サッカー日本女子代表は、池田太新監督を迎えて新たなスタートを切った。
直近の目標は、来年1月にインドで行われるアジアカップ。上位5カ国が2023年の女子W杯の出場権を獲得し、さらに2カ国がプレーオフに進む(開催国オーストラリアを除く)。
日本は2014年、2018年と連覇中で三連覇がかかるが、大きな目標はその先にある。
東京五輪でメダルを逃した日本としては、3年後のパリ五輪でのリベンジに期待が高まるが、その前に2011年に優勝した経験を持つ女子W杯が大きな目標になる。
実際、東京五輪には前回W杯でベスト8のうち7カ国を占めた欧州勢からスウェーデン、オランダ、イギリスの合同チームを結成したイングランドの3カ国しか参加できなかった。
参加24カ国から32カ国に拡大される女子W杯は、欧州に11カ国+プレーオフ1枠が与えられており、フランスやドイツも躍進を狙ってくるだろう。
また東京五輪で金メダルを獲得したカナダやアメリカ、開催国のオーストラリアなど、強豪国のフル参戦が見込まれる。グループリーグの突破もこれまで以上に厳しくなりそうだ。
新チームのテーマは「奪う」
Jリーグ草創期に現役時代を過ごし、浦和レッズ、アビスパ福岡でコーチを務め、2018年に行われたU-20女子W杯で日本を優勝に導いた池田太監督は「みんなで未来や歴史を作っていこう」と選手たちに語った。
初日のミーティングでは男子のプレミアリーグなど、強度の高いプレー映像を見せて、基本コンセプトを提示したという。
精神的な支柱の一人としても期待される清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は「一番のテーマになるのが奪うこと」と語る。
それはボールを奪う、ゴールを奪う、そして勝利を奪うということ。”なでしこジャパン”というと細かいパスワークで相手を崩すイメージが強いが、池田監督はアグレッシブにボールを奪い、そこからゴールに矢印を向ける。
U-20時代の教え子も招集
初日から3日間の練習を見学したが、4-4-2をベースに、守備から攻撃への素早いトランジション、縦に差し込むパスやスプリントでの追い越しなどが多く見られた。
足元でショートパスをつなぐサッカーに比べると、ミスやディフェンスに引っかかるシーンが目立つが、ボールを奪った時にゴールを意識してプレーする分、遠くを見ようとルックアップする姿勢は早くも感じ取れた。
「選手それぞれ武器を持って集まっているグループ。自分の力以外にも、仲間にいい影響を与えられる相乗効果のあるチームにして行きたい」(池田監督)
今回はWEリーグに所属する国内組だけの参加だが、プロとしてそれぞれが自覚を持って新たな環境に挑んでいる中で、過去の実績にとらわれることなく、試合で良いパフォーマンスを出している選手たちを招集したという。
若い選手の割合も前体制より高くなり、高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)、長野風花(マイナビ仙台レディース)、宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)、植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)など、2018年のU-20女子W杯で、池田監督とともに世界一を経験したメンバーも多い。
高橋は池田監督の「熱さは変わらない」と語る。
「気持ちが伝わるし、ミーティングも聞きやすい。練習中もナイスという声かけだったり、いいところはいいってはっきり言ってくれる。うまくいかなかった時も、ただその人が悪いではなくて、チャレンジは良かった、チャンレンジしてもいいんだと思わせてくれる」
期待できるチーム
アジアカップでは熊谷紗希(バイエルン・ミュンヘン)や岩渕真奈(アーセナル)、長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド)といった主力選手のほかに、U-20W杯の優勝メンバーで、東京五輪を経験した宝田沙織(ワシントン・スピリット)や林穂之香(AIKフットボール)なども加わるはず。
池田監督は国内組、海外組は意識せずにメンバーを招集していくようだが、WEリーグの選手たちを見ていると、意欲の高まりは頼もしい。
世界の女子サッカーは着実に成長しており、上位を狙えるチーム力を備えたチームの数も増加傾向にある。
攻守の強度や素早いボール奪取からゴールを目指す意識も世界のスタンダードになってきており、池田監督が掲げるコンセプトも日本のオリジナルというよりは、世界と戦っていくために引き上げなければいけないベースに過ぎない。
そこに”なでしこジャパン”の強みを加えることでこそ、アジアカップ制覇、さらに女子W杯での躍進が見えてくる。
まだ最初の合宿を行ったに過ぎないが、つかみとしては期待できるチームであることを感じさせてくれた。(文・河治良幸)
写真提供:河治良幸