東京五輪の切符を勝ち取るのは誰だ? 悩ましい、なでしこジャパンの18人枠

COLUMN河治良幸の真・代表論 第82回

東京五輪の切符を勝ち取るのは誰だ? 悩ましい、なでしこジャパンの18人枠

By 河治良幸 ・ 2021.6.14

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東京五輪に向けて、強化とメンバー選考を進める”なでしこジャパン”は、6月10日にウクライナ、13日にメキシコと対戦した。


8-0、5-1という大差での勝利だったが、出てきた課題をチームで共有しながら、選ばれた18人で壮行試合となる7月14日の国際親善試合(対戦相手未定)を経て、21日のカナダ戦からスタートする本番に臨むことになる。


ウクライナ戦は8-0という大差がついた。FIFAランキング31位のウクライナは決して弱いチームではないが、コロナ禍での来日からの難しさはあったかもしれない。組織としてのまとまりはあったが、動きの1つ1つに連続性を欠くところがあり、機敏性を武器とする日本が攻略しやすい相手だった。


ただ、なでしこは狭いところを細かくつないで崩すだけでなく、ボランチの中島依美を起点としたワイドな展開やセンターバックの宝田沙織、熊谷紗希からのキック、左サイドバックの北村菜々美、右の清水梨紗が高い位置でポイントを作るなど、従来より幅と深みを意識した攻撃は効果的だった。


ボールを失った時点で守備のスイッチを入れる「0秒切り替え」「三方向5秒間プレス」というキャッチフレーズを用いた守備も浸透しており、それもウクライナを圧倒できた理由のひとつだろう。


ウクライナ戦で2ゴールを決めた岩渕は「8点取れたのはよかったですけど、満足はしてないので、もうひとレベル、ふたレベル(アップしないといけない)」と、本番に向けて貪欲な姿勢を示した。


主軸の5人は決定か


続くメキシコ戦は、ウクライナ戦から6人を変更した。言い換えると5人は同じメンバーだった。その5人とはセンターバックの熊谷紗希、右サイドバックの清水梨紗、ボランチの中島依美、左サイドハーフの長谷川唯、前線の岩渕真奈だ。


この5人は軸になる選手たちで、それ以外は競争の渦中にある。センターバックの宝田沙織と南萌華、左サイドバックの北村菜々美と宮川麻都、ボランチの三浦成美と林穂之香。この辺りは良い意味で実力が接近しており、あとは状態や組み合わせの相性などの見極めで、ファーストチョイスが変わってくる。


右サイドハーフは籾木結花がある程度、軸として計算できる中で、ウクライナ戦がデビューとなった塩越柚歩、途中出場した杉田妃和、ジョーカーとして期待がかかる左利きの遠藤純もできるポジションなので、高倉麻子監督がスタートとクローズを見極めて、試合ごとに使い分けていくことが想定される。ただ、現実的には上記3名の中から誰かが外れる可能性が高く、難しい選択になる。


2トップで岩渕と組む選手に関しては、ポストプレーが得意な菅澤優衣香が基本戦で、サイズの大きな相手を崩すカードとして田中美南、遠藤純。さらにはMF登録ながら鋭い仕掛けを持つ塩越柚歩を2トップに置く選択肢や、籾木結花をセカンドトップ気味に配置するチョイスもある。またメキシコ戦の後半には、塩越のキープ力を生かす1トップもテストしている。


6月シリーズのFW登録は23人中5人だが、岩渕は鉄板として菅澤、田中、籾木、遠藤と全てタイプが異なり、塩越や杉田も選択肢になる中で、18人枠を考えると、もっとも絞り込みが悩ましいポジションだ。


ベテラン鮫島の逆転選出は?


メキシコはウクライナに比べて強度が段違いに高く、プレッシャーも厳しかった。そうした中でもボランチ林の縦パスに反応した岩渕の先制点、南のロングキックから岩渕のラストパスに田中が飛び込んで合わせた2点目。


岩渕の2つ目のアシストによる籾木の鮮やかな3点目。18歳の木下桃香によるA代表初ゴール。途中出場の遠藤が利き足ではない右で豪快に決めた5点目と、異なる選手がバリエーションの中でゴールを重ねた点は評価できる。


しかしながら、ミスから1失点したことに加えて、前半はGK池田咲紀子がビッグセーブでチームを救う場面もあった。5-1という結果以上にタフなゲームであり、相手の強度が上がったときに、ビルドアップやプレスにズレが生じると混乱が生まれるという教訓を得た試合だった。


東京五輪の初戦で戦うカナダは、同じ北中米のメキシコよりもあらゆる要素で上回ってくる。特にディフェンス面は、検証して準備する必要があるだろう。その面からも、左サイドバックの選択肢は気になるところだ。


ウクライナ戦では攻撃的なキャラクターの北村、メキシコ戦では攻守のバランス感覚に優れる宮川が務め、終盤には高橋はなもチャンスを得た。さらに、今回はメンバーから外れたベテラン・鮫島彩もいる。


高倉監督は「必ずしも、今回の23人から18人が決まるとは限らない」と語っており、この2試合で出た課題や、本番の相手であるカナダ、イギリス、チリ。さらには決勝トーナメントでメダルを争うアメリカなどとの戦いを考えた場合に、経験豊富な選手を加えるプランはあるだろう。


大事なのは、金メダル獲得のためにベストのメンバーを導き出し、最高の準備につなげていくこと。東京五輪のメンバーは、18日に発表される。メキシコ戦後の合宿期間も含めて、高倉監督とスタッフはいい意味で頭を悩ませているはずだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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