運を味方につけた西野ジャパンの積極性。抜擢の『鹿島ユニット』はセネガル戦でも布石となる

COLUMN戸塚啓 ロシアW杯スペシャルコラム

運を味方につけた西野ジャパンの積極性。抜擢の『鹿島ユニット』はセネガル戦でも布石となる

By 戸塚啓 ・ 2018.6.21

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日本はまだ、何も手にしていない。


6月19日に行なわれたコロンビア戦で、西野朗監督が率いるチームは2対1の勝利をつかんだ。勝因はひとつではない。前半開始早々にコロンビアが退場者を出し、日本は数的優位に立つことができた。それに伴ってPKを獲得し、先制点をつかむことができた。香川真司が冷静にネットを揺らした。


主力の離脱とスタメン落ち、開始早々の退場者…コロンビアの自滅


コロンビアはハメス・ロドリゲスを欠いていた。左足のふくらはぎを痛めていた彼は、1対1で迎えた後半10分過ぎに登場してきた。スタジアム全体を黄色に染めていたサポーターから大声援が飛んだが、トップフォームにはほど遠かった。フランク・ファブラの直前の離脱も、敵将ホセ・ペケルマンには痛かったかもしれない。本来なら左サイドバックを務めるはずだったこの27歳は、左ひざの負傷で開幕直前に離脱したのだ。スタメンに繰り上がったヨハン・モヒカのパフォーマンスが、ファブラに比べてひどく見劣りしたようには感じられなかった。コロンビアは早々に10人になっただけに、正確なところは分からないが……。


大会直前にレギュラーのひとりを欠き、エースはケガでスタメンを外れ、いきなり退場者を出した──コロンビアが自滅したと言えなくもない。ハメスとファブラがいなかったとしても、11対11で進んでいたらどうなっていたか分からないゲームである。前半から走らされていれば、暑さの影響をもっと受けてもいただろう。後半に足が止まったのはコロンビアではなく、日本だったかもしれない。


積極性が功を奏した西野監督の選手起用

 

それでも、評価できるところはある。過去3試合のテストマッチを受けて、西野監督は4-2-3-1のシステムを選んだ。スタメンは直近のパラグアイ戦を反映したもので、積極的な仕掛けとも言えるものがあった。

 

ひとつ目はセンターバックである。吉田麻也のパートナーに指名されたのは、槙野智章ではなく昌子源だった。ふたりの実力と実績に、誰もが納得するような違いはない。とはいえ、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督のもとでスタメンに定着しつつあった槙野のほうが、吉田とコンビを組んできた試合数は多い。国際Aマッチの出場数でも昌子を上回る。言い方を変えれば、負けたときのエクスキューズを見つけやすい。それでも西野監督は、鹿島アントラーズのセンターバックをチョイスした。通常の国際試合とは明らかに別種の緊張と重圧がかかるW杯で、それも大会の初戦で、分かりやすい言い訳を排除したのだ。


ふたつ目はセントラルMFである。長谷部誠とコンビを組んだのは、山口蛍ではなく柴崎岳だった。コロンビアの攻撃面での良さを消すことを最優先に考えれば、ボールを奪い取る力の高い山口を起用したほうがいい。中盤におけるディフェンスだけでなく、プレスバックしてファルカオを挟み込むイメージも強くなる。前回のW杯に出場した経験も持つ。ここでも西野監督は、守りの発想を消去した。試合度の記者会見では、「中盤である程度のイニシアチブを取りたい意図があっての構成だった」と説明した。ゲームを膠着させながら最後に勝負を仕掛けるのではなく、前半からチャンスをうかがう戦略を描いていたのだ。


幸運を逃さなかったことがセネガル戦にも好影響をもたらす


昌子と柴崎は、スペインのクラブへ移籍するまで鹿島のチームメイトだった。そのあたりも含めたキャスティングとするのは拡大解釈かもしれないが、センターバックとボランチにスムーズな連携が必要なのは間違いない。旧知の関係を当てはめるのは悪くなかった。

コロンビアが10人になったことで、昌子ら日本の守備陣が強い圧力を受ける時間帯はほぼなかった。柴崎も同様である。アタッキングサードの手前までは、ほぼノー・プレッシャーでボールをさばくことができていた。


それでも、彼らの起用は確かな布石になる。コロンビア戦でW杯の雰囲気を体験したことで、緊張や重圧が和らいだだろう。国内組の昌子にとっては、とりわけ意味のある90分だったはずだ。リーガ・エスパニョーラで日々を過ごす柴崎にしても、W杯出場は今回が初めてである。コロンビア戦に出場したことで、気持ちの凝りを解すことができたに違いない。


コロンビア戦の日本が、幸運に恵まれたのは間違いない。しかし、幸運を逃さず生かしたことは評価すべきだ。左CKから大迫勇也が決めたヘディングシュートは、数的優位のアドバンテージも関係ない。彼が決め切ったものだ。香川真司と大迫という取るべき選手が取り、選手起用も2戦目につながるものだった。その意味で、コロンビア戦はポジティブな要素を見つけられる一戦だった。


ただ、日本はまだ何も成し遂げていない。セネガル戦の重要度も、何ひとつ変わってはいないのである。(文・戸塚啓)


写真提供:getty images

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戸塚啓

戸塚啓

1968年6月生まれ。神奈川県出身。サッカー専門誌編集者を経て98年よりフリーランスに。サッカーW杯は98年から18年まで6大会連続で取材中。近著に『必ず、愛は勝つ!車イスサッカー監督羽中田昌の挑戦』(講談社)、『結果を出し続ける~フィジカルトレーナーの仕事』(光文社新書、中野ジェームズ修一氏との共著)など。『2018ロシアワールドカップ観戦パーフェクトガイド』(ぴあ)を監修。

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