日本代表、痛すぎる敗戦。サウジアラビアとの間に合った、設計面の差

COLUMN河治良幸の真・代表論 第97回

日本代表、痛すぎる敗戦。サウジアラビアとの間に合った、設計面の差

By 河治良幸 ・ 2021.10.10

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カタールW杯アジア最終予選を戦う日本代表は、8日にサウジアラビア代表と対戦。0-1で敗れた。


この試合の敗因をシンプルに絞るのは難しい。直接的な要因として、失点につながる柴崎岳のミスパスが言及されるのは当然だが、そこにつながる流れを招いたのは、全体としてのゲーム運びの悪さだった。


失点後、柴崎に声をかけに行った遠藤航は「失点してしまったのはあるし、岳がしゃがんでいたのが見えたので、切り替えるしかないし、時間はまだ残ってるし、まずは1点しっかり返すって気持ちをチームとして見せないといけないと思った」と話した。


さらには「僕も結構タテの選択をしてたんですけど、そこで1回横パスを入れたりとか、バックパスを入れたり、落ち着かせるプレーができるかどうかっていうところだとは思う」と振り返った。


体力の消耗が激しかった前半


サウジアラビアは4-2-3-1がベースでありながら、ビルドアップ時にボランチの一枚が下がり、3バックでボールを動かしてきた。それに対して日本は、守備では鎌田大地を前に上げる4-4-2と、鎌田を下げる4-1-4-1を併用するような形で対応した。


つまりサウジアラビアの後ろが3枚になれば鎌田が前に、中盤がそのまま3枚のところでは遠藤、柴崎、さらに鎌田がマンツーマン気味に見ながら、相手のミスを誘ってボールを奪うと、素早い縦パスから何度かチャンスを作った。


その1つが前半29分、鎌田のスルーパスから大迫勇也が抜け出てGKと1対1になったシーンだ。そうしたチャンスを決めていればという見方もできるが、完全アウェーと厳しい気候条件の中で、全体的に攻め急ぎしたことで、ボランチやサイドハーフのアップダウンが激しくなり、前半のうちに体力を消耗したように見える。


サイドで劣勢を強いられる


日本が中盤でボールを奪いに行ける時はいいが、高いポジションを取るサイドバックのアル・シャハラニとアル・ガンナムに対し、サイドハーフの浅野拓磨と南野拓実が引き気味にポジションを取らなければいけなくなっていた。


それに応じて、サイドハーフから中に入るガリーブとアル・ムワラドに対し、誰が行くのかがはっきりしないまま、守備が後手に回るシーンが増えた。


そうなるとゴール前で吉田麻也、冨安健洋、遠藤などが弾き返すしかなくなるので、セカンドボールを拾われやすくなる。


3バック気味にボールを握ってくるサウジアラビアに対して、4-4-2で見る形にした時に、左右のセンターバックがワイドに持ち出した場合、日本のサイドハーフが対応すると、同サイドが数的不利になる。そうならないためにボランチの柴崎や遠藤が行くと、中央が空いてしまう。


だからといって中央をマンツーマン気味に消せば、サウジアラビアのサイドハーフが中に流れて来るので、フリーでポジションを取られることになる。


しかもサウジアラビアは、トップ下のアル・ファラジュがファジーに動く。そこに遠藤が引き付けられると、センターバックの手前が無人になってしまう。だからいって、アル・ファラジュを自由にするのも危険であり、難しい決断を迫られることになってしまった。


設計面の不利をハードワークで補ったが


そうした時間が続くと、日本のサイドハーフの位置が低くなるため、攻撃時に移動する距離が長くなる。右サイドハーフで先発した浅野は「前半は僕自身、体力的にキツい時間帯だった」と振り返っている。


「チームのために走る、守備のところでも頑張るというところはチーム全体で共有してやれたんですけど、試合が終わって話して感じたのは、全員がこれ大丈夫かっていうくらいキツかった45分だったと思います」(浅野)


サウジアラビアのビルドアップに対し、両サイドの南野や浅野の運動量が要求されるのは仕方ないところもあるが、日本のボランチとサイドハーフは設計面の不利を、ハードワークで何とかしなければならない範囲が広すぎた。


日本は4-2-3-1をベースとする中で、やれることをしようとしていたとは思う。強いて言えば、ボールを奪った後に縦を狙うか、一度落ち着かせるかのメリハリが足りなかったが、試合に入る戦術設計の責任は森保一監督にある。


1つ噛み合えば、デュエルでは日本が優勢なシーンも多く見られただけに、それ以前のところで、位置的優位を取るためのベースをどれだけ与えられていたのかは疑問符が付く。


柴崎の交代のタイミング


ただし、サイドハーフの疲労を考えれば、後半の早い時間に浅野と南野を下げて、原口元気と古橋亨梧を投入した判断は的確だった。


一方で疑問なのが、柴崎の交代のタイミングだ。サイドハーフの選手が体力的にキツくなるのはもちろんだが、ボランチはより失点に結び付きやすいポジションでもある。


もし鎌田に代えて守田英正を入れるなどの対応をしていれば、全体のオーガナイズを加味して柴崎を残すプランもありだが、柴崎本人の状況、さらに周りとの距離感を考えても、森保監督はどちらかの対応を早めに打つべきではなかったか。


筆者の考えとしては、サイドハーフより先にこちらの手を打っても良かったと思う。


終盤はオナイウ阿道を投入して大迫との事実上の3トップにし、古橋が中央に流れる形で前線に厚みを加えたが、サウジアラビアのエルベ・ルナール監督は得点したアル・ブリカンを除くと、守備的なポジションに交代カードを切って、日本の攻撃をしのぎ切った。


オーストラリア戦で改善は見られるか


1試合目のコンディションや完全アウェーの環境が厳しいのは、試合前から想定できたことだ。筆者はこのコラムでも、大迫、長友佑都、酒井宏樹と言った国内組をオーストラリア戦に専念させて、欧州組のコンディションが良い選手でサウジアラビア戦に臨むプランを提唱してきたが、チームビルディングの観点から、出場停止の伊東純也も含めて、サウジアラビアに集合させたという森保監督の判断はリスペクトすべきところもある。


しかし、設計面はよりシビアに評価する必要がある。ピッチ上のミスなど、プレー面では選手にも責任はあるが、彼らを送り出す森保監督のプランが正しかったか間違っていたか以前に、明確さを欠いたところに敗戦の大きな理由があるとするならば、危機的状況で迎えるオーストラリア戦も、結果がどうなるにせよ、分の悪い試合になることは避けられないだろう。(文・河治良幸)



写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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