選手交代と戦術に柔軟性が見えたセルビア戦。日に日に増す、鎌田大地の存在感

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第130回

選手交代と戦術に柔軟性が見えたセルビア戦。日に日に増す、鎌田大地の存在感

By 清水 英斗 ・ 2021.6.14

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11日、A代表は6月の連戦で最大の難敵となるセルビアとの一戦に挑み、コーナーキック(CK)から決勝点を挙げて、1-0の勝利を収めた。


セルビアはフィジカルが強く、守備が堅かった。さすがにアジアのチームとは次元が違う。容易には点を取らせてくれない。日本はシュート数7本(枠内5)、セルビアは4本(枠内0)に留まったが、この数字が示す通り、重たい試合だった。


日本の攻撃においてセルビアを崩し切る質が足りなかったとも言えるし、守備やリスク管理ではバランスを保ち、粘り強く戦って1-0を引き寄せたとも言える。


セルビアとその前に対戦したタジキスタンは、どちらも守備時に5バックを敷くチームだった。タジキスタンは攻撃時4-3-3、守備時5-3-2の可変システムだが、守備に下がってきた左ウイングと最終ラインの連係が乏しいため、日本はそのすき間を突くことができた。浅野拓磨の飛び出しから、古橋亨梧の先制点など、多くの決定機とゴールを生み出している。


強固な守備のセルビア


一方、セルビアに同様の抜け穴は無かった。5バックは統率され、距離もコンパクトに縮められている。そう簡単に裏は突けない。強いチームと戦うときは、ここが出発点だ。


ならばと、MFとDFのライン間を突こうとするが、セルビアの5バックは前に強く、迎撃の意識が高かった。開始直後のプレーでは、中に入った伊東純也ががつんとチャージされ、橋本拳人がこぼれ球で交錯する場面があったが、質の低い縦パスはセルビアの餌食になってしまう。


特に橋本拳人は、守備の素晴らしさとは反対に、攻撃では質が追いつかず、縦パスを入れられず、ブレーキになった印象が強い。比較すると、遠藤航と守田英正の攻守のバランスの良さは際立っている。


そんなこんなで、前半はライン間に起点を作れない。ギャップで受けられないので、鎌田大地や南野拓実は、ライン間ではなく相手の両ウイングの背後など、少し下がった位置で受ける回数が増えた。


しかし、楽な位置でボールを受けても、相手の5バックを引き出せていないので、崩しが大変。もたもたするうちに、相手のプレスバックを受けてしまう。


セルビアは5-4-1というより、5-2-3気味で、FWが少し前の段にポジションを取っているので、ボールの奪われ方によってはカウンターを食らう怖さがあり、日本としても、リスクを負いづらそうに見えた。


選手交代と戦術変更で優位に立つ


この停滞感を緩和したのが、橋本と古橋に代わって投入された、川辺駿とオナイウ阿道だ。また、組織的にも右サイドの連係が良くなった。


前半は縦パスを入れた先で攻撃が途切れていたが、後半は伊東がはっきりと最初にタッチラインで幅を取り、そこから中へ入って動的に縦パスを引き出し、鎌田らと近い距離でワンタッチパスを交換した。


ここをワンタッチでテンポアップすることで、セルビアDFの迎撃をかい潜ることが可能になる。そして、伊東が空けた大外のスペースに、3人目の動きで室屋成が勢い良く飛び出して行く。


そこに居ないはずの酒井宏樹が宿ったかのような、タイミングの良い室屋の飛び出し。今度はDFを引き出す連係をした上で、背後を突いているので、相手DFラインを背走させ、より大きなチャンスを生み出した。おそらくハーフタイムに修正したのだろうが、後半は連動した攻撃が見られるようになった。


先制した後半3分のCKも、室屋のタイミングの良い飛び出しから得たものだった。そこへワンタッチでスルーパスを届けたのが川辺であり、その起点を作ったのはオナイウのポストプレー。日本はハーフタイムに選手、戦術、どちらも改善させた。全体的な重たさは否めない試合だったが、バランス維持や修正においては良かった。



存在感が増す鎌田


それにしてもA代表は、試合をするたびに、鎌田の存在感が強くなっていく。


すき間を見つけるのが抜群にうまいし、ボールも収まる。フィジカルは強くないが、視野と判断に優れており、相手が寄せてきたらサッと半身になってサイドステップで外圧を受け流すなど、鎌田のプレーは柳のごとしだ。


線は細いが、身長は184センチと高いので、相手の力を逃がしつつ足のリーチでキープできる。ボディーバランスも非常に良い。


何より、鎌田は自己肯定感の高いプレーをする。あえて人とは違うことをやってみたり、自分がリスクを負ってプレーしたりと、組織の中で浮くことを恐れない。


シュートもその一つで、鎌田は他人が「そこシュート!」と期待するような場面で、あまりシュートを打たない。逆に意外な場面では、いきなりズドンと打ったりする。後半25分の強烈なミドルシュートは、まさにそうだった。鎌田は掴みどころがない。柳かウナギか。


3日に行われたU-24代表戦後にも、「自分が一番ふわっと入った」と俯瞰して、飄々と言ってのけ、逆にその冷静な気づきから自分にスイッチを入れるなど、なかなかの泰然自若ぶり。ネガティブなこともあっさりと言うし、人が思っていても言えないことを、言っちゃう。思っていてもできないプレーを、やっちゃう。


組織の中にいても、プレッシャーを感じない安心感というか、図太さというか、自己肯定感が高いプレーヤーだなと、いつも鎌田を見て思う。そういう「何か」をプレーで感じさせる選手は本当にすごい。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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