白熱の戦いが続き、いよいよフィナーレが迫っているU-21欧州選手権。この大会をモデルにしたアジアの大会、AFC U-23選手権予選が7月19日よりカンボジアの首都プノンペンにて開幕する――と書いても、「え、何それ?」という人が大半かもしれない。サッカー関係者や報道関係者の中にも、何の大会なのか理解している人が少ない印象だ。確かに、とても分かりにくい。
AFC U-23選手権は歴史の浅い大会である。2014年から始まり、以降2年に1度のペースで開催されている。つまり7月から始まるのは第3回大会の予選だ。第1回大会はオマーンで開催され、日本は準々決勝でイラクに敗れているのだが、この大会を認識している人はそう多くないだろう。しかし、日本が優勝した第2回大会は記憶している人が大半のはずだ。手倉森誠監督率いるチームは決勝で韓国に大逆転勝利を収め、初めてのタイトルを手にすることとなった。
「ん? あれは五輪予選では?」という声もありそうだが、そう、あのリオ五輪予選である。2年に1度開催されるAFC U-23選手権は4年に1度、五輪予選を兼ねる大会となるのだ。
東京五輪を見据えた強化を図る代表チーム
少々ややこしいが、これはモデルとしたU-21欧州選手権と同じ形式でもある。それまではホーム&アウェイ方式で開催されていたが、各リーグにかかる負担の大きさの割りにメリットが乏しく、集中開催の大会で決まる形に改められた(これは1992年のバルセロナ五輪、96年のアトランタ五輪の方式へ回帰することも意味していた)。
つまり五輪開催年ではない来年(2018年)の大会は五輪予選ではなく、3年後の2020年に行われる予定の第4回大会は東京五輪予選を兼ねる大会となる方式だ。
つまり世界に続く大会ではないので、日本はこの大会を『五輪代表強化のための大会』と位置付ける。現状の「U-22」(来年の本大会におけるU-23)のカテゴリーに位置する大会だが、東京五輪を見据えて「U-20」の日本代表チームを送り込んで強化の場とする方針だ。
つまり先のU-20ワールドカップに出場したチームがベースとなる形になる。この7月の予選までは内山篤監督が指揮を執り、来年1月の本大会(中国開催)については、東京五輪までの指揮を前提とした新監督初陣の場とする方針だ。
アジア競技大会との違い
ここで少々紛らわしいのは、その来年に行われるアジア競技大会(インドネシア)もあることだろう。二つの大会を混同してしまっている関係者もいるのだが、この大会はアジア版の五輪といった趣を持つ総合大会で、まったく別のタイトルだ。
その男子サッカー競技について、日本はシドニー五輪世代が参戦した1998年から「U-21」のチームを送り込んできた経緯がある。1998年大会は年齢制限のなかった大会にU-21チームを送り込んだ形だが、以降「U-23」に大会規定が変更になったあとも、同様に「U-21」のチームを送って強化の場として活用している。
U-21にオーバーエイジを組み込む?
来年の大会もレギュレーションの刷新がなければ、そのままU-21チームでの参加になりそうだが、これまで使ってこなかったオーバーエイジ枠3名の活用は検討の余地があるかもしれない。オーバーエイジ選手をチームに組み込み損なった印象の強いリオ五輪の反省を踏まえるなら、なおさらだろう。
もちろん、大会開催時期を思えば欧州組は招集不能で、Jリーグとの調整も難しそうではある。ただ、オーバーエイジ選手の使い方は重要な戦略であり、リオ五輪でブラジルがネイマールを起用したように、ホスト国のメリットを出しやすい部分ではある。東京五輪で結果を出すという目標から逆算していくならば、まだ見ぬ新監督に丸投げではないプランを協会として練っておくべきだろう。
いずれにしても、東京五輪世代の戦いは、7月のプノンペンからリスタートとなる。対戦相手はフィリピン、カンボジア、そして中国の3カ国。年上相手の試合となるが、それもまた良き試練だろう。彼らが次のW杯予選で主軸となっていくであろうことを考えても、アジアのアウェイマッチの経験を積んでおいて困ることはない。まずは3年後の五輪で結果を残すために。U-20世代の新たな戦いが始まる。(文・川端暁彦)
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