素晴らしい内容だった日韓戦。このサッカーで強豪と戦うところが見たい!

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第125回

素晴らしい内容だった日韓戦。このサッカーで強豪と戦うところが見たい!

By 清水 英斗 ・ 2021.3.31

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ロースコアで勝てば「決定力不足」とされ、大量点を取って勝てば「相手が弱かった」とされるのが日本代表の習わしである。とはいえ、A代表は欧州遠征からなるこの半年の成長を、3月25日に行われた日韓戦ではっきりと見せたと思う。


前半のキックオフ直後、韓国はボランチの1枚を落とし、3枚回しに変化させた。かみ合わせをずらし、日本の2トップに数的優位を作る格好だ。


その後に何をねらったのかは、今ひとつよくわからない。おそらくU-24日本代表と戦ったアルゼンチンのように、日本が前にプレスをかけるタイミングで、入れ替わるように、シンプルに中盤を越えようとしたのではないか。


韓国はサイドバックを高い位置へ送り出し、システム的にはサイドに厚みを作ったので、アルゼンチンよりもサイド起点の攻撃をイメージしたのだろうが、もう、その辺りは「たぶん」としか言えない。なぜなら、日本の守備の質が、その仕組みを圧倒し、ほとんど現象が出なかったからだ。


チームとして連動した守備


日本の4-4-2の守備は3枚回しへの対策が明確だった。サイドハーフは中間ポジションをキープしたまま、2トップがボールを外へ追い出し、ワンサイドへ追い込んで縦パスを奪い取る。大迫勇也と鎌田大地のチェイシングの強度、あるいは遠藤航や守田英正のボール奪取力にも目を見張ったが、それ以前に日本はチームとして、プレッシングの連動性が高い。コンパクトにまとまっていた。


この守備の質の違いは、アルゼンチンと戦ったU-24代表の1戦目と比較するとよくわかる。同じ4-4-2の守備だが、U-24代表では田川亨介らのFWが、味方の中盤が付いて来られないタイミングで雑に追い回し、それを制御するコーチングも機能せず、DF、MF、FWの3ラインがばらばらだった。


一言で言えば、間延びしている。また、追い込んだ場面でも、渡辺皓太と中山雄太のダブルボランチが、縦パスのコースを消しきれず、長いクサビを通される場面も目についた。


相手の質も違うが、そもそも自分たちの組織的な守備の質が違う。これはおそらく、A代表とU-24の差以上に、欧州遠征の経験があるかないかが大きかったのだろう。なぜならA代表だって、昨年10月に行われたカメルーン戦はグダグダだったから。


U-24守備のキーワードは『川崎』


その意味では、U-24代表にとっても、1戦目が大事だった。結論から言えば、守備は大きく改善されたと思う。キーワードは『川崎』だ。


1戦目と2戦目の違いとして、U-24代表は守備のスタートが変わった。変わったというか、明確にした、ということかもしれない。


1トップ起用された林大地は、相手の左センターバックを押さえ、トップ下の久保建英は、相手のボランチに付く。そして、空いている相手の右センターバックへボールを誘導したところで、右サイドハーフの食野亮太郎が外切りのプレス。どこかで見たと思ったら、川崎フロンターレの守備に似ている。


となれば、田中碧だ。もう1枚の相手ボランチには、田中碧が出て行き、捕まえる。そして、食野の裏にいる相手サイドバックを使われた場合は、右サイドバックの原輝綺、場面によっては田中がスライドしてカバーする。


この辺りは、川崎と同じ4-3-3のインサイドハーフではなく、4-2-3-1のダブルボランチ起用なので、多少の違いはある。とはいえ、田中碧にとって馴染みやすいタスクだったのは想像に難くない。


修正力を見せたU-24


このように守備の手順を整理したことで、ダブルボランチの役割分担が明確になった。両ボランチがふらふらと前に釣られることなく、板倉滉をバイタルエリアに残しやすくなっている。1戦目はこのエリアが空きがちで、日本はセンターバックが相手FWとの広大な1対1に晒されたり、セカンドボールも拾われたりと急所になっていたが、守備を整理したことでバランスが安定した。


左右非対称、アシンメトリーな守備だが、むしろバランスは良い。途中、アルゼンチンは3枚回しにも変形したが、日本はそれに戸惑うことなく、飯野の役割を変えて柔軟に対応した。見事な修正である。クラブの戦術をトレースしてチームを作るのは、代表チームのあり方としては王道だ。


2試合続けて強豪と、しかも同じ相手と戦えたのは大きかったはず。1戦目で通じなかったことを修正して、もう一度チャレンジできる。これほど効率的な強化はない。


A代表に話を戻すと、日韓戦は改めて素晴らしい試合内容だった。U-24代表のアルゼンチン戦ほどの強化効果は無かったかもしれないが、この試合は、強化以上の意味があったと思う。


素晴らしいサッカーだった。このサッカーで強豪と戦うところが見たい!


同じようなことは選手も口にしていたが、おそらく試合を見たファンの総意でもあるのではないか。そんなサッカーへの渇望、エネルギーを、再び呼び起こしたとすれば、万難を排して開催にこぎつけた日韓戦、その意義は小さくない。(文・清水英斗)

写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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