W杯出場権をかけた、ライバルとの直接対決。負けられない10月シリーズをどう戦う?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第96回

W杯出場権をかけた、ライバルとの直接対決。負けられない10月シリーズをどう戦う?

By 河治良幸 ・ 2021.9.30

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日本代表は10月7日にアウェーでサウジアラビア、12日にホームでオーストラリアと対戦する。2試合を終えて勝点3の日本に対して、サウジアラビアとオーストラリアはともに6。ライバルとの直接対決であるこの2試合が、W杯出場に向けた命運を握ることは間違いない。


筆者としては、サウジアラビア戦をオール欧州組で臨み、大迫勇也、酒井宏樹、長友佑都、権田修一を含む国内組と、累積警告でサウジアラビア戦が出場停止の伊東純也はJFA夢フィールドで調整し、万全の状態でオーストラリア戦に向かう方が良いと考えていた。


いわば”変則型ターンオーバー”だが、前回の中国戦後に帰国せず、欧州で視察を続けてきた森保一監督は、招集した25人を欧州と日本からサウジアラビアに集合させて、伊東もチームに帯同させる方針を表した。


その中で国内組は上記の4人と、東京五輪で正GKをつとめた谷晃生を加えた5人に止め、前田大然や江坂任と言った、Jリーグで好調を続ける選手は招集しなかった。


おそらくサウジアラビア戦に関しては、欧州から現地入りするメンバーの方が、より良いコンディションでできるという見通しなのだろう。


ボール保持に優れたサウジ


今回は久保建英と古橋亨梧が怪我で外れており、サウジアラビア戦は伊東が出られない。そうした状況で2列目は堂安律、鎌田大地、南野拓実の3人に主力としての期待がかかる。


そこにアントワープで好調の三好康児、経験豊富な原口元気が途中から変化や勢いをもたらす役割になると想定される。


ただしサウジアラビアは、2年前のアジアカップで日本を相手に70%を超えるボールポゼッションを記録したように、完全アウェーの環境で日本がボールを持つ時間は限られるだろう。


W杯アジア二次予選の日本は前からボールを奪い、積極的な波状攻撃を押し出す中で、鎌田と南野の”Wトップ下”が機能。そこに伊東が縦の槍として決定的なチャンスを作り出していた。


左からはサイドバックの長友が攻め上がり、大外、時にはインサイドからチャンスに絡み、ボランチの遠藤航や守田英正もペナルティエリアの手前まで上るシーンは少なくなかったが、サウジアラビア戦はそうしたシチュエーションがあまり期待できない。


今回のメンバー構成を見ると、気になるのはカウンター主体になった時に、一発で裏を狙うタイプが浅野拓磨しかいないこと。


フランス2部でゴールを量産するオナイウ阿道は万能型で、そうした形からのゴールも狙えるが、堂安、鎌田、南野がボールを持てない時間帯に、どうチャンスメイクしていくのか。


ボランチの遠藤や柴崎岳のゲームコントロールも重要だが、ボールを持てる前提で攻撃を考えることは非常に危険だ。


その意味でも、サウジアラビア戦のキーマンに浅野を挙げたい。さらに三好も途中から流れを変える存在として、重要な役割を担うと見ている。


ゴール付近での接触プレーに注意


是が非でも勝点3が欲しい試合だが、大量得点が望めない試合だけに、サウジアラビアの攻撃を無失点に抑えないことには始まらない。


センターバックの吉田麻也と冨安健洋は不動と予想されるが、両サイドバックの酒井と長友が、長距離移動から3日後の試合にコンディションを合わせられるのか。もし難しいと判断した場合、森保監督は躊躇せずに欧州組の室屋成や中山雄太を起用するべきだ。


フランス人のエルヴェ・ルナール監督が率いるサウジアラビアは、後ろからのパス回しがうまく、2列目のアル・ムワラド、アル・ファラジュ、アル・ドサリは個での仕掛けにも優れている。


なかでも司令塔のアル・ファラジュはパス出しが巧妙で、相手がボールを奪いに来ればうまく倒れ、危険な位置でFKを獲得するなど、ずる賢さも備える選手だ。


サウジアラビアのホームで行われた最終予選初戦では、ベトナムが2つのPKを取られて敗れた。完全アウェーの環境では何が起こるかわからない。ペナルティエリア付近での接触プレーには気をつけたい。


可変性スタイルのオーストラリア


10月12日のオーストラリア戦は、日本のホームで行われる。オーストラリアは7日のオマーン戦(カタール)後に来日する。条件は日本とほぼ同じだ。


日本をよく知るグラハム・アーノルド監督は東京五輪の代表チームと兼任しており、日本の環境も経験済みだ。さらにセレッソ大阪のアダム・タガートやファジアーノ岡山のミッチェル・デュークを擁しており、埼玉スタジアムの収容や応援も制限される中で、日本のホームアドバンテージはそこまで高くないだろう。


オーストラリアは可変性の高いスタイルで、日本がアジアカップ決勝で敗れたカタールに似たところがある。苦手なタイプと言えるだろう。


ディフェンスはオーソドックスな3ラインだが、攻撃になるとサイドバックの片方がウイングの位置まで上がり、サイドハーフの選手が1トップのタガートに近距離で絡むなど、いくつもの立ち位置を使い分けてくる。


守備も相手が前からはめにくいようにボランチやサイドバックが立ち位置を変えてくるので、ハイプレスが常時効かない可能性が高い。


日本が守備でオーストラリアをはめやすくするには、4-3-3をベースにすること。これなら、アーヴァイン、フルスティッチ、ロギッチの中盤3枚を封じながら、多少可変しても幅広くカバーできる。


最低でも1勝1分がノルマ


さらに攻撃のギアを上げるなら、酒井宏樹を3バック右にした3-4-2-1で、左右ウイングバックの伊東と原口が攻撃の幅をとり、大迫、鎌田、南野が近い距離で相手センターバックの背中を取るような攻撃を増やしたい。


おそらくオーストラリア戦は、サウジアラビア戦に増して総力戦になる。サウジアラビア戦は最悪、勝点1でも希望はつなげられるが、ホームのオーストラリア戦で勝点3を逃すと、最終予選でオーストラリアを逆転できる可能性は限りなく低くなる。


もちろん、負ければ絶望的だ。10月シリーズは願わくば2連勝、最低でも1勝1分で終わらないと、ライバルの二カ国に引き離されてしまう。


冒頭で書いたように、長距離移動を踏まえた選手のプランニングに賛同はできないが、とにかく最良の結果で応えてほしい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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