欧州の強豪に挑む”新生なでしこジャパン”。アイスランド、オランダ戦で見えてくるものは?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第100回

欧州の強豪に挑む”新生なでしこジャパン”。アイスランド、オランダ戦で見えてくるものは?

By 河治良幸 ・ 2021.11.23

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2021年10月、サッカー日本女子代表“なでしこジャパン”の新監督に、池田太氏が就任した。池田新監督の初陣は11月下旬に行われるオランダ遠征で、アイスランド、オランダと対戦する。


来年1月に開幕するアジアカップに向けた強化の一貫で、このタイミングで欧州の強国と対戦できることは大きなメリットであり、現実を知る機会でもある。


「(アジアカップ)初戦までの時間は短い。日本から行く選手は時差もあり、コンディションが重要になる。ミーティングもうまく使いながら、時間を無駄にすることなく、初戦に向けて行きたい」(池田監督)


アイスランドはFIFAランキング16位で、近年の欧州勢で成長してきている国の1つだ。(ちなみに日本は13位)。オランダは推しも推されぬ強豪国で、2年半前の女子W杯では、決勝トーナメント1回戦で日本が敗れた相手でもある。


強豪との対戦


アイスランドはデュエルが強く、男子と同じく、恵まれた体格をベースにハードワークすることができ、システムの可変性という点でも見るべきものがある。


オランダは個人の能力が高く、伝統的なサイドアタックにポジショナルの戦術理論が加わり、従来の日本からすると相性が良いとは言えない相手だ。


この両国はW杯欧州予選で同じ組に入り、直接対決の第一ラウンドはオランダがアウェーで2-0の勝利を飾った。ボールポゼッション、シュート数ともにオランダが上回ったが、アイスランドは組織的な中にも長谷川唯(ウェストハム)のチームメイトでもある10番のブリニャールス・ドッティルなど、個人の能力も目立つ。


オランダは岩渕真奈(アーセナル)のチームメイトであるミーデマが絶対的なエースだが、セールスポイントである左右のウイングはバルセロナのマルテンス、フランスの強豪リヨンに所属する高速ウインガーのファン・デ・ドンクも強力だ。スタメンの平均身長がおそらく170cm超になるため、日本はセットプレーの守備で不利になる。


日本の選手構成を見ると、コーナーキックで二人程度、10cm前後のミスマッチが起きることが予想される。そこは新体制の初陣でテストするべき要素なので、ゾーンにするか、マンツーマンにするか、ハイブリット気味にするかなど、基本的な守り方も含めてチャレンジしたい。その結果次第では、もう少しサイズを意識した選手構成を考えていく必要も出てくるだろう。


海外組も合流


親善試合であろうと勝ちにいくのは当たり前だが、新体制の初陣で大事なのはトライすること。その結果としてエラーがあっても、前向きにとらえて改善していけばいい。


池田監督は「アグレッシブにボールを狙う、ゴールを狙う。そういう戦いの中で、ヨーロッパの2チームにどれぐらいできるか」をテーマにしている。


戦術面でも、池田監督の方向性が見える2試合になることは間違いない。注目したいのが選手起用だ。今回は熊谷紗希(バイエルン・ミュンヘン)、宝田沙織(ワシントン・スピリット)、林穂之香(AIKフットボール・ダーム)、長谷川唯(ウェストハム)、岩渕真奈(アーセナル)という5人の海外組が加わった。


これまでの合宿では、海外組、国内組の枠組みで選考しないことを強調していた池田監督も「海外の選手たちを含めたチーム作りは楽しみ。海外の経験も聞きたい」と語っており、彼女たちの国際経験を頼もしく思っていることは、間違いなさそうだ。


メンバー構成を見ると、池田監督が率いて世界一に輝いた2018年のU-20女子W杯を経験した”池田チルドレン”が多い。その大会でシルバーボールを受賞した宝田沙織や林穂之香は東京五輪のメンバーでもあったが、長野風香(マイナビ仙台)や宮澤ひなた(マイナビ仙台)、植木理子(日テレ・東京ベレーザ )が加わったのも1つのカラーだろう。


興味深い、選手起用


2試合の選手起用に関して、短い準備で臨むアイスランド戦は、コンディションを見極めながら判断するようだ。アイスランド戦での評価も踏まえて、オランダ戦のスタメンが、今後の主力になっていくだろう。


ただし、アジアカップを含む国際大会では、勝負所の交代カードも重要になる。そのため、2試合とも途中から起用される選手は、ジョーカーや大事なバックアップとして考えられるはず。2試合でスタメンがどれぐらい入れ替わるかは不明だが、ジョーカー的な選手も含め、15、6人が初期段階でのコアメンバーとして想定できる。


もう1つ注目されるのは、今回メンバー入りしていない実力者たちが、来年のアジアカップに割って入る余地がどれだけあるかどうか。


池田監督は「今回選ばれていない選手にも、魅力的な選手はいる。今回は日頃の自チームもそうですし、グループとしてどうできるかがポイント」と語る。


招集外の実力者はどうなる?


招集メンバーを見た時に気になったのは、現在WEリーグの首位を走るINAC神戸からDF三宅史織、MF成宮唯、FW田中美南の3人しか入らなかったこと。


週末のマイナビ仙台戦(1-1の引き分け)で今シーズン初失点を喫したが、絶好調のGK山下杏也加も試合に出ていたし、前回の合宿には招集されていたMF中島依美、MF杉田妃和も元気に出場していた。


可能性として考えられるのは、海外組の5人も加わる中で、”なでしこジャパン”での実力が分かっている3人を入れると、若手やフレッシュなメンバーをテストする余地が限定的になってしまうことだ。


アジアカップ前に国内合宿も予定されていることから、そこに今回招集していない何人かを加えて、W杯予選を兼ねるアジアカップの最終メンバーを絞り込んでいくプランも考えられる。


その意味では、今回の23人が現時点で池田監督のベストメンバーと考えるのは早計だ。一方で、ここでしっかりとアピールして評価を高めた選手はアジアカップ、さらに女子W杯に向けた主力候補になっていくはずだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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