負けられないオマーン戦。勝負の鍵は両サイドバックと“クロスファイヤー・パス”

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第150回

負けられないオマーン戦。勝負の鍵は両サイドバックと“クロスファイヤー・パス”

By 清水 英斗 ・ 2021.11.15

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11月のワールドカップ・アジア最終予選のポイントはサイド攻撃だ。ベトナムは[5-3-2]、オマーンは[4-3-1-2]を敷く。


最終ラインと前線のどちらに1枚を増やすかの違いはあるが、共にアンカーを置き、中央を厚く固めたシステムだ。日本は中に基点を作るのが難しいので、必然、サイド攻撃が中心になる。


ただし、初期配置でサイドが空くことは相手もわかっているので、サイドへボールが出たら素早くスライドし、追い込もうとしてくる。


このスライドが間に合ってしまうと、相手は2トップなので、センターバックの吉田麻也や冨安健洋が同数でマークされ、バックパスで回避するのも窮屈だ。


そうしてワンサイドに追い込まれると、ベトナム戦の前半のように伊東純也と山根視来が無理に仕掛けてボールを失ったり、あるいは9月に敗れたオマーン戦のようにプレッシャー下のバックパスでミスが起きたりと、相手の罠にはまってくる。


鍵を握るのは両サイドバック


それを避けるためには、空いたサイドへ展開した後も、パス回しのテンポを失わず、スライドされる前にボールを動かすことが重要だ。


しかし、この点は敗れたオマーン戦も、1-0で勝利したベトナム戦の前半も、うまく出来なかった。また、サイドが空いた状況でうまくプレー出来ないのは、東京五輪のニュージーランド戦も同様だった。


鍵を握るのは両サイドバックだ。システムの噛み合わせ上、対面する相手がいない。2トップとの同数にさらされる吉田と冨安の近くにカバーを意識して立つか、あるいは高い位置で幅を取りに行くか、はたまたハーフスペースで中盤を抑えるか。


浮いたポジションである両サイドバックは、様々な選択肢の中で、自分の立ち位置を決めなければならない。


その点で、ベトナム戦の後半は改善した。鍵を握ったのは、山根と中山雄太だ。両サイドバックは低い位置に留まって相手ウイングハーフとの距離を取り、ビルドアップの起点としてボールをさばくよう、前半とは立ち位置を変えた。


相手がスライドし切る前に、伊東と浅野拓磨の裏抜けにタイミングを合わせて、シンプルに縦パスを送る。両サイドのプレーメーカー2人が、日本のサイド攻撃を改善させた。


また、守備時も前半から吉田と冨安のカバーを強く意識し、その分、アンカーの遠藤航がどんどん球際に出て行くやり方をしていたので、両サイドバックが低く留まる後半の立ち位置のほうが攻守に一貫性があり、安定感が高かった。


中山雄太の効果的なプレー


そうして改善した後半の中でも、特に目を引いたのは、中山のクロスファイヤー。対角線に貫くパスだ。


ベトナム戦の後半21分、左サイドの大外に立った浅野、ハーフスペースの守田に相手のマークが釣り出されると、中央へのコースが開けた。そこへ中山からスルーパス。


身体は左サイドを向きながら、虚を突く中央へ斜めに通した。受けた大迫勇也はビッグチャンスを決められなかったが、中山のクロスファイヤー・パスが、敵陣を切り裂いた場面だった。


相手が一方へスライドして来るからこそ、逆方向へ、背中を取るパスが効く。日本代表ではなかなか、このクロスファイヤー・パスを、奥行きを伴って出せるDFはいない。右サイドからは時折出るが、左サイドは希少。単純に、左利きが少ないからだ。


個人的に思い出すのは、2014年ブラジルワールドカップのギリシャ戦だ。前半に相手が退場者を出し、日本が優位を得つつも、0-0でスコアレスドロー。


この試合、右サイドハーフで先発した大久保嘉人が中のすき間へ寄り、左センターバックの今野泰幸から斜めの縦パスを欲しがっていたが、今野はクロスファイヤーを出せなかった。


試合後、「そこが見えれば、もう1段上へ行けると思うけど…」と語っていたのが、印象に残っている。


オマーン戦のサイドバックは誰だ?


今野は元々右利きなので、どうしても左足にボールを置いたとき、右肩口からのぞく視野が狭くなりがち。クロスファイヤーのコースが見えなかった。これは長友佑都も同様だ。


ご飯を食べるときは、箸を使う利き手の作用だけでなく、茶碗を持つ非利き手の支持も必要とされる。右利きで言えば、左手で箸を使うことと同様に、右手で茶碗を持つことにも違和感が芽生える。


たとえ左足のキックを鍛え上げても、支持する右半身や目の使い方が追いつかなければ、クロスファイヤーのコースは見えないのだろうと思う。


右利きでも苦にせず、左足でクロスファイヤー・パスを通せるDFと言えば、代表で思い当たるのは冨安健洋、佐々木翔くらい。過去を遡ってもなかなか名前は出て来ない。


その点は、左利きの中山が左サイドバックに入れば解決する。また、左センターバックには冨安もいる。


単純な裏抜けや仕掛けだけのサイド攻撃では、時間と共に相手が慣れてしまうが、スライドの背中を取れるクロスファイヤーがあれば、プレスの的を絞らせず、状況は優位になる。


鍵を握るのは、やはり両サイドバックだ。ベトナム戦と同じくオマーン戦も、プレッシングとカウンター。それ以外ではサイドバックの選手起用と立ち位置がポイントになるのではないか。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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