コロナ禍による変則的な日程でも、日本代表の強化は進む

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第127回

コロナ禍による変則的な日程でも、日本代表の強化は進む

By 清水 英斗 ・ 2021.5.1

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3月に行われた、日本代表の日韓戦とモンゴル戦は、まさにニューノーマルと言うべきか、非接触の取材が徹底された。


スタジアムに着く。メディア受付へ向かう。自分のスマートフォンを取り出し、申請承認メールに添付されたQRコードを、受付のタブレットにかざす。すると名前が表示され、健康チェックシートを渡して受付完了。試合のメンバーリストは、メールで受け取る。終わった後の公式記録もメール添付。ミックスゾーンの取材もオンラインで行う。色々と新鮮だった。


まだFAXの使用も一部では残るサッカー界だが、変われば変わるものだ。習慣を一新したJFAの仕事ぶりは鮮やかだった。


マッチメークも敏腕である。昨秋に欧州組だけのA代表の強化試合を4試合組んだことも、3月に日韓戦をねじ込んだことも、強豪アルゼンチンとのU-24の強化試合を2試合組んだことも、交渉に交渉を重ねて、実現にこぎ着けた。


こうしたマッチメーク関連の動きでは、隣の韓国のほうが遥かに上手である印象を持っていたが、最近のJFAは素早い動きと、柔軟な立ち回りを見せている。正直、お見逸れした。


6月は日本にとって重要な時期


そして、次の6月は、A代表と五輪代表の両方にとって重要な1カ月間になる。代表ウィークは通常よりも長く、5月31日~6月15日と、2週間強が用意されている。昨年9月に中止となったAマッチデー分が加算され、4試合を組めるようにFIFAのカレンダーが変更されたからだ。W杯アジア最終予選、そして東京五輪に向け、仕上げの強化を行う絶好のチャンスである。


一方、韓国やオーストラリアのA代表日程を見ると、4試合はすべてW杯アジア2次予選で埋まっている。日本は3月にモンゴル戦を行えたことが非常に大きかった。そこで1試合分の日程が空いた。


さらに延期分のミャンマー戦をAマッチデー外の5月28日にずらすことで、日程が2試合分空き、最終予選に向けて、強豪国との強化試合を行う余地ができた。これは大きなアドバンテージだ。


ポイントになるミャンマー戦


6月は欧州選手権があるので、予選敗退したチームを対象に、欧州勢との強化試合を組むチャンスでもある。有力候補に挙がったのは、ストイコビッチが監督を務めるセルビアだ。予選は惜しくもグループ3位で敗退したが、実力は申し分無い。日韓戦で躍動したA代表がどれだけ通用するのか。オーバーエイジ候補が抜ける可能性は高いが、そうであっても、ぜひ見てみたい。もう1試合の強化試合は、ジャマイカの名前が挙がっている。


現状、それらがまだ正式発表に至らないのは、ミャンマー戦が確定していないからだろう。AFCはすでに公式サイトで5月28日、フクダ電子アリーナと場所まで記しているが、JFA側は正式決定ではない、というスタンスだ。


ミャンマー戦は前後にJリーグがあり、国内組が招集不可となる一方、欧州クラブはオフに入り、欧州選手権があるため、クラブの活動はほぼ止まる。日程的な障害がない。


ただし、国際Aマッチデーではないので拘束力がなく、ミャンマー戦への欧州組の派遣が途中でひっくり返ったり、負傷が重なったりした場合、下手をすれば不戦敗もあり得る重大な話なので、ここは慎重に、広めに確約を取って行きたいのではないか。


ミャンマー戦のメンバーはどうなる?


一方、この試合は逆にミャンマー側の政情不安により、チームを派遣できず、中止となる可能性もある。FIFAは6月15日までに2次予選を終えるよう、AFCへ通達しているので、後はない。その場合はミャンマーの失格で終わるかもしれない。仮にそうなれば、せっかくのAマッチデーが空白になってしまうので、その意味からも、ミャンマー戦をAマッチデー外に移したのは妥当な調整と言える。


ただし難しいのは、ミャンマー戦のメンバー選考だろう。


ミャンマー戦も、6月のAマッチデー4試合も、五輪のオーバーエイジもと、一部の主力選手への負担が過ぎれば、所属クラブが難色を示すのは間違いない。欧州組は欧州組でも、主力の出ずっぱりではなく、これまで招集や出場の機会が少なかった選手と入れ替えつつ、起用したいところ。


では、どう振り分けるのがベターか。


日本はミャンマーに勝てばW杯アジア最終予選進出が決まり、残るタジキスタン戦とキルギス戦は消化試合になる。ならば、このミャンマー戦で、連係の取れているA代表と五輪代表の常連メンバーを出場させて進出を決め、その代わりにタジキスタン戦とキルギス戦は主力を休ませ、国内組を含めて出場機会が少なかった選手を試して行く。この前提で、クラブとの交渉を進めるのが第一だろう。


ベテラン勢の招集は?


しかし、オーバーエイジを含めて五輪の有力候補となる選手は、その後の日程を踏まえ、できればミャンマー戦には呼びたくない。欧州リーグの閉幕後、短くもオフを取って、7月末の五輪に向けて万全のコンディションを作ったほうがいいからだ。この辺り、五輪まで含めて考えると、なかなか難しい。


だからと言って、代表経験が乏しい選手ばかりでミャンマー戦に臨むのはリスクが上がるし、引き分けの場合は進出が決まらない。そもそも人数やポジションが不足するかもしれない。ならば奥の手として、ミャンマー戦は長谷部誠の復帰、岡崎慎司や香川真司、乾貴士、川島永嗣ら、ロシアW杯組に頼ることも選択肢の一つだろう。総力戦だ。


まずは、ミャンマー戦で突破を決める。その後、オーバーエイジを含む五輪代表は本番を見据えた相手との強化試合へ。一方のA代表は、主力がセルビア戦とジャマイカ戦(?)に臨み、新戦力組はタジキスタン戦とキルギス戦に臨む。なかなか良い青写真を描けそうだ。


もっとも、現状はその柱となる東京五輪の先行き自体が不透明。さまざまな要素が絡み、この青写真がモノクロに変わる可能性も否定できない。そうなっても仕方ない状況だが、準備は粛々と進められている。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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