河治良幸×清水英斗 現地対談(6)「どうだった? ポーランド戦」

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 W 杯特別企画 日本 vs ポーランド レビュー

河治良幸×清水英斗 現地対談(6)「どうだった? ポーランド戦」

By 清水 英斗 ・ 2018.6.30

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ポーランドに0対1で敗れたが、コロンビアがセネガルに勝ったため、決勝トーナメント進出を決めた日本。この試合は内容もさることながら、終盤での時間稼ぎに注目が集まった。現地で取材を続ける河治良幸氏と清水英斗氏は、ポーランド戦の戦い方をどう捉えているのか? 好評対談の第6弾をお届けします。



清水:ポーランド戦の終わり方については、賛否両論。むしろ、非難轟々という状況ですかね。


河治: W杯の歴史に載りましたね(笑)。史上初めて、フェアプレーポイントで決勝トーナメントに行くことになりました。


清水:フェアプレーポイントで勝った日本が「フェアプレーじゃない」と批判される。見事なねじれ現象が起きています(笑)


河治: U-20ワールドカップでもありましたけど(注:2017年のU-20W杯。引き分けで両チームともグループステージ突破という状況で、日本とイタリアが終盤に消極的なプレーをし、引き分けに終わる)、時間稼ぎをすること自体はしょうがない。お金を払って観に来ている人、特にサポーターというより、中立的にサッカーを楽しみに来ているファンからしたら、何をするんだと思うかもしれないけど、こういうことはあります。日本じゃなくてもやるだろうと。でも、今回は他会場の経過が…。


清水:すごい判断をしましたよね。実はグループCのデンマーク対フランスでも、両チーム納得の時間稼ぎは行われていて、そちらは何のリスクもないものでした。勝ち点1を分け合えば、フランスは1位、デンマークは2位通過が決まる形だったんです。日本の時間稼ぎは、日本も相当なリスクを負っているんですよね。セネガルにもチャンスはありますから。でも、そのリスクを承知の上で、時間稼ぎに徹しました。


河治:アグレッシブなチャレンジですよね。ある意味、攻めに行くより、よっぽどアグレッシブ(笑)


清水:この3戦の中で、いちばんドキドキしました(笑)。西野さん、マジか! セネガルが点とったら終わりやぞ! と。思っただけじゃなくて、口からも出た。静かな記者席の中で(笑)


河治:もしセネガルが勝ち上がったら、批判で終わらなかったですよね。日本が敗退したショックを越えて、この決断がとんでもない結果を招くことになりましたから。攻めに行ってイエローカードをもらうとか、レヴァンドフスキにもう1点取られるとか、それなら負けても納得のいく流れではあるんですよ。ただ、時間稼ぎによって、結果を出したことは確かです。時間稼ぎそのものに正当性はないというか、妥当性しかない。


清水:西野さんも「天然」と言われているけど、この決断の重要性は理解していたと思います。ホイッスルが鳴って、セネガル対コロンビアの結果がわかったときの表情が、強張ったテンパイ状態から、一気にホッとゆるんだ感じ。心の奥底からホッとしたと思いますよ。


「普通に戦っていたら、イエローカードをもらうか失点していた」(河治)


河治:正直、長谷部選手が投入された時間の後、日本が普通に戦っていたら、イエローカードをもらっていたか、失点していたのではないかと思います。もちろん、日本が点を取った可能性もゼロではないけど、そのぐらい日本が動けなくなっていたし、セカンドボールをポーランドに拾われるようになっていました。そこが前半との違いですよね。日本の方が走っていたので、消耗して力の差が出ていました。


清水:ポーランドは1点取った後、あまりスペースを日本に与えなくなりましたね。その状態で乾が入ってきたけど、攻め落とすには厳しいと感じました。


河治:ポーランドのGKファビアンスキは、今大会で対戦したGKの中では圧倒的な実力者です。正直に言うと、乾のワイドからのシュートでも、ゴールを決めるのは難しい。


清水:それも含めて、状況に合わない交代カードかな、とも思いましたね。


河治:中島翔哉がいない時点で、途中出場で得点を決められるカードがないですからね。


清水:そういう状況もあって時間稼ぎに徹したわけですが、この件は当事者と第三者によって、捉え方はだいぶ違いますよね。普通にチケットを買って見に来ているなら「金返せ」と言いたくなるだろうけど。


河治:そうですね。


清水:でも、ですよ。昨今のワールドカップで、3戦目にこんなリスクがあることは、お客さんもわかってるんじゃないですか? 消化試合の可能性だって充分にあります。3戦目って、ものすごく熱い試合から塩試合まで、100から0まですべての可能性がある。それが、ザ・3戦目ですよ(笑)


河治:実は、お客さんもギャンブルなんですよ(笑)


清水:西野さんだけではなかった、と。


河治:今大会の救いは、2敗しているチームが3試合目で頑張って、良い試合をしていること。決勝トーナメントには行けないんだけど、上に行くチームより良い試合をするという傾向があります。ポーランドもこの試合だけを見たらメンバーも相当変わっていて、ベストメンバーではなかったけど、したたかさとか、後半のギアの入れ方などは見せてくれたと思います。


「メンバー変更がどこから漏れているのか、正直わからない」(清水)


清水:セネガル戦から、スタメンを6人入れ替えた判断はどうですか?


