何の驚きもない18人の五輪メンバーを見て、どこかホッとした部分はある。便りがないのは良い便り。サプライズが無いのは、チーム作りが順調であることの証だ。
GKは浦和でポジションを掴みつつある18歳の鈴木彩艶が、控えGKとして急遽メンバー入りする可能性も囁かれたが、これまで通り、谷晃生と大迫敬介に決まった。
この3年のA代表の歩みを見ても、森保一監督はチーム内の序列を簡単にひっくり返す監督ではない。チーム作りの流れを重視し、序列の変化には慎重な姿勢を取る。
もしも今回、大迫敬介を外して鈴木を18人に入れれば、良くも悪くもチームに激震が走り、動揺させることになる。チーム作りが順調に進む今となっては、良くも悪くものうち、悪くものほうが大きい。そう考えた部分はあるのではないか。
一方、鈴木は18人の枠は逃したが、負傷者が出た場合に入れ替えを行うバックアップメンバーには選ばれた。五輪代表は4人のバックアップメンバーも帯同し、22人で活動することが発表されているので、鈴木は実質的には第3GKの位置付けだ。
第3GKと言えば、過去のW杯がそうだったように、単純なGKの3番手ではなく、様々な意図を含めて選ばれるポジションでもある。今回はおそらく、パリ五輪へバトンをつなぐこと、あるいはカタールW杯を意識しつつ、この大器に成長を促す意図が働いたのだろう。そう考えると、妥当な選出だ。
3バックも視野に入れての選出か
DFもサプライズはない。町田浩樹と瀬古歩夢がバックアップ、橋岡大樹が18人のメンバーに優先された格好だが、その判断について、U-24代表が3バックに慣れていることは大きいはず。
ジャマイカ戦では後半に4バックから3バックに変更し、攻守のバランスを改善させた。この五輪チームはA代表よりも、3バックをより有効なオプションとして使うことができる。
その場合、4バックのCBでは戦術的に粗が目立ち、経験不足が否めない橋岡も、3バックの左右CBなら計算できる。同時にSBとウイングハーフも務められる。ジャマイカ戦で3バックを試し、良好な成果を得たところで、橋岡の18人入りは決まったと思う。
ユーテリティーな三好がメンバー入り
攻撃陣では、おそらく三好康児と林大地の選択で悩んだと思われるが、三好が18人入り、林がバックアップとなった。
この判断も、単純な三好と林の比較以上に、様々な考慮点があったはず。
たとえば林を入れる場合は、1トップが3人になるので、前田大然は2列目寄りのユーティリティーとして重要度が増すことになる。しかし、前田と上田綺世はタイプが違うので、前田を優先して1トップでスタメン起用したい試合はあるかもしれない。その場合、上田と林が共に控えとなると、ベンチのバランスが悪い。
また、右サイドハーフやトップ下の控えを考えると、林を入れた場合は三好がおらず、その分は旗手怜央を2列目の控えとして、重要度を上げなければならない。ただ、そうなると左SBの備えが薄くなる。
加えて、3バックの選択肢が有効である以上、状況によっては三好と旗手を両ウイングハーフに置く選択肢も考えられる。諸々踏まえると橋岡同様、三好のほうがよりユーティリティーに形を変えて起用することができ、その中で他の主力ともバッティングせず、シンプルに生かし合うことができる。そう判断したのではないか。
東京五輪はアグレッシブに戦う?
現時点の予想として、おそらくベンチの7人は、守備陣に板倉滉、橋岡大樹、旗手怜央、攻撃陣に三笘薫、三好康児、前田大然、そしてGKの大迫敬介。これが一つのパターンになるだろう。
フィールドは攻撃陣が3人、守備陣が3人なので、ポジションの数を踏まえれば、やや攻撃の人数が多い。しかし、今回の五輪は酷暑の過密日程で行われ、暫定ルールとして5人交代が可能だ。疲労が見えやすい前線の4人は、旗手を含めれば、試合中に総入れ替えすることもできる。
ある意味、これはコンディションの優位を生かし、アグレッシブに戦おうとする、森保監督の意志とも受け取れる。もっと省エネで渋い試合をイメージするなら、三好の代わりに町田浩樹を入れ、リードした後は左SBに町田を入れて守り切る、そんなメンバーも考慮できたはず。
しかし、そうはしなかった。なぜかと言えば、5人交代のメリットや、コンディションの相対的優位を生かし、前線のアグレッシブさを保証して戦うためだろう。
その意気や良し。良いメンバーだと思う。本番が楽しみだ。(文・清水英斗)
写真提供:getty images