なでしこジャパン、東京五輪メンバーが決定。全ポジションを徹底解説!

COLUMN河治良幸の真・代表論 第83回

なでしこジャパン、東京五輪メンバーが決定。全ポジションを徹底解説!

By 河治良幸 ・ 2021.6.21

シェアする

18日、サッカー女子日本代表“なでしこジャパン”は、東京五輪に臨む18人とバックアップメンバー4人を発表した。高倉麻子監督は「選手がレベルアップをして、素晴らしい選手がいるので、絞り込んでいくのは難しい作業でした」と語るが、このメンバーで行くことを決心したようだ。


6月にウクライナ、メキシコと親善試合を行ったメンバーの中から18人が選ばれた形だが、その中でサプライズはDF北村菜々美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)とMF塩越柚歩(三菱重工浦和レッズレディース)の選出だ。


北村はここまでA代表3キャップ、塩越は前回合宿が初招集というフレッシュな二人だが、高倉監督が「シンプルにパフォーマンスが良いに尽きる」と語る通り、ここまでのアピールを考えれば、決して驚きではない。


23人を登録できるW杯と違い、五輪は18人という少ない枠だ。しかも今回は5人交代制ということで、GKを除くベンチメンバー6人のうち、最大5人が投入されることを想定すると、複数ポジションでプレーできる“マルチロール”であることが求められる。


北村は左サイドバックで起用されているが、前目のポジションを本職としており、縦の突破に魅力がある。一方の塩越はウクライナ戦で右サイドハーフ、メキシコ戦ではFWで起用され、途中から4-3-3のセンターフォワードで非凡なセンスを発揮した。


複数のポジションをこなすマルチロールでありながら、ここという時に勝負のカードとして切れるスペシャルな武器を持っていることは、五輪を戦う上で大事な要素になる。


重要な役割を担う宝田


GKから見ていくと、山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)と池田咲紀子(三菱重工浦和レッズレディース)は、良い意味で実力が接近しており、21日からスタートするキャンプから競争していくことになる。おそらく、京都のサンガスタジアムで行われる7月14日の壮行試合に先発する方が、五輪代表の守護神を担うことになるだろう。


DFは攻守に安定感のある右サイドバックの清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、頼れるキャプテンで、ディフェンスリーダーのセンターバック熊谷紗希(FCバイエルン・ミュンヘン)の二人が軸になる。


熊谷の相棒となるもう一人のセンターバックと左サイドバックは、対戦相手や調子を考えながら使い分けていくことになるはずだ。センターバックは熊谷の後継者としても期待される南萌華(三菱重工浦和レッズレディース)と、FW出身ながらセンターバックとしてチャンスを掴んだ新進気鋭の宝田沙織(ワシントン・スピリット)がスタメンを争う。


宝田はアタッカーとして得点力もあり、ベンチスタートの場合は勝負を決める切り札としての投入も可能だ。また、相手のパワープレーに対応する守備のカードとしても使えるタレントで、センターバックの主力になろうとサブに回ろうと、メダル獲得の鍵を握る一人と考えている。


左サイドバックは相手に応じて使い分ける


一番読みにくいのは左サイドバックで、台頭してきた北村と戦術眼やバランス感覚に優れる宮川麻都(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の二人が、試合に応じて使い分けられる可能性が高い。


個人で仕掛けてくるサイドアタッカーには北村、パスで起点になるような相手には宮川といった形で、戦術的なプランニングも可能なので、二人ともベンチに回った場合の役割も想定しやすい。


北村は縦の推進力、ボランチもこなせる宮川はビルドアップと、攻撃面の特徴がはっきりしている、特に宮川はボランチ、右サイドバック、サイドハーフ、有事にはセンターバックも担えるスーパーマルチ。真夏の連戦が続く五輪では、消耗の激しいボランチでの出番もあるかもしれない。


明確なサブがいない右サイドバックは、清水に何かあれば宮川が右に周り、左は北村かウィングが本職の遠藤純(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が後ろに下がる形が想定される。