河治:これも相当なリスクを負っていますけど、変えないリスクより、変えるリスクを取っただけのこと。これに関しては、西野さんを支持しています。ただ、変更するメンバーはメディアに漏れていましたね。


清水:そうでした。


河治:新聞記者が暴こうとする気持ちはわかるけど…。しかし、漏れますね。


清水:どこから漏れているのか、正直わからないですよね。昔、あるコーチが記者に漏らしているという話を聞いたことがあります。ただ、全部がその人なのか、今もやっているかはわからない。すでにマークもされているだろうし。こうやって本大会に来ると、非公開練習だってボランティアなり、セキュリティなり、数十人単位で関わっている人がいるから、どこから情報が漏れるかなんてわからない。広大なスタジアムの隅っこにカメラがあって、撮影されているかもしれない。防ぎようがないと思っています。


河治:わからないですね。金田一少年が必要なくらい(笑)


清水:韓国みたいに背番号を変えるか、目出し帽をかぶって練習するか、長友が黒髪に戻すか、そのくらいやらないと隠せない(笑)。うかつに言うと、当てずっぽうな犯人探しになっちゃうんで、それは良くない。


河治:ゼーフェルトからカザンに来て、見えないところで練習をしたつもりだったんですけどね。


清水:カザンで練習しているうちは、まだマシなんじゃないですかね。でも、前日練習のためにスタジアムに来ると、警備もFIFAや大会委員会側にお任せじゃないですか。逆にコントロールも利かない。


河治:ポーランドが勝ちには来てはいたけど、何もかかってないので、日本のシステムやメンバーを聞いて、変更するまでしたかというと、そうでもないと思います。


清水:可能性は低いですね。前日に漏れたとしても、当日に向けて変える時間があるかどうか。


河治:それにしても漏れるなぁとは思いますね。ぼかすことなく、すべて露骨に。


清水:防ぐのは限界があるので、根本的にそういう記事は要りません、ってところでしかブレーキはかからないし、そこに近づくのが理想だと僕は思っています。


「メンバーを入れ替えたのには、2つの理由がある」(河治)


河治:スタメンが外部に漏れた件はともかく、メンバーを入れ替えたのは、2つの理由があると思います。1つが試合に出ていない選手にチャンスを与えること。もう1つが、疲労している選手、イエローカードをもらっている選手を休ませること。システムも4-2-3-1から4-4-2に変更しました。


清水:それは良かったと思うんですよ。4-4-2でやって、ポーランドはクリホヴィアクが最終ラインに下りるので、前線で追う枚数が足りなくなるんですけど、岡崎と武藤が追いかけたら、ポーランドはミスをしていました。そうして前の2枚と後ろから、サイドハーフがカウンターに転じる。そのねらいはよく出ていたと思います。


河治:大迫ではなく、岡崎と武藤を出す場合の最大公約数というか、フィニッシュ以外の流れとしては上々なのかなと思います。コンビネーションとして、公式戦でやってないメンバーで結果を出す上で、この形はシンプルでやりやすかったんじゃないかな。


清水:ターンオーバーさせつつ、相手にボールを持たせてミスを誘うスタイルに、うまく整えましたね。


河治:しかも、浮き球をセンターバックの手前や後ろでバウンドさせて、武藤が抜け出す。ボールを回して崩すのではなく、このメンバーで速い攻撃もする。


清水:このメンバーだとポゼッションという感じではないですよね。山口蛍もあまり良いサポートをしていませんでしたし。


河治:柴崎もカバーリングや守備に奔走していて、いつもより布石のパスを出せていませんでした。ボランチのパートナーが長谷部ではなかったのも、理由のひとつだと思います。


清水:それもありますし、バイタルエリアで受ける選手もいませんでした。右から入ってくるのは酒井高徳で、前にいるのは岡崎と武藤。相手選手の間、ライン間で受けるタイプの選手がいなかった影響はありますね。


河治:そうですね。ピッチにいない香川の存在の大きさを感じた試合でした。ポーランドもベストメンバーではないので、ガチでやってみて、香川がいてもどうなるかはわからないですが。


「宇佐美は“最初はグー”の男」(清水)


清水:武藤はちょっと難しいなと思いました。彼は違う国の代表だったら、エースになるかもしれない。でも、まだ日本代表に合ってない。コンビネーションとか、テンポ良くゴールにたどり着くところで判断が遅いし、ノッキングが多い。裏に蹴って走るところは、すごく魅力的なんですけどね。そこが魅力なら、もっと突き抜けてもいい。たとえばスペースにボールが出たときに、ジェイミー・バーディくらい、ゴールに向かってグッとコントロールするとか。その辺のタイミングで虚を突くような強引さは、武藤には無いですね。どこか丁寧にやろうとする感じが、ボールコントロールに残っている。ちょっと中途半端だと思う。


河治:他には何回か、宇佐美がもうワンテンポ早くシュートを打ってくれたらという場面がありました。充分な体勢になってからシュートを打つので、相手のブロックに遭っていました。シュートそのものは良いけど、じゃんけんで相手に合ってしまう。


清水:“最初はグー”の男なんですよね。これから出しますよ、と。


河治:ただ、純粋にシュート技術でファビアンスキを破れるとしたら、宇佐美しかいなかったと思うんです。でも、その前のブロックに引っかかってしまった。


清水:選手個々のパフォーマンスに満足できない部分がありつつも、スタメンを6人入れ替えたことは、僕も賛成です。3戦目ですからね。2戦目とはわけが違う。この暑さは相当すごかったです。


河治:これも、コロンビアにああいう形であれ、勝ったからこそ出来たこと。すべては初戦に出たなと思います。


清水:そのコロンビアさんに、今回は助けて頂きました。2週間くらい前は「リベンジ」とか言ってた気がするけど……忘れましょう(笑)


ベルギー戦前の対談に続く


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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