17日、カタールW杯アジア最終予選に臨んだ日本代表はオマーンとの“リベンジマッチ”を1対0で制し、勝ち点3を獲得。グループ2位に躍り出た。
この試合の日本はベトナム戦同様、4-3-3のシステムで戦った。4-3-3のプレッシングは、1トップ、両ウイング、両インサイドハーフが5レーンを抑えた状態でスタートするため、高い位置で相手を捕まえやすい。3枚回しに変化されても、全体がそれほどズラされず、対応できる利点はある。
ただし、急所は1トップの裏だ。1トップ、両インサイドハーフが織りなす三角形の中間のスペースである。
相手がアンカーを置く場合、この急所を利用される場面が多く、たとえば10月のオーストラリア戦の後半20分には、左インサイドハーフの守田英正がアンカーに釣られ、左サイドを空けた場面から芋づる式に崩されて、フリーキックの失点につながった。
必ずしも守田のプレスが間違っていた、というわけではない。ただ、そこが急所のスペースであるだけに、行くとすれば左サイドを空ける認識は共有されるべきだったが、そこでズレが生じ、長友佑都の背後を突かれる形になった。
同じ急所は、オマーン戦でも利用された。
前半にプレスがはまらず、カウンターの勢いが出るボールの奪い方が少なかったのは、相手アンカーへの対処が曖昧だったからだ。左インサイドハーフの田中碧が相手アンカーに寄って行き、空いた左サイドを使われる場面は、オーストラリア戦を繰り返すかのようだった。
後半、システムを微調整
この点をピッチ内の連係では解決できなかったため、後半開始から、少なくとも守備時は4-2-3-1に変わり、相手アンカーをトップ下(南野拓実)が明確にマッチアップして抑えるよう、修正された。
仮に4-3-3を維持するとすれば、鍵を握るのは1トップの守備だ。相手アンカーへの対処は、1トップが少し下がって背中で見張り、相手センターバックには伊東純也らの両ウイングにプレスをかけさせるほうが、全体のバランスは崩れなくて済む。
前へ出てセンターバックに寄せるか、下がってアンカーを抑えるか。4-3-3プレッシングを柔軟に機能させる上では、調整弁としての1トップの戦術理解と連係が不可欠だ。そのことがポストプレーだけでなく、コンディションが悪くても大迫勇也を外しづらい一因になっているとは思う。
ただし、オマーン戦の大迫はコンディションが悪すぎて、守備に多くを望めなかった。4-2-3-1に修正し、相手アンカーにマッチアップさせる必要があったのではないか。
田中碧の好プレー
4-3-3のプレッシングは、まだ完成度が低く、ハマったと手応えを得られる場面は少ない。対戦相手へのサプライズ効果はあるが、同時に準備不足も否めず、4-3-3に慣れた川崎出身の選手たちが居なければ、後者が上回っていたに違いない。今後はサプライズの薄れと、成熟、どちらが上回るかの勝負になる。
その中心に立つのは、間違いなく田中碧だ。オマーン戦も飛び抜けたプレーをしていたが、彼が今後の主役になると確信したのは、三笘薫が投入されたオマーン戦後半の開始時だった。
田中はハーフスペースに立ち、前に行きたそうな様子を見せる長友を手や声で制し、低い位置に留まらせた。
長友が三笘に近づきすぎると、相手の右サイドハーフと右サイドバックの距離が縮まり、三笘にボールが入ったとき、自然とダブルチームで対応されてしまう。相手がそれを意図して待ち構えるのならともかく、自分たちでその状況に入って行くのは馬鹿馬鹿しい。だからこそ、相手の距離を広げるため、田中は長友を低い位置に留まらせたのだろう。
そして自分はハーフスペースに立ち、飛び出しを匂わせて相手右サイドバックの注意を引きつける。こうやって三笘を、ドリブラーを生かすんだと、田中が手本を示していた。もう単なる優秀な若手ではない。影響力を持っている。
物怖じせず、キャプテンシーを発揮
ハーフスペースの立ち位置だけでなく、実際に飛び出したり、アンカーのサポートに下がったり、ウイング裏をカバーしたりと、田中の動きは広範囲で効いている。川崎では色々なポジションを経験したので、中盤はどこでもプレー可能だ。試合中にシステムが変わっても、流れの中で立ち位置が入れ替わっても、全く違和感がない。
南野や長友、柴崎といった先輩たちが、4-3-3への適応に苦心するなか、すでに田中は水を得た魚のようにプレーしている。もはや先輩や後輩は関係ない。このシステムの経験では、田中のほうが先輩なのだから。
長友に指示を出し、その立ち位置を修正した田中の姿にはキャプテンシーや主体性が感じられ、今後の日本代表は彼を中心に進むのだろうと確信を得た。(文・清水英斗)
写真提供:getty images