ボランチの要は中島


4-4-2を基本システムとするなら、心臓であるボランチは中島依美(INAC神戸レオネッサ)と三浦成美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)がファーストセット。


もともと高倉監督は技術の高い三浦と攻撃センスに優れた杉田妃和(INAC神戸レオネッサ)を軸にしていたが、2年前のW杯でも見られたように、展開が狭くなる傾向が強く、欧米の相手には守備の強度で後手を踏む傾向があった。


サイドハーフで起用されることが多かった中島がボランチに回ったことで、中盤からのパスレンジが長くなり、持ち前の細かいパスワークに左右の幅と前後の奥行きが加わった。セットプレーのキッカーでもある中島は戦術的なキーマンで、彼女が展開力とリスク管理の両面を担うことで、三浦の積極的な飛び出しなども期待できる。


ただ、過密日程で6試合、暑さを考えれば、ボランチ二人でフル稼働はありえない。その意味で、攻撃的なポジションのマルチでもある杉田、左サイドバックを兼ねる宮川などのカバーリングは必須だ。


オプションの4-3-3は中盤を厚くする戦術的な理由だけでなく、ボランチにアクシデントがあった場合に攻撃的MFの長谷川唯(ACミラン)やFWの籾木結花(OLレインFC)をインサイドハーフにして乗り切る、“プランB”としても想定されるはずだ。


左は長谷川、右は使い分け可能


サイドハーフは左の長谷川がほぼ固定である一方、右は籾木を筆頭に杉田、塩越、さらに攻撃的なオプションとして左利きの遠藤を”逆足アタッカー”として起用することも可能なポジションだ。


長谷川が左のハンドルとして安定している分、右は攻守のバランスや戦術的な意図で使い分けることができる。見方を変えると、上記の候補で右サイドのスタメンにならなかった選手はジョーカーとして備えることになるので、純粋な競争というよりはスターターとクローザーに役割が変わるだけとも言える。


2トップは岩渕真奈(アーセナル)が軸になる。高倉監督が「なでしこの象徴的な10番は澤さん。彼女の後の10番はとても重い意味がある」と語り、満を辞してエースナンバーを託された岩渕には、ゴールを含む獅子奮迅の活躍が期待される。


岩渕のパートナーが菅澤優衣香(三菱重工浦和レッズレディース)になるのか、田中美南(INAC神戸レオネッサ)になるのかは、蓋を開けてみないとわからない。これまでの位置付けからすると、タイプ的にも岩渕との相性が良く、力強いポストプレーとヘディングシュートが武器の菅澤がファーストチョイスだろう。


ただし、田中には岩渕と二人にしかわからないような阿吽のイメージがあり、相手が強豪になるほど、そうした要素も求められてくるはず。田中もドイツに挑戦したことで良い意味で主張が強くなり、国際舞台での”勝負弱さ”を克服している期待は高い。


決勝までの6試合をどう乗り切るか


菅澤をベンチに置くことには、戦術的なメリットもある。点を取りに行く目的であれば、幅広いポストワークと決定力を併せ持つ田中も有効だが、菅澤の方が特長がはっきりしており、パワープレー的な起用もできる。


そのため、FWも単純な序列というよりは、スターターとクローザーのプランニング次第なところもある。オプションでは、サイドから個人で違いを生み出せる遠藤、前線でタメを作れる塩越、シュート力に磨きをかけている杉田、攻撃センスの高い籾木、スピードの北村、パワーの宝田と選択肢は豊富だ。


なでしこジャパンは熊谷や岩渕のような主軸はいるものの、18人という限られた人数の中で4-4-2をベースに、4-3-3などオプションも活用しながら、決勝までの6試合をどう乗り切っていくのか。


まずは強豪カナダとの開幕戦だが、単純なスタメンとサブの序列という構図ではない形で想定していくと、観る側も楽しめる要素が増えるはずだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

シェアする
河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

このコラムの他の記事