戦い方の2枚目を描くイメージが乏しかった日本。オーストラリア戦はアグレッシブなハイプレスを!

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第148回

戦い方の2枚目を描くイメージが乏しかった日本。オーストラリア戦はアグレッシブなハイプレスを!

By 清水 英斗 ・ 2021.10.12

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カタールW杯アジア最終予選のサウジアラビア戦、日本は0-1で敗れた。暑熱のアウェーでショートカウンターに重きを置く戦い方は悪くはなかったが、それほど良かったわけでもない。


そう感じられた最大の理由は、サウジアラビアの日本対策が優れていたからだ。左サイドバックのヤシル・アルシャハラニは守備に切り替わった際の帰陣が早く、浅野拓磨の飛び出しは多くの場面で封じられた。


攻守の切り替えにルーズさがあった、過去のサウジアラビアとは様子が違う。高い位置を取るサイドバックの背後を日本がねらって来ることは、想定済みだったようだ。


相手がビルドアップを3枚気味に変形したことも、いくつかの効果があった。日本の2トップに対して数的優位を作りつつ、サイドでアルシャハラニを前へ押し出して浅野のポジションを下げさせ、カウンターの威力を弱める。さらに後ろが3枚気味に残るため、ボールを奪われた際にボックスの幅を一発で突かれるシーンを制限する。


それらの結果、浅野の飛び出しは、なかなか内をえぐり切ることが出来ず、外に追い出される形が多くなった。サウジアラビアにうまく抑えられ、槍のようなプレースタイルを持つ浅野の特長は今ひとつ出し切れなかった印象だ。


サウジの日本対策が的中


また、槍には刀身となる穂の部分と、柄の部分がある。


浅野が槍の刀身だとすれば、その柄を持つのは柴崎岳だ。まるで振り子で揺れる針の穴を通すかのように、一瞬のタイミングのすきを突き、精度の高い縦パスを通す。それは槍術士のようなパッサーである柴崎の特異なセンスだと思う。


ところが、サウジアラビアは槍の穂先への警戒だけでなく、柄への寄せも早かった。ボールを失った瞬間、日本のボールホルダーに寄せて選択肢を奪ってしまう。


すると柴崎は好ましくない癖として、いつまでも槍を突くチャンスを探して浮遊する。一度ボールを横に動かして相手のカウンタープレスを外し、武器を持ち替えて攻めるような選択肢に乏しい。そのため、柴崎はルーズな保持からボールを失う機会が多かった。


柴崎の危険なボールロスト


この辺りは遠藤航、あるいは時折下りてくる鎌田大地のほうが、相手を一度外すボールの回し方は巧みでテンポも良かった。


どうしても柴崎はボランチというより、トップ下の選手がそのままの感覚で下がってプレーしているように見える。一発で縦を狙いすぎて、その結果、危険なボールロストが何度も起きた。


もちろん、柴崎は良いパスや良いシュートも見せたので、失敗ばかりをあげつらうのはフェアではない。ただ、「ミスやロストは多かったけど、チャンスは作ったよね」と評価されるのはFWやトップ下など攻撃側の話であり、ボランチではない。チームを安定させるべきボランチを、「でもチャンスは作ったよね」と評価するのは難しい。


4年前を思い返すと、当時のハリルホジッチ監督は初期以降、柴崎をボランチで起用しなくなり、トップ下に置くことが増えた。守備を含め、その判断はよくわかる。この試合で言えば、鎌田と柴崎のポジションは逆のほうが良かったかもしれない。


サウジが一枚上手だった


失点につながった後半のミスも、確かに周りのサポートは遅かった。ただ、そもそも前半からサポートにリズム感がなかった。


柴崎は良くも悪くもボールを受けて少し無理をするので、周りも次第にシンプルなサポートが遅くなりがちだ。静かな悪循環はずっと存在した。


それが表に出ないまま試合が終わることもあるが、今回はサウジアラビアの寄せの早さもあり、もっとも厳しい形で露呈した。


槍の穂と柄。浅野と柴崎。もちろん、それが爽快に炸裂することはあるが、今回はサウジアラビアが一枚上手だった。


2枚目を描くイメージが乏しかった


では、どうすれば良かったのか。サウジアラビアは3枚気味にビルドアップし、中盤は流動的だ。また、浅野の飛び出しを警戒してDFが下がるため、ボールを奪った瞬間に中盤にスペースが出来る。


そのため、まずは素早くボールを動かし、相手のプレスを避け、一発でDFの背後ではなく、ボランチの背後を取って行く。


槍の出番はそこからだ。ボランチの背後を取った選手がDFを引きつけたところで、浅野が再び飛び出す。一ノ槍ではなく、ニノ槍で仕掛ける。


日本も時折、鎌田が動いてスペースを作り、南野拓実がバイタルエリアで縦パスを受けることで、ニノ槍を繰り出す場面は作ったが、回数は少ない。


サウジアラビアの戦い方を見ながらプレーすれば、このようなニノ槍、あるいはサイドに広げて浅野や大迫勇也がクロスに飛び込むなど、三ノ槍をもっと効果的に使えたのではないか。


「意思統一できる絵」はあったと思う。しかし、1枚しか無かった。そして1枚目が非効率と気付いたとき、2枚目を描くイメージは乏しかった。


オーストラリア戦の戦い方


次のオーストラリア戦はどうなるか。今度はホームだ。近頃の日本は秋に入り、夜が涼しくなってきたので、パフォーマンスは上がりやすい。


五輪代表を含めてビルドアップに課題を抱える日本が、どこまで改善できるかは未知数だ。


また、涼しくなった日本でオーストラリアが猛烈なハイプレスに来ると、ぼろが出やすい。ポゼッションはあまりリスクを取らなくていいのではないか。


それより5人交代が可能なので、サウジアラビア戦のように抑制せず、アグレッシブなハイプレスで飲み込みに行くほうが期待を持てる。


サウジアラビア戦は「2枚目を描くイメージが乏しかった」と書いたが、後半14分に古橋亨梧と原口元気を投入し、特に古橋が相手センターバックにスライドして寄せるハイプレス戦術に転換した後は、非常に良かった。点にはつながらなかったが、期待感はあったし、実際に試合の流れも取り戻した。


客観的に見て、今の日本のストロングポイントはそこ。暑熱アウェーのサウジアラビアではそんな戦い方はあり得なかったが、秋の日本ならいける。


この先は11月、1~2月、3月と、アウェーも含めてコンディションが上がりやすい試合になるので、今後につながる布石としても、アグレッシブに飲み込む試合で勢いを付けたほうがいい。


そもそも根本的に代表チームの基盤、作り方としてどうなんだとか、色々言及したいこともあるが、事ここに至っては目先の試合をどうするか、それだけだ。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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