アジアで勝てたからOKなのか? U-16、U-19日本代表の戦いに見る成果と課題

COLUMN川端暁彦のプレスバック第29回

アジアで勝てたからOKなのか? U-16、U-19日本代表の戦いに見る成果と課題

By 川端 暁彦 ・ 2016.11.30

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11月28日、日本サッカー協会にて、今年秋に開催されたAFC U-16、U-19選手権を振り返るメディアブリーフィングが行われた。これは、技術委員会の中で行われている大会の総括を外部に公開するためのもので、これまでも継続して実施されてきた。今回はA代表と五輪代表を担当するナショナルチームダイレクターの霜田正浩氏と、2年間にわたってアンダーエイジ日本代表の担当ダイレクターを務めてきた木村浩吉氏が出席し、大挙して集まった報道陣に1時間を超えるプレゼンを行った。


まずは、2年前のチーム立ち上げ時のブリーフィングで発表した内容の確認である。大きな軸は、年代別代表からA代表に至るカテゴリー間でのサッカースタイル、考え方の不統一を認めて、その統一を図ることにあった。年代別代表間のコミュニケーションを図る会議を定期的に実施するとともに、新たに設けた、年代別代表を専属して担当する『ナショナルチームダイレクター』に木村浩吉氏を指名。U-15~U-19までの年代別代表チームを内部から、継続的に見守る役割を負わせた。


木村ダイレクターの仕事は多岐にわたる。現場の意向を汲み取って上に伝えることはもちろん、各年代の監督の相談役となり、国内の大会に足を運んで選手発掘の職責も担った。


もう一つの重要な仕事が外部との折衝役だ。“国際Aマッチ”のような考え方のない年代別代表は、選手招集に関する明確な国際的ルールがなく、話し合いがベースとなる。各クラブや学校は公式戦があればそちらを優先したいのが常であり、選手を貸してもらう交渉がしばしば必要になる。これは歴代監督の大きなストレスでもあったので、それを一手に担うポジションができた意味は小さくなかった(そういうのが苦手な監督もいるわけで……)。結果としていつも招集で揉めるU-19代表は、直前の準備遠征を含めて、選手をそろえることができた。


もっとも木村ダイレクター自身はブラジル、フランス、韓国のU-19代表と対戦した水原JS杯などの、大きな国際経験を得られる場に選手を揃えられなかったことを悔やんでおり、自身の反省点として以前から「国内の試合でベンチスタート。そこから5分だけ出場より、ずっと貴重な機会なのにクラブから理解をしてもらえなかった」ことを挙げていた。ただ、こうやって譲るところを譲ったことによって、最後にきっちりと選手を集められた面もあるので、これもまた一概には言えない。


年代別代表における、コンディショニングコーチの重要性


施策としては、育成年代の代表にパートタイムながら二人のコンディショニングコーチを置いたことも意味があった。U-19代表に小粥智浩(流通経済大学)、U-16代表に中馬健太郎(ジュビロ磐田)の両コンディショニングコーチが帯同。いわゆる“フィジカルコーチ”の役割をこなした。時間が限られる代表チームでは、「監督はどうしてもあれもこれもと(練習を)やりたくなるもの」(木村ダイレクター)なだけに、それを科学的な視点から制止する意味でもコンディショニングコーチの存在は意味があった。知識を持つだけに「メディカル(帯同するドクター)と我々の間に立てる」(同ダイレクター)ことも大きく、負傷者を復帰させるタイミングなどでも重要な役割を担った。


とはいえ、U-16やU-19代表が敗れたからすべてダメだと言えないように、勝ったからすべてオーケーとも言うべきではないだろう。木村ダイレクターも「来年、U-16やU-19の代表が世界でベスト4に進もうと思ったら、大きな壁があるんじゃないかなと思う」と率直に認める。ブリーフィングではまだ話し合っている途上だとしながら、各年代の代表コーチ陣を集めた会議や技術委員会などで議論されている、日本の強みと弱みをまとめたパワーポイントなども公開された。


課題は指導者へのフィードバック


弱みとして上がるのは「パワー」や「10mを超えるスピード」といったおなじみの要素に加えて、「前からプレスを受けたときの対応」といった技術・戦術に関わる部分まで多岐にわたる。後者の部分についてはかねてより感じていることもあるので、また別の機会に解説できればと思う。


3つの年代別代表すべてがアジアを突破することになった2016年。その背景には幾つかの重要な施策、現場の踏ん張りがあったことは間違いない。ただ、リオ五輪での惨たんたる結果が象徴するように、日本サッカー万々歳の年でもなかったことも確かだ。来年行われるU-17とU-20世界大会の結果は当然分からないが、どんな結果になるにしても(たとえ優勝しても!)、課題が出ないはずもない。


その結果を現場にフィードバックしていく、特に指導者養成の部分へいかに還元していくかは大きな課題で、その点が本当の意味で日本サッカーを強化していくポイントになるのではないか。年代別代表ごとの取り組みには自ずと限界がある。3つの代表チームを追いかけながら、その事実も痛感させられた2016年だった。(文・川端暁彦)

写真提供:getty images

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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