なぜオーバーエイジに大迫勇也が入らなかったのか? キーワードは過密日程と5人の交代枠

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第128回

なぜオーバーエイジに大迫勇也が入らなかったのか? キーワードは過密日程と5人の交代枠

By 清水 英斗 ・ 2021.5.21

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『カウンターアタック』は、ボールを奪ってから即時の縦一発でダイレクトに抜け出すのと、パスを一つ二つ入れた後に裏へ抜け出すのでは、どちらの成功率が高いのか。


昔、あるJクラブの監督を取材したとき、「それがビッグデータでわかれば興味はある」と話題に出たことがあった。


おそらく試合単体で言えば、自分たちのFWと、相手CB、GKの判断とスピードに左右されるだろう。相手のほうが能力が低ければ、一発のカウンターで抜けやすいし、その際に事故も起こりがち。


しかし相手が猛者ならば、雑な縦ポンは徹底的に摘み取られる。その場合はパスを一つ二つ入れて“食いつかせる”という戦術的な駆け引きを加えた、コレクティブなカウンターのほうが成功率は高まりそうだ。


カウンターの調整弁になれる大迫


東京五輪はどうか。対戦相手は強豪ばかりである。仮に引いて守って我慢しながらカウンターを狙うとすれば、後者のコレクティブなアプローチが妥当だ。そうした攻撃の総合的な調整弁になれるのが、大迫勇也だった。


3月の韓国戦では前半27分に自陣に引いた守備でボールを奪った後、大迫は前線でボールを受けてタメを作り、味方が次々と追い越す時間を与えて、コレクティブなカウンターを主導した。最後は鎌田大地がゴールを決めている。


相手の強さを考慮すればするほど、大迫が欲しい、というのが個人的な考えだ。単純な走り合いでは効率が悪いし、相手が強ければ、単発では突き破れない。


個人頼みではなく、コレクティブなカウンターを繰り出すため、最前線は大迫タイプが絶対に必要だと思う。最初から居なければ仕方がないが、居るのに起用しないのは勿体ない。


だからこそ、オーバーエイジに大迫が入らなかったことには、疑問も不満もある。吉田麻也、遠藤航、酒井宏樹の3人は主力中の主力だが、U-24世代を含めて相対的な比較をしたとき、ピンポイント補強は吉田、大迫、酒井、というのが個人的な意見だった。


過密日程と5人の交代枠


大迫が選外となったことに、納得できる理由があるとすれば、今大会のレギュレーションだ。今回の東京五輪は過密日程かつ、5人交代の暫定ルールが適用される大会である。この規定と、オーバーエイジの選考は関係があったのではないか。


大迫は日本人FWでは独自性が高いプレーをし、代えの利かない存在でもある。しかし、代えが利かないから大迫を絶対に選びたい、という意見が成立する一方で、代えが利かないから選びたくない、という考え方もあり得る。


つまり、A代表がそうだったように、大迫依存のチーム作りを進めると、大迫を外すたびにパフォーマンスが急落し、代えるほどに悪くなるチームになってしまう。これでは5人交代のメリットを生かせない。かといって、中2日で行われる連戦のすべてに大迫をフル出場させるのは無理な話だ。


おそらく今大会、5人交代枠の大半は、攻撃の選手に適用されるだろう。後半の2枚、3枚替えで攻撃陣がそっくり入れ替わることを想定した上で、代えが利かない前線の大迫はあえて避け、長くピッチに立たせる吉田、遠藤、酒井を選出したのなら、納得感はある。


U-24世代のFWの成長


また、この場合、ゲーム戦略的にはプレッシング型の性格が強まるのではないか。


大迫選外によって距離の長いカウンターや、ポゼッション攻撃の質が落ちるのに、引いて守るのは理にかなわない。ボールを奪う場面を、より好形にするため、できるだけ高い位置を保ってミドルプレス、ハイプレスに行く必要がある。暑い夏でも、5人交代枠を活用し、プレス強度を保って。


もちろん、それ以外にも大迫が選外となった背景には、この1年で林大地、前田大然、上田絢世、田川亨介と、J1の主力として活躍するFWがU-24世代に増えたこともあるだろう。


ただし、そうした個々の変化は他のポジションでも言えること。やはり、5人交代の暫定ルールが加わったことが、ゲーム戦略に影響を与え、オーバーエイジの選考が変わってきた面はあると思う。


6月の2試合、U-24ガーナ戦とジャマイカ戦では、そうしたゲーム戦略の面も見たいところ。5人の交代によって何が起きるか。選手は何を起こせるか。楽しみだ。


何だかんだ言って、メンバーが固まってくると、スイッチが入る。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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