U-20ワールドカップ決勝に思う。『物差し』を得たからこそ測れる頂点までの距離感

U-20ワールドカップ決勝に思う。『物差し』を得たからこそ測れる頂点までの距離感

2017.6.10 ・ 日本代表

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6月8日、日本が大会を去って1週間余りが経過したU-20ワールドカップの決勝舞台にベネズエラとイングランドが勝ち残った。どちらも史上初めての決勝進出である。ベネズエラはそもそも通算2度目の出場であり、ベスト16が最高成績。対するイングランドは通算11度目の出場にして初めての決勝進出。1993年大会の3位という最高戦績を塗り替えることとなった(ニック・バーンビーやニッキー・バットがいた)。


ベネズエラと120分戦えたことの意味


どちらのチームも日本とは縁がある。ベネズエラはご存知のとおり、ラウンド16で散った日本にとってラストマッチの対戦相手だ。当時、「ベネズエラは強いよ」と言ったり書いたりしたのだが、「でもベネズエラでしょう?」みたいなリアクションをもらって困惑したものだが、この結果を観れば理解してもらえるに違いない。やはり、彼らは強かったのだ。


とはいえ、彼らと当たったことを不運とは嘆くまい。グループ3位通過のチームが優勝候補クラスと当たるのは必然に近い。むしろこれほどの相手と全力の真剣勝負を120分にわたって展開できたことを前向きに捉えるべきだろう。決勝をTV放送などでご覧になる方は、A代表選手のペニャランダやソテルドといった攻撃陣に注目が集まるだろうが、ぜひボランチの主将、エレーラのプレーにも注目してほしい。驚異的な守備能力、堅実な配球力、そして日本戦の決勝点も生み出した攻守の空中戦闘能力は特筆モノ。彼もすでにA代表の選手だが、遠くないうちに欧州の舞台でもその勇姿を観ることができるはずだ。


イングランドにやられた経験があったから今がある


対するイングランドは、日本にとって2年前の秋に親善試合で対戦し、1-5の大敗を喫した苦い記憶のある相手だ。DF冨安健洋(福岡)は「サッカー人生最大の衝撃」とこの敗戦を何度も噛みしめてきたそうで、彼がプレミアリーグ進出を将来の夢と語るのは、このときの経験に由来する。圧倒的な個々の能力差を前にして為す術なく蹂躙されてしまった試合で、当時の試合に出ていた選手たちは大会前から対戦してみたい相手として(某選手はやりたくない相手として(笑))、このイングランドの名前を挙げていた。


イングランドらしく(?)小器用さや繊細さを感じさせる選手はほとんどいないが、全員がタフで軒並みスピードのある選手が多く、戦う姿勢は抜きん出ている。インテンシティの時代に特化したようなチームには違いない。チェルシーからリバプールへの移籍で話題になった10番の大型FWソランケに注目も集まるが、個人的にはトッテナムのMFオノマーを注目株として推しておきたい。185cmの長身を活かしたプレーに加えて、超人的な身体能力で中盤の広範囲を制圧するスーパータレントで、この代表でセントラルMFとしての資質を開花させつつある。両翼と前線に突撃力のある選手がズラリとそろい、力押しで迫るスタイルから日本サッカーが直接的に何かを学ぶのは難しいものもあるが、「こういうサッカーに対抗できないようでは世界で勝てない」ことを実感するにはいい相手である。


ベスト4全てのチームと戦ったからこそ得られる知見


4強に入ったイタリアとウルグアイも日本と肌を合わせた相手だったことから、良くも悪くも世界の同年代との距離感が見える大会になったのは間違いない。堂々と渡り合えた部分もあるのだから変な悲観は必要ないし、逆に個々の選手が自身に足りないものをよく意識させられる機会にもなったことだろう。そしてもちろん日本サッカー界としても今大会で得た知見を国内の育成年代とJリーグ、そして東京五輪や次回のU-20ワールドカップに向けてもフィードバックしていく必要がある。


過酷な連戦の末に辿り着いたファイナルなので、両チームともに疲労困憊なのは確実。ただ、日本戦のベネズエラがそうだったように、疲れたあとに見せるタフネスもまた見どころの一つ。驚くほどにタレントのそろった奇跡の世代のベネズエラが、猛烈系のイングランドにどう抗い、どういなすのか。彼らと実際に対戦し、すでに「物差し」を得ているからこそ、日本サッカーにとって学びの多い試合となるに違いない。(文・川端暁彦)


写真提供:getty images

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