W杯で苦戦が続くなでしこ。“Bプラン”の練度を高めることはできるか?

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第89回

W杯で苦戦が続くなでしこ。“Bプラン”の練度を高めることはできるか?

By 清水 英斗 ・ 2019.6.21

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女子ワールドカップ・グループステージ第3戦。なでしこジャパンはイングランドに0-2で敗れた。


前半の日本は、ほとんど良いところが無かった。イングランドにボールを回されて疲弊し、攻撃でもすぐにボールを失ってしまう。前半のスコアは0-1で、終始劣勢だった。


2戦目の相手スコットランドとイングランドとの大きな違いは、後ろでボールをポゼッションする人数の差だ。スコットランドはボランチ2枚が共に低い位置を取り、2人のセンターバックの間に下りることが多いため、前線に展開した後、攻撃の厚みを欠いた。日本の最終ラインの裏に一発蹴り込むだけなので、対応はシンプルだった。後半こそ人数をかけてきたが、前半のスコットランドには、ボールを持たれてもそれほど怖さは無かった。


ところが、イングランドは4番ウォルシュが1枚で中盤の底を支配する。センターバックの間にも下りない。それによってインサイドハーフの19番スタンウェイ、8番スコットが高い位置を取りやすく、攻撃は厚みを持って日本のバイタルエリアを侵食して来る。FW18番ホワイトとの距離が近いために、ラストパスも精度が高いショートパスが増え、ドリブルやシュートもある、という状況で脅威をもたらされた。


機能しないプレッシング


ならば、と高い位置からプレスをかけ、ウォルシュ1枚で運んでいるところを詰まらせてはどうか。しかし、日本はプレスの勢いも連動も欠いた。サイドバックへ誘導したところで、スイッチを入れて追い詰めれば良かったが、プレスのタイミングが連動せず、ねらいが曖昧だった。ボールを奪えた場面もあるが、イングランドの顔色を変えるほどではない。このような場所からショートカウンターに出る状況を考え、遠藤純と小林里歌子を両サイドハーフに置いたのではないかと思うが、良いシーンはほぼ無かった。


プレスだけでなく、ポゼッションも機能せず。三浦成美をベンチに置き、中島依美をボランチに移し、FWタイプの小林を置いたため、イングランドのプレッシングに対し、下がってボールを受ける選手を作れなかった。必然、お互いの距離が遠く、パスを渡せば、渡した先で相手を背負って1対1。イングランドとの体格差に戸惑い、ボールロストを繰り返す。結果として、徐々にボールを持つことすら恐れるようになった。


選手同士の距離が遠く、ピッチの中で1対1が11個あるようなイメージだ。これは、日本の距離感ではない。逆にイングランドは、ピッチを広く使ったサッカーを志向する。日本は守備に留まらず、攻撃でもその広さに付き合ってしまった。スコットランド戦のように選手同士の距離を近くし、縦のポジションチェンジを増やして相手を混乱に陥れたいところだが、同じ機能は出なかった。


選手交代で息を吹き返す


もっとも、後半に三浦と菅澤優衣香を投入し、中島を右サイドハーフへ戻して、スコットランド戦と同じ布陣にすると、攻撃の魅力は健在になった。無得点で終わったのが不思議なほど、チャンスを作った。三浦と菅澤は自信を持ってボールをコントロールし、疲弊したチームに勇気を与えるプレーぶり。現状、この顔ぶれがベストか。


最初からこのメンバーにしなかったのは、なぜか。監督のねらいもあるだろう。


決勝トーナメント進出自体は決まっているので、何人かをターンオーバーし、プレー時間を抑えたいのはもちろんだが、もう一つの理由は、Bプランではないか。ポゼッションではなく、カウンター重視のスタイル。メンバーを見る限り、そのねらいがあったように思える。


ただ、その成果は今ひとつだった。ポゼッションに問題が出たのは仕方がないとしても、プレッシングとカウンターはもう少し内容を上げたかった。


このようなBプランが不調に終わるのは、ロシアワールドカップ、ポーランド戦(0-1)を思い出してしまう。選手間の話し合い、阿吽の呼吸が生み出す連係は一つのベストな形を作ることはできるが、その反面、一度決まってしまうと、変えるのが難しい。西野ジャパンではそんな印象を持ったが、なでしこジャパンはどうなるか。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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