッシャーを受けながら「アジアで勝つためのチーム作り」をせざるを得なかったこれまでとは異なり、あくまで「五輪で勝つためのチーム作り」にフォーカスできるのはポジティブな要素ではある。というか、この点をポジティブな要素として機能させない限り、五輪での勝機はないだろう。


A代表の監督と兼任するメリット


準備を進めていく上で“真剣勝負不足”という障害があるのは間違いない。今年12月にタイでの親善大会で初陣を飾り、来年1月にはAFC・U-23選手権、秋にはアジア競技大会、さらに3年後の1月にも東京五輪予選を兼ねるAFC・U-23選手権がある。ただ、大会のタイトルという以上のものが何も懸かってはいない舞台である。3年間も緊張感を持続させながらチーム作りを進めていくのは、実際かなり難しいだろう。


だからこそ、個人的にはA代表と五輪代表の監督を同一人物にして、A代表の試合と国際Aマッチデーをうまく使いながらの強化がベストの方策だと考えてきた。


予選免除のもう一つのメリットとしては、オーバーエイジ枠の選手を早期に活用しながらチーム作りを進めていけるという点もあるのだが、A代表監督と五輪代表監督が別人であるという前提だと、選考からして難しいことになるだろう。


実際、手倉森監督はリオ五輪において自身が本当に希望する選手をそろえることはできなかったわけで、来年のロシアW杯終了後に決まる新A代表監督とは、五輪の位置付けについてしっかりと合意しておく必要がある。



ピッチ外の支援がカギになる


会見の席上、西野朗技術委員長も森保監督も東京五輪の目標が1968年メキシコ五輪以来の「メダル」であることを明言した。ご存知のように、サッカー界において五輪は最高峰の大会ではない。A代表のW杯はもちろん、U-17やU-20のW杯で3位以内に入るよりも、五輪でメダルを獲るほうがイージーな目標だと言っても決して的外れではない。


実際、ロンドン五輪では関塚隆監督率いるチームが“あと一勝”のところまではたどり着いているわけで、今回も8月に開催されることとなった東京五輪で各国代表がベストオーダーを組めるとも思えない。この時期の日本の気候を考えても、こちらにアドバンテージはあるだろう。


そもそも3年近く前のこの段階から五輪本大会に向けて準備を進められるのは、ホスト国である日本以外にない。そして課題も明確で、そのメリットを最大化できるかどうかの一点に尽きる。


ピッチ上のことは森保監督に託して任せるしかないが、ピッチ外の調整に関する部分でどれだけの支援ができるかどうか。そのための戦略と実行力が、開催国としての威信を懸けて臨む大会の成否を分けることになる。(文・川端暁彦)

写真提供:川端暁彦

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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